さきらく第一席「愛宕姉」

演:馬素賀出留亭怜


テンテケテケテンテン♪



 山登り、なんてことは病弱な私にはとても無理な事なんやと思いますが、準決勝で戦った阿知賀の大将はいつもいつも山に登っとるんやとよう聞きます。

 まあ、私には枕の上に見える二つの大きな山を見とる方が性に合うようで、あっちにゆらゆら、こっちにゆらゆらしとるおもちをぱっしいぃぃっ掴んで「きゃー!?」いう反応を楽しむんが最近の楽しみです。

 私以外は触れへんけどな。

 おもちと言えば、姫松の愛宕姉妹。
 妹の方は大層なおもちをしとるようですけど、姉はからっきし。
 ほんでも麻雀の実力はえらい高いもんで、度々自信満々な物言いが飛んでます。

 その姫松高校、何でもあの名監督代行ならぬ迷監督代行「ピクニックにでも出かけようや~」と、レギュラー一同引き連れて、ぽいっと京都まで出たようで。

「突然言い出したんはええけど、どこ行くん」

「京都の愛宕山やで~」

「まったえらい遠出やんな」

「大阪に山なんてないやん~」

 そんなことを言うたもんですから、そらプライドの高い愛宕の洋榎さんは言い返したくもなるわけで。

「京都の山ぐらい朝飯前や」

 と、必要もないのにメンバー全員の荷物まで持って、てってこてこてこ登っていきます。

「持ってくれるん~? 楽でええなあ~」

 さすがの洋榎さんもそこまですれば疲れてもうたようで、山頂についたころにはぜーぜーはーはー息も上がっとります。

「なんや、もう、仕舞い、なんか」

「苦しそうやけどな~」

「やかま、しいわ」

「とりあえず荷物に入っとる雀卓だしてや~」

「そんなん重いに決まっとるやろ!」

 当然山頂にコンセントなんかはあるわけもなく、自動卓なのに手積みで打つレギュラー達やったんですが、言い出しっぺの代行はなんやおもろんなくなってきたとか言いながら、近くの石ころ、そんでもって仕舞いには財布の中の小銭まで、崖の向こうの桜の木に向かって投げだしまして。

「ああ、なにやってんもったいない」

「なら拾ってきたら全部あげるで~」

「ほんまか?」

「洋榎だけに拾えってな~」

「何あほなこと言っとんねんこのオバハン」

「とってこれるん~?」

「朝飯前や」

 がめつい洋榎さん、代行の静止も聞かんと意気揚々と崖の下までひょいひょいひょいっと降りていき、小銭を全部拾って嬉し顔。

「ずいぶん投げたんやな」

「いくらある~?」

「ぴったし25000円、原点と一緒やな」

「まっ平らな洋榎ちゃんにはぴったりやな~」

「なんやて」

 頭の中が木偶のおたんちんの洋榎さんやから、わっかりやすい挑発にも乗ってしまうもんで、なんやかに道楽の蟹さんみたいに真っ赤になってどたどた足を踏み鳴らします。

「悔しかったら上がってき~」

「だああああああ待っとけやあああああああああああ!!」

 言うた途端に着とった上着をしゅるしゅるしゅるっと脱ぎ始め、ビリビリビリっと裂いたかと思うたら一本の縄を作りまして、崖から飛び出た木の枝々に巻きつけながらなんとかどうにか登ってきて。

「くおらばばあああああああああああああ!!」

「戻ってきよったん~? すごいやん~」

「せやろーせやろー!」

「あんたはやっぱり姫松のエースやな~」

「あたりまえやん誰やと思ってんねん!」

「お金はどうしたん~?」

「あ、忘れてきた」


 お後がよろしいようで。


テンテケテケテンテン♪

「第二席 いーぴんこわい 暑寒亭美幸」ペラッ