◆中国人社長が一部上場企業を築き上げる
10月9日夜10時からの日経スペシャル「カンブリア宮殿」のゲストは、ソフトブレーン創業者、宋文洲氏であった。
ソフトブレーンのメインのソフトは、営業の日報などの効率を上げるソフトで、文字の入力を一切しないで携帯に打ち込み、作成して送信するようなソフトだという。会社の売上は30数億円。就業時の5時半近くになると、徐々に部屋の電気を消していくのだそうだ。残業はしないという意思表示であるという。
1960年代の文化大革命の時代に中国の資産家として生まれ、資産家であった宋氏の一家は迫害されて生きたという。宋氏も幼少時に、死にそうな経験をしたという。しかし苦学して成人後に日本に留学、その後ソフトブレーンを創業。一部上場企業にまで育て上げた。創業時も中国人ということで苦労が多かったようだ。しかし今年の8月に会長職を退いて、経営の一線から離れてしまった。
理由は講演活動や文筆活動に専念するためという。その前に、ソフトブレーン株もほとんど売却しているはずであるから、完全に自分の創業した会社から離れてしまったということになる。会社を上場させるのと、さらに大きくするのはまったく別の才能だ、というようなことも言っていた。

◆やっぱり変だよ日本の営業
以前タブロイド版の夕刊紙で、宋氏が営業のことなどに触れていたのを読んで、とてもしっかりした、また面白い発想をする人だと思ったのを覚えている。「営業がサボってるのは当然、僕だってさぼるから」というようなことをいっていたような気がする。後で知ったが、この人は『やっぱり変だよ日本の営業』という本を執筆していた。トヨタの張社長などは、この本を大量購入して社員に読ませたという。
私はこの本は読んでいないが、カンブリア宮殿では、日本の営業の「気合、根性論」「会議の中身がなくて、会議のための会議になっていること」「多すぎる決済印が、責任転嫁・逃れの道具になっている」「残業を評価する風潮になっている」などということを分かりやすく批判していた。
根性論は、実際に自分の会社に雇った営業責任者を見て痛烈に感じたという。いつも「根性論」を振り回していたが、売上は変わらず経費だけが増えたため、最終的には辞めてもらったという。しかし最近では、日本の会社もかなり戦略的に動くようになったのではないのか。日本の精神論は、太平洋戦争時からの伝統かもしれない。

◆常識を疑う
また日本の良いところとしては、「チームワークの良さ」について触れていた。チームワークの良さは、日本の長所としてたびたび言われていることであるが、「同僚がクレーム処理に回っているのに帰れない」などといって気遣うようなところは、中国などでは考えられないという。
「適切な所得格差」についても必要だということを言っていた。もっともであるが、今の格差社会は、その格差が定着化して一旦落ちると這い上がるのは難しい、という「階層社会」に向かっているような気もする。
宋氏は「苦労したから、ハングリー精神があったから成功したのだ」と言われることがあるという。しかしそれは違うという。「別に体をこわすほど働いていないし、残業もそれほどしていない、多少人より仕事ができたということはある」という。確かにそうである。苦労して、それがハングリー精神として原動力になったとしても、それだけで成功できれば皆、成功者となっている。
やはりこの人の成功要因は、頭の良さ、行動力、それから常識に捉われないで、真の正しい姿、あるべき姿というものを見抜くことができるということであろう。常識とされていることには、おかしいことも多い。それでも、おおかたの人がそれに気づかずにいる。それを見抜く能力というものが重要なのであろう。司会の村上龍もそのようなことを言っていた。
社員に残業はほとんどさせないで、余った時間で社員が自発的に勉強することが必要であるという。「社員に楽をさせながら、効率が上がり、仕事ができるようになるのがうれしい」という。