さきらく第十五席「こしが屋」

演:丸跋亭穏乃


テンテケテケテンテン♪

 商売上手な人とそうでない人ってのは、まあ元からセンスが問われるようでして。
 いくら頑張ったところで、客に対していい印象を与えなければ買ってもらえないってのが商売の難しいところでございます。

 そんな中、先日、知る人ぞ知る、埼玉県のインターハイ代表校は越谷女子の宇津木玉子さん。十八、十九まで何もしないで麻雀ばかりふらふらとやっているわけにもいきませんから、先日店を開いたそうでして。

 その店というのが、古道具屋「こしが屋」。

 よくわからない店主が、これまた何を売っているのやらよくわからない店でございますが、最近ようやっと店に客足が来るようになったのがちょっとした与太噺の始まりでございます。

「よってらっしゃい見てらっしゃい、と。埼玉の物はここに集う、こしが屋である」

「よっ、意外とちゃんと店やってんじゃん」

「花子であるか」

「おう、ここって何でもそろってんだよな? 色々欲しいものがあるんだけど」

「おお! できたてほやほやのあったかい道具が勢ぞろいである」

「それじゃあ、そこにあるのこぎりを見せてもらおっかな…………あれ、こののこぎり、焼きが甘いな」

「そんなことはないはずである。それは火事場で拾ったのである」

「なんつー物売ってんだよ……それじゃあ、こっちのねんどろいどってのは?」

「原村の首が抜ける」

「ぎゃあああああああ!? ホラーじゃねえか!! ロクなもの売ってないな!!」

「それがウリである」

「ドヤ顔するなようまくないよ……こんなんじゃ冷やかしも来なくなる」

「冷やかし?」 

「見るだけ見て買わない客のことをそう言うんだよ」

「ならば花子は冷やかしである」

「まあ、今日はそうなるけど。冷やかしには気をつけろよ、じゃ」

「むむむ……売れない。次の客には絶対に冷やかさせないのである」

 固く心に誓う宇津木さんでありましたが。

「よってらっしゃい見てらっしゃい、と。埼玉の物はここに集う、こしが屋である」

「お、初めて入ってみたけど、中々古風でいなせな店じゃないかい」

「そうである。見る目があるようであるな、帽子少女」

「帽子少女? あたしは個人戦十五位の寺崎遊月ってんだよ」

「そうであるか。十五位とやら、何か探しものであるか?」

「ああ、そうそう。実はちょっと鰻屋をやってんだけど、ちょうどこんぐらいの、皿がひやかせる桶ってあるかい?」 

「何!? 冷やかしであるか!?」

「そうそう、皿が十数枚くらいひやかせる桶だよ」

「冷やかしであるな!! 絶対にさせないのである!!」

「ああ、言い方が悪かったよ、皿を十数枚浸けておける桶だよ」

「冷やかす上につけるつもりであるか!? そんな輩に売る桶はないのである!!」

「なんだ、無いのかい、それじゃあ仕方ない。邪魔したね」

「あ、おい!! 冷やかすのはダメだと…………行ってしまったのである。大体ひやかすとかつけるだとか……は、そうか。冷やかすとかつけるってのは水につけておくことである!! しまったのである……」

 次にやってきたのは、その寺崎さんを追いかけてきた新免さん。

「よってらっしゃい見てらっしゃい、と。埼玉の物はここに集う、こしが屋である」

「ここに白い帽子の女の子が来なかったか?」 

「さっき出て行ったのである」

「そうか……ふむ、ここは古道具屋か」

「何か探しものであるか?」

「そうだな……そこの刀を見せてもらえるか?」

「中々お目が高いのである。これは由緒正しい刀なのである」

「ほう……む、鞘から抜けないな……うぐぐぐぐぐ」

「抜けないのであるか」

「すまないが手伝ってくれないか?」

「わかったのである……うぐぐぐぐぐ」

 両側から引っ張り合っても、刀はびくともしません。

「うぐぐぐぐぐ……こ、れ、は、固すぎる……」

「うぐぐぐぐぐ……抜けないのも当然である……」

「うぐぐぐぐぐ……どういう事だ……?」

「うぐぐぐぐぐ……だってこれは木刀である」

「何でそれを早く言わないんだ!! ちゃんと抜けるものはないのか!?」

「うむ、原村の首が抜ける」


 お後がよろしいようで。


テンテケテケテンテン♪

「第十六席 道槓 永史亭春」ペラッ