歴史クリエイター・インタビュー VOL.1
渡部麗さん&福永雅文さん
東京は千代田区。JR御茶ノ水駅から靖国通り方面への道中。1本の細い路地に、歴史好きが集まる小さな酒場、毎週1回(水曜)だけ開店するレキシズルバー(渡部商店)がある。そのビルの3階に、2012年7月、新たなプレゼンテーションの場「レキシズルスペース」がオープンした。
ビル内の畳敷きの部屋は、スライドプレゼンスペース、茶室、バーカウンターが融合した和洋折衷のふしぎな空間。この「レキシズルスペース」とはいかなるものなのか? どんなイベントが行われるのか。オープン初日の7月3日に訪問し、主宰者の渡部麗さんと、記念すべき最初のゲストプレゼンター・福永雅文さんに話を聞きに行ってみた。
※取材・文/上永哲矢(哲舟) 人物写真撮影/島崎信一
◆構想から完成まで、わずか3ヶ月
「ボクは思い立ったら早いんです!」(渡部)
―――まずは、渡部さん。「レキシズルスペース」(以下、レキスペ)のオープンおめでとうございます!
渡部 ありがとうございます!
―――今日は和装ではなくタキシードですね。
渡部 和洋折衷ということで、ユニフォームをタキシードにしました。今まで通り、和装も着ますよ(笑)。
―――同じビルの1Fで営業している「レキシズルバー」が6月で4周年を迎え、その間に「TERAKOYA」という歴史プレゼンイベントを幾度か主催して来られました。そういった中でオープンした「レキスペ」ですが、これはいつごろから構想があったんですか?
渡部 あのですね、実は最近なんです(笑)。今年の3月31日に「れきしQ&A TERAKOYA」を、この場所で開催したんですが、予想以上というか、入り切らないぐらいお客さんが来てくれたんですよ。座れずに立ち見のお客さんもいまして。それを目の当たりにしたのが最終的なきっかけですね。
―――3月31日にイベントがあってから、まだ3ヶ月なんですね。あっという間の改装でした。
渡部 思い立ったら早いんですよ、ボクは(笑)。工期は、突貫工事で2週間でしたね。
―――先月までは、ここは普通といいますか、洋室のオフィスでしたね。
渡部 そうです。今までも「TERAKOYA」や「数寄語り」などの歴史イベントを開催してきましたし、それと「バー」が満員になると、ここをお客さんに開放して楽しんでもらっていたんですよ。でも、オフィスなので毎回そういうわけにもいかないなと。だったら、このスペースをもっと有効に生かそうと思って、新しい「箱」として改装したんです。
―――以前と比べ、パーテーションが取り除かれて広くなったし、和洋折衷の畳敷きスペースになりましたが、デザインやレイアウトなどは渡部さんがなさったんですか?
渡部 ウチの会長です。「株式会社 渡部商店」の会長で、ボクの母なんですが、このビルのオーナーです。ハードは会長がつくって、ボクはソフトのほうを担当するという形です。
◆今までのTERAKOYAとは、ココが違う!

(バーカウンター。ハイネケンビール、日本酒「会津中将」などこだわりの酒が飲める)
―――この「レキスペ」ですが、改めてコンセプトを教えていただけますか?
渡部 「空間」と「宇宙」をかけて命名したんですが、歴史はもちろん、いろいろな分野のプレゼンテーションができるスペースにしました。これまで以上に、ここで「TERAKOYA」イベントを開催します。ただ、1Fの「レキシズルバー」とは完全に別個のスペースとして扱います。
―――これまでのように、渡部さんお得意のスライドを使った「TERAKOYA」のスタイルは踏襲していくんでしょうか?
渡部 基本的には同じですが、今までと違うのは、毎回ボクがプレゼンをするのではなく、外部から色々なジャンルのティーチャーを招いてのTERAKOYAを開催していきたいと思っています。歴史だけに限らず、いろいろなジャンルというのがポイントですが、どちらにしても「今をどう生きるか」、そのヒントになるものをやっていきたいですね。
―――ワンドリンク制で入場料を支払うシステムで、ちょっと大人向けの価格設定ですね?
渡部 そうですね。今まではレキシズルバーの別室に過ぎなかったので、しっかりと区別をしていこうと。もちろん、バー同様にお酒も飲めますし、簡単な酒肴もご用意しています。
―――それと、この「足袋」での入室を推奨されているのも面白い(笑)。
渡部 それも「レキスペ」の色にしていきたいと思っているんですよ。せっかくの畳敷きのスペースなので、日本古来の伝統品である足袋を履く機会がもっとあってもいいんじゃないかなと。それに、足袋のおかげで足が臭うこともないですからね(笑)。
―――今日一緒に来てもらった、カメラマンの島崎さんも初めて履いたそうです。履き心地もいいですね。
渡部 そう。履いてみれば良さがわかるというか。やっぱり、いろいろな人に日本の伝統品の良さを知ってもらいたいですからね。ウチのIT奉行の小松が埼玉県の行田(ぎょうだ)市に住んでいることもヒントになりました。日本の足袋の80%は行田市で作られているんですが、ウチで販売している足袋も、もちろん行田製です。
―――それは凄い! 行田は、ゼリーフライと忍城(おしじょう)だけの町じゃなかったんですね。
渡部 無地だとつまんないので、生地もボクがチョイスして、職人さんの手によるオーダーメイドにしてもらっています。今は6種類ありますが、新作もつくっていくので注目してください。

(ぬか漬け、串揚げ、煮込みなど歴史にちなんだネーミングの酒肴にも注目。
特に、ぬか漬けは自家製で日本酒との相性がいい!)
◆緒方洪庵が開いた適塾のように
魅力的な人間があふれる場にしたい!
―――レキスペが目指すは、「平成の適塾(てきじゅく)」ということですね。吉田松陰に心酔している渡部さんなら、松下村塾(しょうかそんじゅく)かな? と思ったんですが(笑)。
渡部 思いつきなんですけどね(笑)。ただ松下村塾は、ちょっと純度が高すぎるんです。お金も取らず、崇高な志で教えていましたから、ボクが松下村塾をめざすのはおこがましいし、適塾が理想かなと(笑)。ぶっちゃけ、日本人はもっと野望を抱いてギラギラして動いていってほしいと思っているので、そのきっかけをつくりたいんです。ここには全国から色々な面での長所をもった人間が集ってくれる、魅力的な場所になれればいいな、そういう方たちとコミュニケーションがとれればいいな、と思ってます。
(適塾とは・・・・江戸時代後期の蘭学者・医者として名高い緒方洪庵が、大坂・船場に開いた蘭学の私塾。福沢諭吉や大村益次郎など、優秀な人材を数多く育てた)
―――オープン初日の今日は、ランチェスター戦略コンサルタントの福永雅文さんによる「ランチェスターTERAKOYA」の第1回目ですね。福永さんと渡部さんが知り合ったきっかけはどんな感じだったんでしょう?
福永 私は「小が大に勝つ」というテーマの原稿を雑誌に連載していて、毎回いろいろな企業を取材しているんです。それで、1年前ぐらいに渡部さんの渡部商店と「レキシズル」(歴史ポップメディア)を取材させていただいたのがきっかけです。私も大の歴史好きなので意気投合しましてね(笑)。今年の3月に日刊工業新聞社で、坂本龍馬をテーマにしたジョイント・セミナーを一緒にさせていただいたんです。
渡部 それで今回、この「レキスペ」の完成に合わせて、福永さんにTERAKOYAのプレゼンターをしていただきたいと思って、話を持って行きました。まず福永さん専門のテーマとして、7月から8月にかけてランチェスターTERAKOYAと源平TERAKOYAを3回ずつ。それから、主婦の友社・雑誌編集長の坂本龍馬さん(本名)をゲストに招いて、ボクと一緒にプレゼンする幕末龍馬TERAKOYAを2回予定してます。直近では7月16日にレキシズルバースペシャル「龍馬vs長宗我部」、7月27日には「江戸時代から続く、ニッポンの色気」をテーマにした納涼パーティを予定してます。(スケジュールはこちら)
―――なるほど。盛り沢山ですね。今回、福永さんが「ランチェスター戦略」のほかに、「源平」をテーマに選ばれた理由は?
福永 大河ドラマのファンなんです。歴史好きになったきっかけも大河ドラマで、1972年に放映された「新・平家物語」を観たのが歴史好きになったきっかけなので、源平は歴史好きとしての原点なんですよ。今年は大河が「平清盛」ですが、視聴率が苦戦しているので応援したいという思いもあります。これはランチェスター戦略の一環である「小が大に勝つにはいかにすれば良いか」に通じる部分でもありますよね(笑)。今回の私のTERAKOYAが視聴率回復はもちろん、源平合戦をもっと好きになったり興味を持ったりする人が増えることにつながればいいなと思います。(後篇につづきます)
2人のプロフィールは、後篇をご覧ください。
<レキシズルスペースの詳細およびスケジュールはこちら>


