現代の歯科医療において歯科技工士さんは無くてはならない存在です。私も有床義歯の技工はかなり自分で行いますが他のインレーやクラウンブリッジすべて自分で行うことは無理です。ほとんどの歯科医師は自分で歯科技工を行うことは無く歯科技工士さんの助けで歯科医療が成り立っているのが現実です。

 しかし現在若い歯科技工士さんはほとんど育っていません。原因はせっかく技工士学校を卒業して歯科技工士として就職しても低賃金、長時間労働で他の職に転職してしまう人が多いためです。技工士学校も定員割れや閉鎖される所が相次いでいます。統計上10年後は歯科技工士は現在の半分くらいになってしまうといわれています。当然増え続ける歯科医医院の需要を満たすことは出来なくなると思います。

 原因は健康保険の診療報酬の中で十分な製作技工料が認められていないからです。厚生労働省の大臣告知で保険点数上の製作料は概ね歯科医師3、歯科技工士7の割合で按分することとされていますが実際は歯科技工所間のダンピングでかなりの低料金で歯科技工が委託されているのが現実です。悲しいことにできあがった技工物(入れ歯やクラウン、ブリッジなど)に対し質は問わない、ただ安ければいい。と考える歯科医師がかなりの割合にのぼるのが現実です。数年前から中国などで制作された歯科技工物まで日本人の口の中に入っているのです。

 参議院選挙が迫っています。毎度のことながら歯科医師会政治連盟は独自候補を自民党から比例代表で擁立しています。前回参議院選挙では橋本1億円事件で独自候補の擁立を断念せざるを得ない状況でしたから今回はまさに背水の陣でしょう。政治連盟を脱退した私の所にすら何回も提出した名簿の確認や期日前投票の依頼のメールが地元歯科医師会から来るほどです。

 以前は歯科界からの候補は技工士会の協力も得て選挙に取り組んでいました。
しかし今回は日本歯科技工士会からも候補が擁立されています。
その背景には日本歯科医師会が歯科技工士会から窮状を改善するための要望や話し合いを受け付けなかったためです。
残念なことに日本歯科医師会の役員でも歯科技工料は安いに越したことはないと考えるような歯科医が多いようです。
来週の参議院選挙でどんな審判が下されるか?私はいつまでも政治力に頼って物事を進めるようなことは時代錯誤も甚だしいと考えますがそうは思わない歯科医師会役員が多いようです。
参議院議員の1人や2人送り出すより霞ヶ関に歯科医の審議官を作る方がよほど歯科医師ばかりでなく国民のためになると思います。

 保険の診療報酬が上がらないことに不満を持つ歯科医師が大多数だと思いますがその歯科医師の多くが一方で保険の歯科治療では良い治療が出来ない、として患者さんには自費治療を勧めている現実があります。その犠牲になっているのが現在の歯科技工士さんでしょう。でも歯科医師が良くないと言っている保険の診療報酬が国民患者さんの合意を得て上がるのでしょうか?
私はそうは思いません。まず歯科医師が保険の歯科治療でも最善を尽くすべきです。その前提があればこそ患者さんは信頼を寄せてくれるのではないでしょうか。

 現在の日本歯科医師会は湘南宣言に見られるよう保険を軽視し混合診療推進の立場を取っています。これはかつての差額診療の復活を目論むものでけして患者国民の立場にたったものとは思えません。

 保険制度の中で歯科治療の中に含まれている歯科技工料は薬の調剤のように保険制度として歯科医療と切り離して独立させるべきではないでしょうか。技工士さんが保険技工士として患者さんの歯科技工を独自で保険請求すべきなのです。
そうなって初めて歯科技工士さんの間でも価格競争から品質競争が出来る下地になるのではないでしょうか。それは患者さんにとっても望ましいことだと思います。

 布山歯科医院では保険の治療と自費の治療では質的な差はもうけていません。根管治療、歯台築造、歯周治療など歯科医師がきちんとやらなければならない治療には最善を尽くすべきと考えています。補綴物でも単に材料が違うだけの自費治療は行いたくありません。メタルボンドやセラミックの修復物、金属床の義歯がその代表でしょう。
自費治療は単に材料が違うだけではなく患者さんに具体的なメリットがなければならないと思うからです。