○平均給与の下落とその要因
◆労働者の平均給与は年々減少
厚生労働省の毎月勤労調査によると、2007年7月の5人以上の事業所の一人当たり平均給与は約38万7千円で、8ヶ月連続で前年同月を下回っている。06年の年間平均額は02年に比べて約7千7百円少なくなっている。
国税庁の「税務統計から見た民間給与の実態」で見ても、民間企業に勤める人の平均給与は、直近の05年度まで8年連続で減少している。

◆企業の収益は好調だが、賃金以外に収益を配分
一方、企業収益は好調。財務省が3日に発表した法人企業統計では、4〜6月期の企業の「経常利益」は前年同期比12%増加し、24.4半期連続の増益。
増加した企業の収益は「経済のグローバル化で国際競争が激化し、設備投資や内部留保に充てる割合が増えている。またM&A(合併・買収)が活発になり、買収から企業を防衛するために配当を手厚くする傾向もある」そうである。

◆年齢構成の変化、再雇用、非正社員の増加等も賃金下落要因
賃金の下落要因は、以下のようなものも大きいという。
’齢構成の変化
日本の労働者の賃金は通常、50〜54歳ごろが最も高くなる。人口の多い団塊の世代が54歳を過ぎ賃金が減少していくと、全体の平均賃金も減少していくそうである。
∈童柩僂篦蠻延長
再雇用や定年延長が広がり、以前より低い賃金で働き続ける人が増えたこと。これが賃金の低い労働者の割合を増やしている。
就業構造の変化
就業構造の変化も大きいという。ここ数年、全労働者に占めるパート・アルバイト、派遣社員など、正社員でない人の割合が上昇したこと。
総務省の労働力調査によると、非正社員は5年前に比べて300万人以上増加し、今年4〜6月には全労働者の33.2%を占めるという。

○大企業と中小企業の格差が平均賃金下落の隠れた大きな要因
◆中小企業の労働者の賃金減少が続く
上記が平均賃金の下落の主な要因であるが、実は、もうひとつ大きな下落要因があった。
中小企業の労働者の賃金減少が続いている。特に労働者の多い、卸売業や飲食店、宿泊業などの業種での下落が深刻なのだそうである。

◆大企業の平均賃金は上昇、42%を占める小規模企業は一貫して下落
毎月勤労統計で00年以降の事業所別の平均賃金の推移を見ると、500人以上、100〜499人、30〜99人の事業所は、おおむね04年まで下落傾向が続いた後、05年に増加に転じ、06年も増加している。
ところが、もっとも小規模な5〜29人の事業所だけは01年から一貫して下落し、05年、06年も下落が続く。00年と比較すると、7.2%も減少している。実はこの規模の事業所で働く人が最も多く、全人口の42%を占めるそうである。
ここ2〜3年、賃金が上がったのは、大企業や中堅企業で、実際には下がり続けている中小企業が多いということである。

◆中小企業の業績悪化は構造的なもの
中小企業の賃金下落については以下のように書いてある。「原油価格などの上昇で、仕入れ値があがる一方、デフレで販売価格を上げることができない。価格に転嫁できない分、人件費の抑制で利益を出そうとしている」
また、「卸小売業の小規模企業は、近くに大型のショッピングモールが開店して客を奪われるといった現象が常態化している。製造業では原材料価格が上がっているのに、交渉力が弱いために製品価格を上げられず、利益を出せなくなっている。コスト圧縮のため、賃金が減っている」とも解説している。

◆資本装備率の格差
また大企業では従業員一人当たりの資本装備率が増加しているが、ハイテク化が進み生産設備の価格が上昇したことなどで中小企業では資本装備が進まず、労働生産性の格差が広がっているということである。

「景気回復といっても小規模な企業にはあまり及んでいません。そうした企業で賃金下落が続いているので全体の平均賃金も下がっている」「大企業と中小企業の格差が一段と拡大している」と結んでいる。

◆大企業と中小企業の格差拡大は今後も広がっていくのか
以上は日本経済新聞07年9月23日朝刊『エコノ探偵団』からの引用であるが、平均給与の減少は、突き詰めれば「大企業と中小企業の格差の拡大」に行き当たる。全労働人口の44%を占める小規模企業の賃金が落ち込んでいるのが大きな原因ということであった。
バブル崩壊前は、景気回復は中小企業から始まるということもあった。しかし、構造的に大きな変化が生じたようである。
大企業の景気は回復しても、中小企業の景気は回復しないということである。その理由をまとめると、以下のようなると思う。
仝矯猯舛旅眛を価格に転嫁出来ない。
下請企業等の交渉力の弱さ。
B膩織轡腑奪團鵐哀癲璽訶の大型店に小売店の顧客が奪われている。
せ駛楞備が進まず、大企業との労働生産性格差が拡大。
ッ翦瓦による零細卸売業の苦境。

税理士事務所や中小企業診断士がターゲットとしている企業は、ほとんどが従業員29人以下の事業所である。であるから、やはりこの大企業と小規模企業との格差拡大というのは切実な問題である。このまま、小規模事業の利益が上がらないという構造が続くことがないように願うものである。