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3月10日。つまり、今回の東北・関東大震災の前日に所用で本郷三丁目へ行った。朝、地下鉄の駅から地上へ出ると、人が多くてやや騒がしい。なんだろうと思いながら、東京大学の赤門へさしかかると、その前には大勢の人だかりが出来ていた。
そうか、今日は東大の合格発表(前期入試)だったのか――。社会へ出て久しいと、そんなことも忘れてしまう。少し覗いてみようと思って、キャンパスへ。若人を中心に、さまざまな世代の人々が奥へ向かって歩いてゆく。発表の場には、応援団などの在校生が合格者を祝福するために集まっている。

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マスコミも大挙して押し寄せており、下手に人混みの中に入ってしまうと身動きがとれなくなるため、早々に抜け出てくる。避難するように、正門付近の向かいにある、「こころ」という古めかしい喫茶店へと入った。


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静寂に支配された店内は、外とはまるで別世界。老夫婦が切り盛りする店のようで、客は2~3人のみ。ほっと一息ついて珈琲をオーダーする。珈琲一式を、マスターらしきおじさんがよろよろと運んできてくれた。


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早めの時間帯は、350円のところを300円で出しているようだった。サンドイッチやカレーなどのメニューにも惹かれたが、中途半端な時間だったのであきらめる。後から入ってきた常連らしきおばさんが焼きそばを注文していて、「朝から焼きそば?」と思ったが、それがいい匂いを発しており、旨そうだった。

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今ではあまり見られないカラフルで簡素な革張りの椅子。花に西洋人形…。奥に伸びる長屋のような造りで、2F席もある。聞きそびれてしまったのだが、店名の「こころ」は、やはり夏目漱石の小説に由来するのだろうか。
後で調べた話では、この店の前身は新宿中村屋なんだそうだ。中村屋が新宿へ移転した昭和30年ごろ、現店主が買い取って改装のすえ開業したという。そう考えると、建物自体が骨董品のような店だといえる。


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近くには、セイロンカレーで有名な喫茶「ルオー」や、友人が勧めてくれた「万定フルーツパーラー」もある。万定は利用したことがなかったので、本当はこちらに入ってみたかったのだが、時間が早かったためにまだ準備中だった。また来ることがあったら、定評のあるカレーやハヤシライスを試してみたい。


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この日、受験生にとっては悲喜こもごものドラマが繰り広げられたわけだが、それにしても、この翌日にあんな大地震が起こるとは…。地方から発表を見にきていた学生や保護者も大勢いたであろうに、無事に帰れたのだろうか。東北の被災地では、高校に合格したのに交通網が回復せずに通えない子どもたちがいるという話も聞いた。
2011年。受験生にはなおのこと忘れられない年となるに違いない…。こんな時だから、「こころ」を強くもって新たな生活に備えてほしいものだと思う。