明日から使える!伝説のコーチングマンガ 「セコンド」
そろそろ最強の地味マンガを決めようじゃないか!
地味マンガの世界にようこそ!J君です。当サイトでは今年、特に「地味さ」をテーマに目立たないけど味のある「地味マン」達をご紹介してまいりましたが、本日も張り切って地味マンガをご紹介してまいります。
地味マンガとは、単なるつまらない打ち切りマンガに非ず。世間の話題になることも無く、アニメ化やドラマ化の話はもちろん起こらず、時代や掲載誌に恵まれずに忘れ去られてきたマンガでありながら、実は読むほどに名作の香りがするという・・・そんな愛しさと切なさと地味さを兼ね備えたようなマンガこそが真の地味マンガであるといえます。本日はそんな地味マンガの中でも「ベストオブ地味」ともいえる作品、「セコンド」をご紹介いたします。
つまり仮に、最強の地味マンガを決めるグランプリその名も
「地味1グランプリ」というのがあるとすれば、本日ご紹介する
「セコンド」はまさに優勝候補筆頭。ちなみに当サイトで過去紹介した
「散歩もの」「アカテン教師梨本小鉄」「飛ぶ教室」あたりも十分
優勝候補に上る地味さを持っています。
ではこの
「セコンド」というマンガが
どのぐらい地味か?
まずテーマが地味。このマンガは
ボクシングのセコンド・・・つまりトレーナーをテーマとしてた作品です。単なるボクシングマンガなら
「あしたのジョー」「がんばれ元気」「はじめの一歩」など名作はいくらでも存在しますが、
「ボクシングのセコンド」をテーマにした作品はあまり聞いたことがありませんよね。要するにボクシングのリングサイドでアドバイスしたりする
おっさんにスポットを当てた作品なのですが、あしたのジョーでいう丹下段平とか、亀田兄弟のお父さんとかのポジションです。
なんというニッチなテーマなのでしょうか。
さらに驚いたことに「セコンド」の掲載誌はあの友情・努力・勝利でおなじみ
週刊少年ジャンプです。本作の連載当時は「ドラゴンボール」とか「聖闘士星矢」とか「ジョジョの奇妙な冒険」がバリバリ現役な華やかなりし時代。そこに満を持してこの絵柄で登場ですよ。
・・・は、ハードボイルドすぎる。
繰り返しますが掲載誌はナウでヤングな若者が読者層の少年ジャンプです。
決して漫画ゴラクではありません。J君は当時この「セコンド」のあまりのジャンプでの浮きっぷりと華のなさに強烈なインパクトを与えられました。
地味すぎて逆にトラウマになるという珍しいケースです。
すごい表紙です
コミックスの表紙がまた
洗練された地味さを醸し出しています。ボクシングのリングをバックに
おっさんの遺影のようなモノがドーンと載ってるだけという・・・とても小中学生をターゲットにしているとは思えませんね。・・・繰り返しになりますが掲載誌はゴラクではなく少年ジャンプです。大事なことなので3度言いましたよ。
ジャンプ史上最強に地味な主人公
主人公はボクシングのトレーナー
大松清司。つまり彼こそが「セコンド」です。中年トレーナーである大松清司と若手ボクサーのボクシングを通した人間ドラマがこのマンガのキモとなっています。ちなみに大松の教え子である若手ボクサー達は皆、大松を慕って
大松先生などと呼んでいますので、本レビューでも敬意を表して大松先生と呼ぶことにします。
ここまで説明してもほとんどの方には全くピンと来ないと思いますので、早速内容をご紹介していきましょう。
第一話(「ROUND1:200グラムの誘惑」)は減量に苦しむボクサーとそのトレーナーというボクシングマンガにありがちなエピソードです。
順調に仕上がってるリュウ
試合のために過酷な減量に励んできたバンタム級6回戦ボーイの
リュウこと五十嵐隆一。彼はボクシングの減量を少々舐めていました。試合の前日に誘惑に負けて
いつもより200G多くオレンジジュースを飲んでしまいます。それが引き金となりもう一口、もう一口と・・・。そして減量に失敗し、試合前の計量に通過できなかったのです。
一転ピンチ
直前にランニングを行い、やり直し2回目の計量をなんとかクリアしたリュウ。危うく失格になってしまうところでした。
やっぱ肉だよね
なんとか計量をクリアしたリュウはホッとして大松先生お手製の弁当を食べはじめます。しかし、計量をクリアしてから試合までの間にボクサーには
さらなる落とし穴が待っていたのです。
特製すぎるジュース
「あったかい紅茶にハチミツとレモン 朝鮮ニンジンを入れてある」
絶対冷たい飲み物は飲んではいけないと、大松先生お手製の特製ホットドリンク(通称
セコンドジュース)をすすめる大松先生。そして・・・・
絶対押すなよ!
「いいな、くれぐれも冷たい水は飲むなよ」
と釘を刺し、控え室を出て行きます。しかし・・・
「絶対飲むなよ」といったら飲みたくなるのが人情というものですね。いわゆる
ダチョウ倶楽部の法則です。
ホットは嫌いみたいです
どうやら大松先生お手製のホットドリンクなど眼中にない模様のリュウ。そして・・・遂に
禁断のアレに手を出してしまいます。
夢にまで見たんなら仕方ない
「ああ、夢にまで見たひと口・・・」
この体の震えっぷり・・・完全にコーラジャンキーですね。
どんだけコーラ好きなんだ。そして、大松先生の忠告を聞かなかったばかりに悲劇は起きました。
生々しいシーン
ドドーン。
バカヤロオッ
「バカヤロオッ」
これが、連載当時のジャンプ読者(の一部)がトラウマとなった
伝説のリュウのゲ●吐きシーンです。かつてこれほどまでにリアルな●ロ吐きシーンを描いた少年マンガがあったでしょうか・・・。
ボコボコです
完全にコンディションを崩しボロボロのリュウ。試合は大松の投げたタオルにより、屈辱の
レフリーストップ負けです。
コーラで台無し
「どうせ俺は減量すらまともにできないダメなやつですよ」
試合後、控え室で自暴自棄になるリュウ。しかしここで、大松先生が熱い一言ですよ。
ナイス名言
「腐るなよ、這い上がるのは所詮自分一人の力でしかないんだ」
いい先生ですね
「一週間ゆっくりキズをいやせ、そして考えろ 俺はいつでもジムにいる」
なんという熱いセリフ。大松先生は自分教え子を決して見捨てないのです。
演歌調です
「11月の夜風は冷たい・・・・・・特に教え子が負けたこんな夜は・・・・・・・」
なぜか
シメのセリフが演歌調なわけですが・・・胸にジーンと来ますね。ただの地味なマンガだと思って舐めてかかると後半にこういった泣かせるセリフがガツンと飛びかかってくる、この味わいこそが
「セコンド」という作品の醍醐味なのです。コーラじゃなくてノンカロリーの
ペプシNEXにしておけばもう少しマシだったんじゃないか?とかそういう無粋な発想は決してするべきではありません。
その他、
第四話(「ROUND4:ロッキーになれなかった男」)ではすでにタイトルからして尋常ならざる哀愁が漂いまくっているわけですが、今回の主演は
横田健一というミドル級ボクサー。
同門対決の悲劇
そのテーマは
同門対決の悲劇。プロボクシングでは同じジムの選手同士の対戦は禁止されているのですが、新人王戦だけは例外であり、その例外の同門対決が大松先生の教え子の二人の間で起こってしまいました。そして、同門対決が発生した場合、
どちらかが棄権しなければならないというのがボクシング界の暗黙の掟なのです。
ダメダメじゃん
横田は
通算戦績2敗3分け、運よく不戦勝と引き分け判定だけでトーナメントを勝ち上がってきました。対する西岡良二は
4勝(3KO)1分けという素晴らしい成績。大松先生の教え子の中でも超期待のホープ。
期待のホープ西岡
西岡はこんなパンチを持った凄いヤツです。どちらが棄権させられるのは火を見るより明らかですね。というわけで大松先生はジムのオーナーと共に
速攻で横田に棄権を打診します。しかし納得がいかない横田。
余裕でわかります
「そんなものやってみなきゃわからんじゃないか!」
いやいやいや・・・
小学生でも分かるレベルの算数問題です。残念ながら。
そんなこんなで無理やり不戦敗にさせられ腐ってしまった横田は翌日からジムの練習に来ません。そして、大松先生の嫌な予感が的中してしまいました。
分かり易いグレ方
ドドーン。
暴力事件を起こしてタイーホ。ボクシングをやめたらただのDQN。
絵に描いたような転落人生を描いております。
完全に保護者です
ビックリして警察に迎えに行く大松先生。
警察にも怒られて散々です。
ラブシーンに照れる大松先生
彼女の恭子ちゃんまで泣かせてしまいます。横田・・・人として落ちまくってますね。
ファミコンロッキーではありません
そんな横田の自宅にはロッキーのポスターと
受験生のような張り紙が。
KOは控えめに
めざせ新人王!!取るぞKOだ!!
判定勝ちしかしたことがないせいか
KOの字は控えめに小さくなっていますね。
あてつけまくり
そして、これ見よがしこの張り紙を破り捨てる横田。完全に
大松先生へのあてつけですね。やることが小学生レベル。
そして自分がいかにボクシングにかけていたか、彼女に期待されていたか、大松先生に裏切られてショックだったかなどなど、うらみつらみを訴えます。
「どっちが残酷だよ・・バカヤロウウ・・・」
バカヤロウウ
ドドーン。
横田の事情など当然露知らずだった
大松先生は顔面蒼白です。そりゃブルーになりますよね。
そんな感じで
ボクシングのマンガのはずなのに、ボクシングをさせてもらえなかったというなんとも切ない話です。たしかに
全然ロッキーじゃありませんね。
その他にも
「マジメだけがとりえの新人」とか
「噛ませ犬ボクサー」などことごとくボクシングの才能が残念な感じのボクサーのエピソードが出てくるのですが、できの悪い教え子こそ可愛いというものです。そんな中で随所に・・・
トルストイからの引用です
「光あるうち光の中を歩め!!」
こういった明日からでもビジネスで使えそうな名言がバンバン飛び出すのがセコンドクオリティです。
しかしここまでなら普通の地味マンガレベルの域を出ません。本作品を名作たらしめたのは
最終話(「ROUND6:MY BOY」)のあまりに濃ゆいエピソードがあるからです。
褒めて伸ばす、コーチングの究極テクがここに凝縮されていました。
この話の主演は
アンディ・インガルスという老トレーナー。数々の世界チャンピオンを輩出した名トレーナーであると同時に大松先生のトレーナーの師匠でもあります。
大松の師匠アンディさん
「ヘイ大松その調子 あなたいいトレーナーよ最高よ!!」
このアンディさんのキャラが凄く濃いのです。さらに名言の宝庫。セリフがことごとく神がかっていて脳裏に焼き付いて離れません。まず若手ボクサーの褒め方がハンパない。
一歩間違えたら褒め殺しじゃないか?というギリギリのラインを狙ってとにかく褒めまくり。
メッチャ褒めます
「ウワオーッ!!ナイスパンチ!!」
それは言い過ぎでは?
「そうよ、ボーイ!それ!! そのパンチさえあればあなた世界チャンピオンよーーっ!! 」
殺しちゃマズイだろ
「オーッ すっごい すっごいよ これ当たったら相手死んじゃうよォ」
どう考えても
世界チャンピオンは言い過ぎだと思うのですが、ここまで徹底的に褒められると若い衆はやる気出ちゃいますよね。
「オーッ すっごい すっごいよ」とかは
今夜のベットタイムでさっそく使えますね。大きなお世話ですかそうですか。
そんなアンディさんの究極のキメ台詞がタイトルにある
「MY BOY」。この「MY BOY」の精神こそアンディさんのボクシング博愛主義を象徴するセリフなのです。象徴的なのがこのエピソード。
大松の教え子は試合に勝利し、ホッとしていましたが、一方で試合に負け、控え室で鉄拳制裁を受ける相手選手。それを聞いて自分の教え子でもなんでもない
相手選手の控え室に乱入するアンディさん
乱入するアンディさん
「なにするのあなた!!やめなさーーい!!」
すげえ・・・
選手を守ろうとして間に割り込んだために、
替わりに殴られてブッ飛ぶアンディさん。老人なのにすげえ・・・。
アンディさんショック
「どけっそいつはうちの選手だっ ”よそ者”は引っ込んでろ!!」
相手側のトレーナーがそういうとアンディさんが激怒。
逆ギレアンディ
「Get out!!(出て行きなさい)」
アンディさん、
クリリンを殺された時の悟空のごとく超怒ってます。どう考えても
アンディさんの方が部外者なのですが有無を言わせぬほどの気迫で逆ギレ。そして、一転涙・・・。
「”よそ者”なんて・・・そんな・・・そんな悲しいこといわないでください。」
「ボクサーを愛する者に”よそ者”なんていないですよ 負けてもガンバッたボクサーはみんな・・・・・・」
教えてなくてもMY BOY
「みんなわたしの教え子MY BOYです」
ドドーン!
なんという超俺理論。アンディさんにとっては別に教えてなくても
「みんなわたしの教え子 MY BOY」なのです・・・アンディさん、セリフが神がかってます。
アンディさんに追いつけ追い越せと張り切っていた大松先生ですが、このアンディさんの
キリスト並の心の広さを見せ付けられすっかり感服してしまいます。しかし、そこにもアンディさんの名言が降り注ぎます。
みんなMY BOY
「ユーもわたしの教え子 MY BOY だからね」
ここ笑うところです
「もっとも ちょっぴり年くった ひねくれボーイだが・・・」
大松先生まで
ボーイ扱いです。アンディさん最強すぎる。
ちなみにアンディさんのモデルは実在の名トレーナー、
故エディ・タウンゼント氏なのだそうです。
MY BOY伝説は実話だったのです。驚きですね。
そんなわけで、残念ながら
全6話という
ジャンプの中でも最短クラスの短命ぷりを誇る地味マンガ
「セコンド」ですが、実は
実践的コーチングマンガという別の側面を持った名作だったのです。皆さんの職場にもそろそろ新人が配属されたりする時期になったのではないかと思いますが、そんな時こそ新人育成に褒めて伸ばす
「MY BOYの精神」を導入することを強く推奨いたします。
「ウワオーッ!!ナイス営業トーク!」
「その企画書さえあればあなた常務取締役よーーっ!! 」
とかとか。明日からでもすぐに使えますね。そして後輩が落ち込んでいる時は
「ガンバッた後輩はみんな、みんなわたしの教え子 MY BOYです。」
とかいって
ジュースでもおごってやるのがいいんじゃないでしょうか。あ、でもその際
コーラだと吐くかもしれないのでやめておいた方が無難ですね。
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出典) セコンド 井上泰樹/集英社
参考) Amazon → ■ レビュー → ■ Wikipedia → ■
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