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2009年07月20日

世にも悲惨な天ぷら定食・・・グルメマンガ短編集「天食」

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世にも悲惨な天ぷら定食・・・グルメマンガ短編集「天食」





やっぱり男は冷えたイモ天よ!
こんにちは、J君です。最近3回に1回は孤独のグルメがらみのレビューをしている気がしないでもない今日この頃です。9月には孤独のグルメCDも出るらしいですし、なにかと話題に事欠かないですが、今宵も孤独のグルメ関連作のレビューです。

今回レビューするのは「天食」というマンガの短編集です。天食とはすなわち天ぷら定食のことなのですが、この作品に出てくる天ぷら定食の悲惨さは想像を絶するものでした・・・。

「天食」の作者は泉昌之(孤独のグルメ原作者の久住昌之先生と泉晴紀先生のユニット名)です。当サイトでは以前「芸能グルメストーカー」という作品をレビューいたしましたが、こちらは女性タレントの行きつけのお店を訪問してあれこれ妄想するというグルメマンガ界随一の変態さを誇る内容なのですが、これもまた泉昌之作品でした。また、野武士のグルメも文章は久住先生ですが表紙イラストは泉晴紀先生ですので関連作品といえるかもしれません。で、今回の「天食」の表紙も野武士っぽい感じです。

尋常でない「天食」の表紙

エラいことになっていますね。表紙の迫力が漫★画太郎先生とタメを張るレベルです。なんか・・・すごく書店で手に取りづらいオーラを放っています。

「天食」のご紹介をする前に泉昌之先生の代表作「かっこいいスキヤキ」という作品を紹介しておかねばなりません。「かっこいいスキヤキ」内に収録されている「夜行」という短編が孤独のグルメのルーツ的存在となる、異常に細かいグルメ描写を描いた伝説のマンガとして知られています。

かっこいいスキヤキ

1人夜行列車に乗るトレンチコートを着た男。おもむろに駅弁を食べ始める。メインディッシュはトンカツ。メインのトンカツにたどり着くまでに、ご飯や副菜を緻密に計算された配分で一歩一歩、食べ進める。それは、メインであるトンカツを最後に、最もドラマティックな形で食べるためのその男なりの戦略だったのです。


緻密に計算された弁当攻略

そしてクライマックスを迎え、ついにメインディッシュのトンカツにかぶりつく主人公。しかし・・・トンカツだと思っていたそのカツの中身は実は(ネタバレ)・・・という壮絶にして残酷なオチ。その絶望感はまさに全駅弁ファンが切腹したくなるレベル

駅弁にまつわる究極の悲劇を描いた「夜行」・・・そして、同じ主人公による事実上の続編となる作品が「天食」に収録されています。登場するのは同じトレンチコートを着た男、本郷。今夜も旅先でちょっと異常なまでのコダワリっぷりうざいぐらいのウンチクでお店を物色します。


サンプルは大事ですね

「ここはダメだサンプルがまっ茶色だ」


厳しいなあ

「ここもアブナイ中華と洋食ってポリシーがなさすぎる」


まあ確かに・・・

「ここもマズイな自動ドアが花柄のシールじゃあ・・・」

ね、このくだりだけでも十分ウザいですよね。たしかに、J君も自動ドアに花柄シールの店は避けてる気がしますし、多かれ少なかれ皆さんも無意識にこうやってお店を選定していると思いますけどこの男がやるとなぜかウザい。そんな中、ようやっと彼のお眼鏡にかなうお店登場。


のれんも大事です

「洗いざらしの白いノレンがマジメだ」


それは普通な気が

「食堂の二文字がなんともそそるじゃないか」
「中華と洋食」はダメで「食堂」ならOKって・・・ものすごく紙一重な判断ですね。
そして、店に入ってからものこだわりっぷりも細かいです。


考え過ぎじゃないの?

「ビールに(大)と(中)があるのも俺心をくすぐる心遣いじゃないか」
別に心遣いじゃなくて「たまたま」なだけの気もしますけど・・・とにかくいちいち細かいです。そして天ぷら定食における緻密なまでに計算されたタイムテーブルが語られます。


タイムテーブル

最初に単品で頼んだビール、冷や奴、ラッキョウ、焼き海苔でメインの天ぷら定食ができるまで晩酌タイムを過ごすのです。そして、天ぷら定食が出てくると同時にラッキョウと焼きのりの一部をおかずに移行し、食事タイムへ移行するというタイムテーブルです。

なるほど、読んではじめて気づいたのですが、天ぷら定食というのは、ツマミと食事のハイブリッドなのですね。天ぷらなんて最近「てんや」ぐらいでしか食べてないせいで気づきませんでした。


いかにもオヤジが言いそうなセリフ

「ビールがうまいうちゃ死ねんぞ!!」
・・・もう、ウザいオヤジの典型ですな。
しかし、完璧かと思われていた天ぷら定食のタイムテーブルに暗雲が立ちこめます。出てきた冷や奴と焼き海苔のクオリティがやたらに低かったのです。


これはひどい

ネギすらのってないスーパーの一番安い冷や奴


これもひどい

バリバリ市販の味付け海苔


吉野家並みの早さ

そして・・・予想に反して速攻ででてくる天ぷら定食。こ、これはまさか・・・






まさに地獄

「作り置きの天ぷらだ!!」
散々、店選びにこだわったあげくこの仕打ち。悲惨ですね・・・。

天ぷらほどアツアツ状態なのと冷めてる状態の落差が激しい食べ物もないですよね。全く別物といっていいです。揚げたての天ぷらはといえばまさしく小金持ち達が好む至高のジャパニーズフードです。しかし、その一方で冷めた天ぷらのイメージは真逆。貧乏臭く、脂っこく、冷めたマックのポテトにも劣る味わい・・・まさにジャンクフードの極みです。その天ぷらにおける天国と地獄、究極の悲劇がまさにこの天ぷら定食に起こっているのでした。

揚げたてかと思っていた天ぷらが作りおきであることが判明し、緻密に計算されていたタイムテーブルがガラガラと崩れ落ちます。そして、再構築。


まんぷくチームとほろ酔いチーム

冷えた天ぷらをビールのツマミにまわし、海苔をおかず側へ・・・



ポジティブ思考

「ツマミとすれば冷えた天ぷらもこれはこれでお総菜感覚でイケル・・・と思いこむのだ!!」


無茶な理論です

「やっぱり男は冷えたイモ天よ!!」
なんというポジティブ思考。やはり独り飯ではある程度ポジティブシンキングができないと、ハズした時にどん底まで落ちますからね。発想の切替は大事です。

そんな感じでなんとか晩酌タイムをクリアしいよいよ食事タイムへ。再び作戦タイムです。そこで考えられるのは2つの食事スタイル。


団体戦スタイル

エビ天を「大将」と考え、柔道の団体戦のように流れを作って盛り上げるスタイル。


官能スタイル

いろんなものを少しずつ食べながらループを描いて満腹のエクスタシーに向かって官能的に盛り上がるスタイル。

ちょ・・・エクスタシーて。その発想はなかったわ。
しかし、いかんせん天ぷらのクオリティが低すぎるためにどちらの手法も採ることが出来ませんでした。そこで、結論として導き出されたのが・・・暴走食い


風になりました

「全ての味が形を失って俺の中を通過し俺は今、風になる!!」
あーあ。要するにただのヤケ食いですね。

しかし、ここでちょっと悪そうな野郎の一団が登場。ここで天ぷら定食史上究極の悲劇が起こるのでした!・・・ネタバレになっちゃうので是非オチは作品を読んでみてくださいね。


さて、その他に収録されているグルメ短編集としては「食い改め候」という、なぜか現代になのに36(ムッツリ)左衛門という光宙と書いて「ピカチュー」と呼ばせるぐらい無茶な名前の野武士が登場するシリーズがあります。

この36(ムッツリ)左衛門、侍のくせにジャンクフード好きというよく分からない趣向を持っているのですが、例によってウンチク、こだわりのオンパレードの挙句に結局不味いものを食う羽目になるという悲惨な主人公です。



期待と違う冷や中

近所のそば屋に冷やし中華を食べに行ったら、サンプルと全然違う創作冷やし中華が出てきてガックリでござる・・・な話。


タダ飯の荒野=デパ地下

毎回デパ地下で試食ばっかりして、一切買わないでいたらデパートの店員にケチンボ侍と噂されていたでござる・・・な話。


よくやりますよね

家でカップ焼きそばを作っていたら、湯切りの時に台所の三角コーナーに麺を大量にぶちまけてしまったでござる・・・な話。

などなど・・・そんな感じで、この「天食」は主人公が散々こだわってウンチク語って注文したメニューがことごとく不味いという悲惨なグルメのエピソード満載で、孤独のグルメとはまたかなり違った雰囲気のグルメマンガとなっています。独り飯が日常茶飯事な人にはきっと共感できると思いますよ。とりあえずJ君はこれを読んで、定食屋で天ぷら定食を頼むのが怖くなりました

ちなみに後半はグルメそっちのけで小学生レベルの下ネタ満載の展開になってます。なんでもこの短編集のコンセプトが便所飯ならぬ「メシと便所とオヤジギャグ」なのだそうで・・・完全に女性読者層を切り捨ててる感がありますがその潔さがまさに野武士ってことで。

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