さきらく第十三席「咲世床」
演:丸跋亭穏乃


テンテケテケテンテン♪

 近頃じゃあ、iPS細胞というもので、同性の間でも子供ができるそうで。

 しかしまあ、化学の基本さえも覚束ない私じゃあ、説明をされても一体何の事やら。すごいなあ、くらいの感想しかうまく言えないものです。

 物事には何にでも基礎基本、ってものがあります。
 とにもかくにも基本がなっていないと、それより先の向上は中々に難しい。

 麻雀に関しますと、私は二年ほど中学でのブランクがありましたが。小学生時代ですか、阿知賀女子麻雀部の顧問であり、現在プロとして活躍しています赤土晴絵。その赤土さんが開いていた阿知賀こども麻雀クラブというものがございまして、小学生時代にみっちりと基礎を叩き込まれておりました。

 結果としてインターハイでは初出場で決勝のステージへと辿り着けまして、やはり基礎基本は何事に置いても大変重要な事だと実感させられた次第でございます。

 さて、落語に於いても基礎基本となるものはございまして、見習い時代にはそれはもう大変たくさんの雑用、もとい修行を積まされましたが、そんな中で私が初めて師匠に教えて頂いた噺がございます。

 私らの一門ではこの噺を最初に覚えるようになっているのですが、皆さんご存知、私の幼なじみでありますインターミドル王者、原村和の所謂与太話です。

 和の友達に、小さい頃の憧によく似た片岡優希という子がおりまして。

「のどちゃんのどちゃん、今週のWeekly麻雀Today読んだか?」

「読んでませんが、どうかしたんですか?」

「インハイチャンピオンの記事が載ってたじぇ」

「あぁ、お義姉さんの」

「じょ? おねえさん?」

「いえ、こっちの話です」

「そうか? で、この記事にチャンピオンの日常ってコラムがあるんだじぇ。これを参考にすれば、東場の神である私が半荘の神になる日も近いじぇ!」

「そんなオカルトはありえませんが……興味はありますね」

「よし、それじゃあ私が読んであげるじぇ! えーっと、チャンピオンの趣味は読書。その趣味を支えているのが、部室備え付けの、ぶ、ぶ、ぶっくしぇ、るふ?」

「bookshelfです」

「ぶっくしぇるふって何だじょ?」

「bookが本、shelfが棚。本の戸棚で、本棚です。うちの部室にもあるでしょう」

「ブックのシェルフ……なるほど、ほんとだな」

「馬鹿なこと言ってないで、続きをお願いします」

「ちぇー、のどちゃん冷めてるじぇ。えっと、あ、何切る問題もあるじぇ?」

「なるほど、ちょっと見せて下さい」

「うー、切るとしたら、一索か二筒かのどっちか……」

「何ですか?」

「何も言ってないじぇ? 一索か二筒かのどっちか……」 

「だから、何ですか?」

「のどちゃんは呼んでないじぇ」

「さっきからのどっちのどっち……」

「一索か二筒かの、どっちかだじぇ」

「紛らわしいですね。ちゃんと発音してください」

「理不尽だじぇ……」

 そんなことをしている間に、雀卓の方では三麻が始まっていまして。

「あの、染谷先輩、何で萬子がこんなに入ってるんですか……」

「おんしが槓できんように、萬子やのうて、全部の牌の四枚目を抜いたけんのう」

「酷いです……」

 なんてでたらめな麻雀が始まる始末。
 かと思うと、和の方はうっつらうっつら舟をこいでいます。 

「まだ話は終わってないじぇ! 居眠りしている場合じゃないじょ!」

「うう……少し寝かせてください。咲さんが寝かせてくれなくて……」

「じょ!? 聞き捨てならないじぇ! のろけか?」

「まあ、私と咲さんの関係ですし……」

「聞かせてもらうじぇ!」

 コホン、と一つ咳払いでもしまして。

「帰り道だったんですが、突然雨が降り出して、近かったので私の家で雨宿りすることにしたんです」

「ほうほう」

「幸い両親は出張中で、二人きりになったわけですが。とりあえずシャワーを貸してあげたんです。そうしたら咲さん、今日は泊まっていってもいいか、なんて言われましたので、それはもう何日でも泊まっていってほしい、何て言っちゃいまして」

「うわぁ……」

「それから一時は談笑していたのですが、いざ寝るときになって咲さんが、一緒に寝ても……いいかな?」

「ゴクリ」

「貸していたパジャマのボタンを一つづつ外しながら、私のベッドに入ってきて」

「いい展開だじぇ……」

「いい展開でしょう」

「それで、それからどうなったんだじぇ?」

「そこで優希が起こしたんです」 


 お後がよろしいようで。 


テンテケテケテンテン♪

「第十四席 粗忽の華菜 須叭月亭照」ペラッ