阿知賀編最終回・改名記念

さきらく第七席「池田の皿」

演:丸跋亭穏乃


テンテケテケテンテン♪


 お初にお目にかかります。この度、インターハイAブロック準決勝一位通過というわけで、晴れて改名させていただきました、荒雲度差亜亭穏夜改め、丸跋亭穏乃でございます。

 堅苦しい挨拶はここまで。苦手なものですから、あはは。 

 私は荒雲度差亜亭健夜を師匠に持っておりまして、インターハイで会いました折に「決勝まで行けたら亭号変えて独立してもいいんじゃないかな」と言われまして、それはもうまだ未成年、二十歳すら迎えておりませんのに荒雲度差亜亭、なんて不恰好でございますから、こうして丸跋亭穏乃に改名させていただいた次第でございます。

 さて、その師匠、それなりに落語家としての地位がございますゆえ、私という弟子をとっておりますが、どういうわけか羽織を着られない。寄席にあがる時は着物だけで話しております。
 不思議だ不思議だと思っていたのですが、何とその理由は若作り。
 何でも羽織を着ると老けて見えるのが嫌なのだとか。
 照さんは着ていても若々しいですし、元の問題だと思うのですけれど。

 楽屋の方から何やらただならぬ気配がします。

 それはともかく、うちの師匠はとにかく若作りや結婚話に目がない。縁談なんてものを持ってきたらまず間違いなく食いつきます。
 物好きな方がいらっしゃいましたら、お帰りの際に申し付けていただければ。

 まあ、そんな師匠でございますから、結婚関係の話となるとコロッと騙されたり、損をすることも少なくありません。

 先日長野の方へ講演に参りました時のこと。

「長野は暑いね……そこの公園で少し休憩しようか」

「わかりました、飲み物でも買ってきますよ」

「ありがとう」

「では、行ってきます」

「いってらっしゃーい…………それにしても暑いなぁ、遊んでる子供も全然いないし……あれ? あそこにいるの、三つ子かな、珍しい」

「何か知らない人がこっちの方見てるし」

「知らない人にはついていっちゃダメだっておねーちゃんが言ってたし」 

「あたし知ってるし、あれ小鍛治プロだし」

「知ってる人なら大丈夫だし」

「こんにちはだし」

「こんにちは、三人は三つ子なのかな?」

「城菜と緋菜と菜沙だし」

「区別がつかない……あ、泥団子、作ってたんだ」 

「池田印の超すごい泥団子だし」

「プロでもなかなか作れないし」

「おいしそうな泥団子だね」

「泥団子は食べられないし」

「うん、ごめん、そうだね」

「今なら一つ三百円だし」

「高いね!? ……はっ!」

 目利きの師匠、何やら泥団子よりも皿の方に興味があったようで、それもそのはず、三つ子が泥団子を乗せている皿は何と絵高麗の梅鉢の茶碗。それはもう大変高価なものでありますがそれだけじゃない。床の間に飾っておけば、必ずいい出会いに恵まれるとか言った代物です。

 そんなオカルトありえません、とは言いますが、鰯の頭も信心から。どうにかして皿を手に入れたい師匠。
 三つ子たちには皿の価値がわかっていないとみると、皿ごともらってしまおうと思いまして。

「それにしてもいい泥団子だね、こんなにいい泥団子は見たことがないよ」

「当たり前だし、緋菜が作ったし」

「それは城菜が作ったやつだし」

「そうだっけ?」

「いや、それにしてもいい泥団子だね、一つ三百円だっけ?」 

「そうだし」 

「記念に一つ、もらっておこうかな」

「毎度ありだし」

「もう一つお願いがあるんだけど、そのまま持って帰るとせっかくの泥団子が壊れちゃいそうだから、そのお皿も一緒にもらってもいいかな?」

 しかし、ここで三つ子はうんとは言いません。

「えっと、おねえさ……小鍛治プロ」

「わざわざ言い直さなくても」

「小鍛治プロは知らないかもしれないけど、このお皿はかなり貴重なものだし」

「絵高麗の梅鉢の茶碗だし」

「とてもあげたりはできないし」

「知ってて使ってるの? 何でまた」

「このお皿に乗せとくと、時々泥団子が三百円で売れるし」


 お後がよろしいようで。


テンテケテケテンテン♪

「第八席 つもり指南 須叭月亭照」