2008年03月31日

角田光代「八日目の蝉」4

蝉は生まれて7日で死ぬと言う
何年も土のなかにいて7日ばかりで死んでしまう
じゃあ仲間が死んだあと、自分だけ生き残れるとしたら
私はひとり生き残ることを選ぶだろうか?

不倫相手の家に忍びこみ、眠っていた赤ちゃんを見て衝動的に連れてきてしまった希和子
薫と名付けた赤ん坊を連れ、宗教団体や最果ての島に逃げ続ける

 逃げて、逃げて、逃げ延びたら、私はあなたの母になれるのだろうか

何故、この赤ん坊がかけがえのないものに変わってしまったのか?
たぶん その答えは女にもわからないだろう
ただ逃げて、一日でも長くこの子といたい その気持だけで
何年もにも及ぶ逃亡生活がはじまった


何かの雑誌で、太田光が大絶賛してるのを見て読んだ本書
面白かった 今年一番!的に宣伝されてたので、そこまでかはわからないけれど
きっと人の行動や感情は分析すれば何かしらの答えが出るのかも
しれないけど、わかっていても押さえきれない感情が生まれることがある
何故なんてコトバがいらない程の物語りがつづられる

女性だけのエンジェルハウスでの奇妙な生活や
エンジェルハウスで出会った友人の実家である島へわたり
さびれたホテルの寮に住み、保険や学校の心配をしながらも
子供とふたりで生きる充実感は、虚構と吐き捨ててしまうほど
寂しいものではない

逃亡を追った前半、そして後半は逃亡の果てに捕まり実の親のもとで
大きくなった大学生の薫=恵里菜の話が綴られる
すでに崩壊していた家族、そのなかで居場所が見つからず
ひとり暮らしをはじめる恵里菜
彼女もまた不倫相手の子供を身ごもり、男と別れたあとも
赤ん坊をひとり生もうとする

たぶん恵里菜にもわからない、何故自分までも同じ道をたどってしまうのか?
終わりに幼い頃過ごした小豆島に向かうフェリーで、警察に捕まった時の希和子の
叫びを思い出し、この二人の不器用な女を母であったと思うシーンが、とてもうまい!
「わたしの男」の「お... お...」とかと比べられないほど、うまい台詞だと思う
この台詞だけでなく話全体がベタな部分があるのに、まったく溺れることなく
話を綴らえていく  かなり私のなかでギリギリな話だと思うのに、読めてしまう

最後の山場は「対岸の彼女」の少女ふたりの逃避行を思い出し
女の子ふたりのシーンがうまいな〜と 
これも本屋大賞候補ですよね〜 ん〜さすがだな〜

 死ねなかった蝉
 七日で死ぬより八日目に生き残った蝉の方が悲しいって言ったけど
 その蝉は他の蝉には見られなかったものを見られる
 見たくないって思うかもしれないけど
 ぎゅっと目をとじてなくちゃいけないほど、ひどいものばかりじゃないと
 私は思うよ

例えば、余分に生きた一日がどんなに素晴らしくても、辛くても
それは、その一日を生きたものだけが感じる権利をもつのだと思う

第2回中央公論文芸賞受賞

tg-wco4be2 at 23:59│Comments(12)TrackBack(4)clip!角田光代 

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4 八日目の蝉角田 光代 中央公論新社 2007-03売り上げランキング : 2650おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools ≪内容≫ 逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか−−。 理性をゆるがす愛があり、罪にもそそぐ光があった。 家族という枠組み...
2. 八日目の蝉  [ どくしょ。るーむ。 ]   2008年04月01日 23:48
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この記事へのコメント

1. Posted by エビノート   2008年04月01日 21:43
登場人物の姿を通じて、親子の関係、家族のあり方など、いろいろと考えさせられる内容でした。
重いテーマではあるんだけど、雲の切れ間から光が差し込むようなラストが良かったですね〜。
2. Posted by くじら   2008年04月01日 22:21
きりりさん こんばんは。
くじらといいます。


なぜ「八日目の蝉」なんだろうと思いながら読みました。後半の二人の姿にあたたかなものを感じました。
3. Posted by ia.   2008年04月01日 23:57
こんばんわ。
神々しいような印象の本でしたね。
淡々とした文章なのに、かなり感情移入しながら読みました。
あのラストは「やられた〜」って思いました。
4. Posted by きりり   2008年04月03日 00:46
エビノートさん 最後良いですよね〜 犯罪や家族崩壊なのに、何故かそれも受け入れられると言うか
不思議な満足感を感じた本でした
5. Posted by きりり   2008年04月03日 00:53
くじらさん コメントありがとうございます
最後まで読んでうまいタイトルだな〜と思いました これにぴったりと言うより、読む人が色々感じられるタイトルですね
6. Posted by きりり   2008年04月03日 00:55
iaさん いいですよね〜ラスト ホントうまいな〜とか感心するほどでした 角田さんの本あまり読んでないんで、最近の本を読んでいきたいな〜と思います
7. Posted by naru   2008年04月04日 21:45
きりりさん こんばんは。
よい作品でしたね。一気に読みました。
角田さんの今までのイメージが変わった作品かな。
ラストも良かったです。
8. Posted by きりり   2008年04月06日 15:58
naruさん ちょっと他の本と違うんですね あまり角田氏読んでいないんで「対岸..」のイメージしかなかったんですが、これはかなりお気に入りな作品でした
9. Posted by らぶほん   2008年04月28日 13:37
こんにちは。
家族とはいったい何だろう?と、考えさせられた作品でした。
ラストが明日への光を感じさせる終わり方で、ほっとなりました。
題名もとても印象的で、上手い!と思いました。
10. Posted by きりり   2008年04月30日 02:31
らぶほんさん
何を訴えるのか、とても難しい本でした 最後まで行ってタイトルを考えさせられる 惹かれるタイトルですね
11. Posted by yori   2011年09月26日 18:42
きりりさん こんばんは
今頃になって、
映画化だとか騒がれて、読んでみました。
読んで良かった、面白かった。
それと同時に、きりりさんのレビューが素晴らしい!
これは感動ものですよ!!!
12. Posted by きりり   2011年10月12日 14:09
yoriさん ありがとございます

今、要潤の近況を上げた後にコメントを読み恥ずかしかったり....
この本は素晴らしいです
そして自分の感想の最後を読んだら不覚にも涙がでました アホですね
でも良い時に生きることを、考えることが出来ました ありがとうございます

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