生れて初めて書店に並ぶ本を書きました。ある程度決った筋道に則った企画(シリーズもの)の中での執筆ですが、皆さん、きっと不思議に思われるのは本職の西洋古楽器のジャンルではなく、「和の音楽」だという事です。
これは「イチから知りたい 日本のすごい伝統文化」シリーズの第5弾で「はじめての相撲」「はじめての落語」「はじめて茶道」「はじめての歌舞伎」につづくものです。どちらかと言えば小学校3年くらいから読める本で、全てカナが振ってあります。他のシリーズはすでに人気があり、子どもでもその道の専門家を目指すきっかけになったという話しも聞きます。
他の本と違って難しいのは、まず音楽というものを文章で伝えることです。他の4冊はせいぜい数百年の歴史で、言葉や所作、しきたり、伝統を伝えることですが、音楽、それも神話の時代から現代まで、貴族から武士から民衆から、歴史も解っていない子どもたちにも解るように何を伝えるかが大変な作業でした。広く漏さず伝えようとすると歴史の勉強ばかり伝えなければならず、何かをピックアップすれば、今度は載らなかったジャンルの方からのクレームに合うかも知れません。そもそも僕が書く以上は海外との楽器の伝搬などに触れたくなりますが、あまり突っ込みすぎると編集の方から「難しすぎ!」と直されてしまいます。「ドローン」や「即興」という言葉も説明が難しすぎるという事でカットされました。あと、ひと項目に書く字数は500文字くらいまでとの制限があり、一つの楽器を取ってもこの文字数に収まるほど浅くはないのです。
僕自身和の音楽に関して、箏曲など和の音楽のあるジャンルの作曲依頼はあるものの、学者ではないので全般を体系的に網羅することは出来ませんが、離れた位置から音楽というもの全般を見渡すことは出来るかも知れないと思い、執筆を引受けました。
足らないところはイラストなどで補ってくれますが、構成やデザインまでは関与していません。
難しい部分は編集の方で直してくれるのは良いのですが、意味が合っていても本来のニュアンスと違ってしまうのは避けられないところです。実際に言回しで、こちらが間違った認識を持ってると受取りかねない部分もありました。
それでも、この小さな本の中によくもこの和の音楽という広大なジャンルが納まったなと感心します。きっと他の人が書くより中東やルネサンス・西洋音楽との比較の話しが多いと思います。リュートやウードなどの話も出て来ます。ピタゴラスも安倍晴明も紫式部も童謡もYOASOBIも武満徹も登場します。
一般の音楽の先生が読んでも、初めて知ることも多いと思います。少し偏った入門書でありますが、QRコードでこちらの用意した音源やフリーの音も聴けます。生演奏もしています。本当は著作権問題がなければ本物の演奏や映像とリンク出来ればと思います。売れたら徐々にその辺りにお金をかければさらに良いものになると思います。
書店に並ぶと思いますので、皆さん、ぜひ一度お手にとって眺めてください。
8/26発売開始です。Amazonで1980円、このリンクから購入可能です。出版社:すばる舎
単行本:136ページ ISBN-10:4799112570 ISBN-13:978-4799112571