前回記してから、またしばらく間が開いてしまったが、先日行った
姫路・鳥取・岡山の旅路からの続きと雑感を上げて、締めくくりとしたいと思う。
岡山であまりのんびり出来なかったのは残念だが、やむなく神戸まで戻って、
そこから、「粉もの」の町、新長田へ。友人に紹介してもらった「ひろちゃん」という店で、念願の明石焼きを食べる。姫路のタコピアで食したのは「明石焼き風たこ焼き」だったので、今度は本当の明石焼きを食べたいと思っていたのだ。やかんに入った出汁を椀に注ぎ、それに付けて食べる、ふんわり柔らかい粉物。地元の人は単に「玉子焼き」と呼ぶ理由がわかる。出汁はそのまま飲んでも上品な薄味で、とても美味しい。
これも関東に居たら、ほとんど食べる機会のない「ソバめし」。焼きそばとご飯を
一緒に炒めるという、ユニークな食い物。それにしても関西人は本当に焼き物、粉物が大好きなんだなあ。食は生活の一部だから、鉄板もまた生活の一部。関東では粉物屋というと、大抵は自分で焼かなければいけないのだが、関西はお店の人が焼いてくれるのも、美味しい理由かもしれない。そのほうが楽に美味しく食べられていい。
そのまま元町のホテルに泊まり、翌朝はホテルに荷物を預かってもらって、
神戸電鉄の粟生(あお)線に、のんびり揺られ「三木上の丸」駅へ。兵庫県三木市別所町にある、とても長閑な駅。あいにくの雨となったが、気にせず向かう。
ここに何があるのかといえば、駅から歩いてすぐのところに、三木城の跡があるのだ。
そう、三木城といえば、秀吉が「三木の干殺し」と呼ばれる苛烈な兵糧攻めを行なったところ。また、竹中半兵衛がこの陣中に没したことで知られる。
こういう絶壁を登ってみると、その昔は堅城だったのだろうな、と感じさせる。
本丸に到着。何もないのかと思ったら、以外に色々な遺構があって、
これは「カンカン井戸」と呼ばれる当時から残る井戸。石を投げ込むと「カンカン」と音がすることから付いた名前だそうだ。鉄柵に覆われ、石は投げられないようになっている。
当時の城主、別所長治の銅像もあった。背後の丘には辞世の句を刻んだ石碑がある。
「今はただ うらみもあらじ 諸人の いのちにかはる 我身とおもへば 」
鳥取城の吉川経家、備中高松城の清水宗治と同様、開城の条件として我が身を犠牲にした義将。これら3名は、もう少し有名になってもいいのではないかと思う。
長治の自刃や、三木合戦の様子を描いた絵の描かれた案内板があった。
ちなみに黒田官兵衛は、この合戦が始まってまもなく、有岡城(伊丹城)で捕らえられ、1年間の幽閉生活を送る羽目になった。助け出された後、官兵衛はこの三木城攻めの陣中に復帰したという。
本丸跡から城下を見下ろす。今回の旅では、秀吉が行なった「三大城攻め」と呼ばれる戦の舞台、
鳥取城(鳥取)、備中高松城(岡山)、三木城(兵庫)を、一度に訪ねることができたのも、これまた嬉しい限りであった。鳥取城と三木城はそれぞれ「渇え殺し」「干し殺し」と呼ばれる過酷な兵糧攻めをかけられ、備中高松城は有名な「水攻め」である。
さて、再び神戸・元町方面へ戻って、近くにある花隈城を見にいく。ここは
荒木村重が有岡城、尼崎城で信長の軍勢に敗れたあと、執念深く立て籠もった城の跡。村重は結局ここでも破れ、毛利家を頼って中国地方へと落ち延びていく。
現在、城跡にはかなりの量の石垣が積まれて天守台が設けられるなど、公園化しているが、
この石垣は当時のものではなく、模擬的に造られたものらしい。荒木村重が逃げた後、これを攻め落とした池田恒興がすぐ近くに兵庫城を築くため、花隈城は取り壊した。いずれにしろ当時はかなり大規模な城だったようだ。
そのまま、神戸の南京町(中華街)へ。春節の催し準備の真っ最中で、程よい賑わい。
南京町に来たからには、名物「豚まん」で有名な老祥記(ろうしょうき)へ。
土日などは行列が絶えない店だが、雨模様で平日の午前中ということもあり、2~3人しか並んでいなかったが幸運だった。
持ち帰る人が多いし、私も今まではそうしてきたのだが、今回は店内で
出来たてをいただいてみることにした。フカフカして旨い。1個90円。これでビールでもあれば最高なのだが、この店は本当に豚まんしか無いのである・・・(笑)。豚まんといっても、一口サイズの小さいものなので、10個も平らげてしまった。
少し海岸のほうへ歩き、「神戸華僑歴史博物館」をサラッと見学し、海軍操練所の跡へ。
ここは幕末に、勝海舟が築いた海軍学校があったところ。当時、ここに坂本龍馬、陸奥宗光なども通っていた。なかなか面白いモニュメントが建っている。
さて、この旅もそろそろ終わりが近づいてきた。
新神戸駅に出て駅弁を買い、新幹線で帰京。なんとも名残惜しいが仕方ない。
ちなみに購入した弁当は、これ。「官兵衛の築城弁当」。
写真がうまく撮れなかったので淡路屋のサイトから拝借した。城型の陶器はなかなか良くできているが、たいそう重くて嵩張るので、持って帰ってくるのに苦労した(笑)。中身は鶏つくね、鶏唐揚げ、きんぴら蓮根、官兵衛焼き印入り卵焼、竹炭薩摩揚げ、菜の花煮、人参煮、かやく御飯。味は普通においしいが、、容器に比べて中身には取り立てて特徴がないかな。
官兵衛の弁当は持ち帰ってきたもので、実は新幹線の中で食べたのは、
この「肉めし」(1000円)。淡路屋の主力商品。国産牛のもも肉のローストをサフラン風味のご飯に敷き詰めてある。これ、結構好き。量がやや少ないのと、添え物がしょぼいのは難点だが。関東の駅弁大会とか東京駅の駅弁屋では淡路屋の弁当は売っていないので、なかなか食べるチャンスがない。
あと、お土産で買ったものといえばこちら。姫路城の売店にて。官兵衛のお椀方の兜を模した、ぐい飲みだ。実用にするよりも飾っておきたくなる。
姫路城のお屋敷庭園の建物玄関に展示されていた官兵衛の騎馬人形。
なかなか精巧に出来ているので、欲しかったけどもちろん売り物ではない・・・(笑)。
とまあ、こんな感じで有意義な4日間の旅でございました。鳥取や岡山は、いずれも随分と昔に行って以来、久しく足を運んでいなかったので、今回は本当にいい機会だった。またいつでも行きたいものだ。
最後に1枚。太閤ヶ平(秀吉本陣)から見た鳥取城。