2007年03月10日

小川洋子「博士の愛した数式」4

毎回会う度に、初対面の人のように挨拶をされる
同じ質問に同じ答え
病気だと分かっていても、相対する人は戸惑いを感じるだろう

連続する時間と記憶の堆積が、唯一自分の存在の標とも言えると私は思う
80分と言う時間しかないなら、私はそのなかで無理矢理ひとつひとつの出来事の完結を望むだろう
本を読むのも映画をみるのも友人と話をするのも その時間内に
そして80分の世界が終わり、私はゼロに戻る
満足感や幸福感は一時の感覚ではなく、その記憶なのだ
ならば80分の記憶になんの意味があるのか

記憶が80分しかもたない博士  彼の家で働くコトになった家政婦
いつも薄暗い家のなかで数式のコトだけを考えている博士との落ち着かないやり取りの毎日
そこに彼女の小学生の息子ルートが登場し三人の新しい世界がはじまる

読んでて頭に寺尾聡が常にあるのが残念で残念で残念で......ならない
あまり好きではない 映画見てないけどあのポスターとか頭に残りすぎ
博士フェチな私(え〜!)としては、私だって家政婦になれる!と思うほど
ま〜それはそれで...
なんとなくこういう作品が好みでないので期待なく読んだものあり、とても面白かった
もっと家政婦と博士の恋愛に似た関係とかあるのかと思っていたので、予想を裏切ってくれて嬉しい

女性に対してではなく子供に対する絶対愛の源みたいなものと
数学に対する思いの源を、博士そのものに象徴させているのか?
 美しい数式
私は数学=森博嗣的な構図があり、理解してないけど私の理系免疫は
まるで数学に美しい音楽を聞くようなイメージをもてっている
(ある種わたしには理解できない逃避とも言えるが.....)

病気のために常に不安でいつも孤独である博士 
しかし数式に対しての博士の孤独は孤高とも呼べるものでもある

この本に出て来るたくさんの数学的言葉 素数やら自然数、フェルマー...
なにひとつ思い出せない
あたりまえの言葉でしか説明できないけど、だんだんと人を思いやる心とかを芽生えさせ
素晴らしい関係を作りだした彼らに静かにジーンときました
博士の数字を話す言葉もとてもいい
そうなんですよね 涙がとても出るとか そんな感じではなくて
染み入ると言うか ん〜 そんな感じ

おまけに義弟の面倒を何十年も見ている姉を登場させ、うまいなと思った作品でした
さすがの第1回本屋大賞受賞作 でも映画は観ないな....

博士の切断される記憶は、親子の続く記憶のなかに織り込まれ
彼らにとって忘れられないひとつの標となる
やさしくて残酷なお話だな

tg-wco4be2 at 03:10│Comments(19)TrackBack(4)clip!小川洋子 

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 組み合わされた欠片  [ 活字の砂漠で溺れたい ]   2007年03月10日 18:51
例えば 「清々しい夏の朝日が差し込む部屋」という 文章に触れた時、人はどのような風景を 思い浮かべるのだろうか。 多分それは指紋と同じように、 世界中の人々の頭の中を探し回っても、同じものは無いはずだ。 その人が育ってきた環境、 瞳に焼き付いた記憶や経....
2. 博士の愛した数式〔小川洋子〕  [ まったり読書日記 ]   2007年03月11日 21:26
5 なんて美しく、優しく、切ない物語なんだろう……。 今週末から映画公開される、珠玉の物語です。 博士の愛した数式 世界は驚きと喜びに満ちていると、博士はたった一つの数式で示した――。 著者最高傑作。 彼のことを、私と息子は博士と呼んだ。 そして博士は....
3. 博士の愛した数式 [小川洋子]  [ + ChiekoaLibrary + ]   2007年03月12日 11:18
博士の愛した数式小川 洋子 新潮社 2005-11-26 いわずと知れた名作…再読です。最初に読んだときは、単行本を友達と半額ずつ出し合って買いました(貧乏)。なつかしい思い出…。現在、現物がその友達の手元にあるため、文庫本を買って再読してみました。 どこかの雑誌...
4. 博士の愛した数式(新潮文庫・小川洋子)  [ 文庫の本棚 ]   2007年03月13日 22:23
たった今読み終わって、ものすごい感動に包まれています。 最後の1ページは、涙があふれて胸が詰まりました。 今も、涙腺がじわっときます。。。 「ぼくの記憶は80分しかもたない」 くたびれた背広に無数のメモを貼り付けた「博士」は、 事故の障害により、きっかり80...

この記事へのコメント

1. Posted by yori   2007年03月10日 18:57
そうですか、博士フェチでしたか・・・
そんな気がしていました 爆笑

>やさしくて残酷なお話だな

きっと優しさと残酷さは表裏一体なのでしょう。
それがどちらかを決めるのは、受け取る側の感情なのだと思います。

2. Posted by 流花☆   2007年03月10日 18:58
これは映画の公開してた時に気になってました。
じんわりと言う感じで良さそうですね。
でも私も寺尾聡しか頭に浮かばないです
ルビーの指環のイメージが強すぎてちょっと嫌ですね
3. Posted by きりり   2007年03月11日 01:51
yoriさん
そうなんですよ たぶん理系は理解できない世界なんで憧れるんでしょうね
理解できない世界なのに美しいとか言われると、素敵だぁ〜とかなる お茶の水博士とかまで範囲に入るかは謎です
さておき.. やさしさと残酷さとか、記憶と存在の関係とか考えたことがなかった
読んでる時と読み終わった時、またまた色々考えてしまう作品でした
4. Posted by きりり   2007年03月11日 01:54
あ〜〜〜〜〜流花さん 私もルビーの指輪のイメージしかないんですよ そのイメージ大き過ぎ半落ちとかも見れない
普通の恋愛小説ではないし、感動巨編でベタついてないし、なかなか良いところをついた本です
森ファンもOKです(って薦め方が違うって)
5. Posted by 菱沼   2007年03月11日 10:44
きりりさまo(^-^)oこんにちは。私は映画のキャストが決まる前に読んでたので良かったです。私は博士=ケンタッキーオジサンみたいな人を想像してました。寺尾聰とどちらがよいでしょうか。私も映画は観ませんね。大人になったルートが…あの「北の国から」に出てた子だからです。
6. Posted by えち   2007年03月11日 11:47
小川洋子さんが以前インタビューでこんなに売れると思わなかった(100万部超)と言ってましたが、ありそうで意外とない設定であるとこがミソで、読者の想像力でいろいろ空想できるんですよね。俺は博士は役所広司みたいなイメージでした。最初読んだときは渡辺謙だったんだけど、最近の渡辺はリアクションが欧米化し、いちいち大げさなので、勝手にボツにしました(o^o^o)
7. Posted by きりり   2007年03月11日 19:03
菱沼さま
先に読んでて正解です 作品が素敵であればある程ですね
ルートもイメージ違うな〜 もちょっとガサっとしてる男の子って感じですね
8. Posted by きりり   2007年03月11日 19:09
えち君
設定がうまい 森読んでる私には、皆どんどん理系で来るのか!的だけど
それに確かに読み方が読む人によってかなり違うし、それが許される本と思う
役所広司! 私はかなり枯れててショボンとしてお爺さん系なんですが.. 
枯れて汚れた感じと言うのが寺尾さんは間違ってないと思うんだけど(失礼)もっとカサっとしてほしいかなって
ケン渡辺は、ありえない(笑)
9. Posted by エビノート   2007年03月11日 21:38
映像化には一長一短がありますね〜
この作品DVDで観ましたが、
私は満足いくものでした。
寺尾さんに違和感がなかったことも大きいかも(笑)
やさしくて残酷なお話
確かにそうですね〜
優しさの方ばかり印象に残ってました。
小川洋子さんの残酷さ、怖さを内包した他の作品に手を伸ばしてみようかな〜なんて思います。
10. Posted by ソーラ   2007年03月11日 22:07
小川洋子を最初に読んだのは「ブラフマンの埋葬」でした。アーティストに自由に使わせる山荘があって、主人公が黙って犬?を飼う。そこで事件が起きるという話だったような。
それを読んで小川洋子は私の視野から逸れました。
その後、この「博士が愛した数式」の映画を観ました。とてもその気になりました。
みなさんとは違って寺尾聡がいいなあと思いましたよ。でも抜群だったのは深津絵里でしたね。
そういうわけで、今度は本を読みたくなりました。
ちょうどいま半分ほど読んでいますが、映画のイメージが強くて・・・。
でも、この著は気に入っています。
11. Posted by chiekoa   2007年03月12日 11:20
小川さんの書くものを読んでいると、「残酷」という言葉はなんだかいつもついてまわるような、そんな気がします。なんででしょうねぇ…。私は映画はまだ見てません。もしかしたらずっと見ないかも…?!
12. Posted by すわっち   2007年03月12日 23:09
こんばんは

ボクはこの本大好きです。
ハードカバーで読んで、文庫になって読み返したくらいです。
(映画は観てません...)
いわゆる文学賞とは違い、『本屋大賞』は読んで素直に良い作品が続いてますね。
13. Posted by きりり   2007年03月13日 01:12
エビノートさん
寺尾さんはあってると思います 
個人的に好きでないので彼の作品を見ないので、いつまでたってもルビーの指輪の人なんです(泣)
14. Posted by きりり   2007年03月13日 01:21
ソーラさん
ブラフマンよくなかったですか? 昨日借りようかと思ってやめたんですが
う〜〜〜やっぱり見れない それでまた映画の紹介なのに寺尾さんの紹介で
ルビーの指輪流すでしょ!ほんとにやめてほしいです(笑)
映像みて原作はきっと凄いんだろうって思うのありますよね
15. Posted by きりり   2007年03月13日 01:24
chiekoaさん
小川さんはまだ2冊なんですけど、さらっと死とかを入れて静かに残酷だったり(?)と
今ミーナの行進まっててかなり期待しています
16. Posted by きりり   2007年03月13日 01:28
すわっちさん
すごくお気に入りなんですね!
これはホントに本屋大賞って感じの本ですね ただの感動ものにならず媚びを感じないし素敵な本でした
17. Posted by marin_star   2007年03月13日 22:30
さすが、きりりさん!深いですね〜
> やさしくて残酷なお話
確かにそうですね。

森作品は難しすぎて全く読めない私ですが
(何度かトライして挫折しています・・・苦笑^^;)
この作品の「数式の美しさ」には感動してしまいました!
たぶん数学的にはほとんど理解してないと思うんですけどね^^;
18. Posted by きりり   2007年03月14日 01:46
marin_starさん
私も理解してませんね〜 なのでか とても憧れます
ここまで数字を美しいものとして対せるのはないですね
19. Posted by サイタ   2007年03月16日 01:57
コメントありがとうございました。
私は映画も本も好きです。 違う良さがありました。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔