販売者至上主義社会



あるはげた大富豪のおっさん、名をピエールという。
とある店でのできごと。


ピエール「私は外国からやってきたピエール。いいものなら何でも買ってやる。どんどん私の前に持って来い。」
店員「は?いやだよ、面倒くさい。とっとと帰りな。」
ピエール「おい、お前、私は客だ。その客に向かってなんたる態度。頭がおかしいのか?」
店員「はげたおっさんよ、何か勘違いしてねえか?この国は販売者至上主義の国。俺が気に入った奴にしか売らないんだよ。おめえは失格だ。じゃあな。(あごで出口を指す)」
ピエール「販売者至上主義だと!?」
店員「あーそうだよ。販売者は神様ですってのがこの国の常識さ。あんたみてえな一見さんごときがそう簡単に売ってもらえると思うほうがどうかしてるぜ。」
ピエール「そんな常識聞いたことも無いぞ。お前じゃ話にならん、店長を呼べ。お前なんかこの場ですぐクビにしてやる。」
店員「何の冗談だよ?あいにくこの国じゃあ年中人手不足。俺なんかでも三顧の礼で仕方なくここで働いてやってるんだ。それにどこの馬の骨とも知れないあんたに何で俺をクビにする権限があるんだよ。馬鹿なのか?」
ピエール「言わせておけば調子に乗りやがって。いいかこの世間知らず。販売員はお客様を神様のように崇め奉って、深々と礼をしながら買ってくださいと懇願するもんなんだよ。」
店員「乞食じゃあるまいし。俺に言わせりゃあお客様至上主義のほうが頭おかしいぜ。いいかハゲ、客が金を払う代わりにこっちは大切な商品を手放してるんだ。フィフティフィフティじゃないか。客のほうは気にいらなければ買わないし、売るほうも気に入らなければ売らないのが道理ってもんだろ。」
ピエール「そんなふざけた道理があってたまるか。もう我慢ならん。」


ピエールは顔を真っ赤にしながらそう言い放って店を後にした。
その後ピエールがこの国で満足な買い物ができなかったことは言うまでもない。



あとがき
フランスに行った際、とある販売員は客よりも立場が上のような態度でした。
そうでない店もあるでしょうが、ほとんどすべてのお店では客と接客者は対等の立場です。
日本のように客が上で、販売側が下という概念はまったく存在しませんでした。