2008年04月21日

桜庭一樹「青年のための読書クラブ」5

 乙女よ、永遠であれ
 人よ、楽園をけっして、徒に脅すことなかれ

100年続く山の手にあるお嬢様学校「聖マリアナ学園」
シスター居並ぶバリバリのお嬢様達のなかに、異形の乙女達が集まる「読書クラブ」が存在する
荒れ果てた旧校舎の一室、乙女達は思い思いに本を読みながら、学園の正史には記されない歴史を
俯瞰し、時には企み、歴史の裏側で密かにクラブ誌を綴ってきたのだ.....

桜庭氏のこの一冊、たしか「赤朽葉家の伝説」「私の男」の間に出版されたから
今いち取り上げられないのか 本読み少女(うっ!)にとっちゃ、それ以上の本とも言える

古典な本をテーマに(?なんか聞いたフレーズ)、繰り広げられる学園騒動
「烏丸紅子恋愛事件」シラノドベルジュラック
「聖女マリアンナ消失事件」
「奇妙な旅人」マクベス
「一番星」緋文字
「パピトゥス&プラティーク」紅はこべ


一年に一度選ばれる「王子」を巡る演劇部の戦いや生徒会の絶対権力、
まさに現代のメディアなインテリヤクザな新聞部、そして正史に絶対に現れぬ読書クラブの暗躍
少女達の熱狂や、またそれを利用して煽動する、まるで悪徳政治家みたいな少女...
何から何までニンマリさせるキャラクター達 赤朽葉家の毛鞠路線を彷彿させる

私も、バリっな女子校にいたので、友情やら偽愛情やら、やや恥ずかしい感じのことを
ここまで書いてくれると大変楽しい 崇高なまでのアウトロー達をドブネズミと呼ぶ感覚が
自分にはないのが悔しいくらいだ(何故はりあう?)

1年に一度選ばれる「王子」の座を巡り、偽王子となる紅子を得て暗躍する
シラノ・ド・ベルジュラックこと妹尾アザミ 読書クラブ初の「王子」を作りだした
「烏丸紅子恋愛事件」はアザミにどんでん返しの屈辱を与え「死ね〜」の罵倒とともに終焉
「奇妙な旅人」では、学園が扇子フリ踊るミラーボールのディスコに変身し
「一番星」では、読書クラブから一瞬の幻のようなロックスターが生まれる

そして事件の数々を縫うように聖マリアンナの誕生「聖女マリアンナ消失事件」が綴られる

  神など、おらぬ
  悪魔も、おらぬ
  諸君、世界は南瓜の如く、空っぽなのである

牧師の家を嫌い パリで禁書専門読書クラブ「哲学的福音南瓜」を経営するミシェール と
父と同じく聖職につくため修行をする妹マリアナ 
マリアナが、この後日本の地で心血を注ぎ聖マリアンナ学園を作りあげ、ある日突然
失踪してしまう真実を描く このパートが、また学園そして少女達の存在の不確かな上にも
しっかと息づく強さみたいなものを表現していると思う(ネタバレの為多少思わせぶり)

そして最終章「パピトゥス&プラティーク」では、学園最後の読書クラブ員による「ブーゲンビリアの君」事件から歴史の数々がカフェ「慣習と振る舞い」へと引き継がれる

各章最後に、その歴史を書き留めた読書クラブ員のコトバがあまりにもセンチメンタルで
乙女心を一々心を打たれる 
「世界は本当に空っぽなのか?
 ぼくはミシェールの南瓜世界には、愛の持つ真っ白な輝きが初めから詰まっていたように
 思えてならぬのだ
 こんなことを考える「ぼく」は、甘ったれの子供なのだろうか?」
多分こう言うのにハマる私は確実に甘ったれた子供なのでしょう 子供ぉ...

すべてを書き留めたいのは山々だし、紅子やいつか「慣習と振る舞い」に行きたいとか、
もっと読書三昧な日々を送りたいとか...書きたいことは尽きないのだけど、
やっぱり最後の聖マリアンナ読書クラブの日を書き留めた乙女の一文を載せて終わることにする

 いつの時代も、我々のような種類の者は存在する
 若者は哀しく、回り道をぐるぐると雄々しく生きてゆく
 なるほど我々はかほどに老いたが、明日は常に誰かの-つまりは貴方の、輝く未来である
 おぉそれで充分ではないか?  いまは、黄昏
 喪失の前の、一瞬の覚醒
 乙女よ(そして青年よ!)永遠であれ


tg-wco4be2 at 00:33│Comments(6)TrackBack(2)clip!桜庭一樹 

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1. 青年のための読書クラブ 桜庭一樹  [ 粋な提案 ]   2008年04月21日 03:53
装画は天羽間ソラノ。装幀は新潮社装幀室。初出「小説新潮」第一章2006年10月号、第五章2007年5月号、他は書き下ろし。 東京・宮.
2. 青年のための読書クラブ 〔桜庭 一樹〕  [ まったり読書日記 ]   2008年04月22日 19:38
3 青年のための読書クラブ桜庭 一樹 新潮社 2007-06売り上げランキング : 1395Amazonで詳しく見る by G-Tools ≪内容≫ 東京・山の手の伝統あるお嬢様学校、聖マリアナ学園。 校内の異端者(アウトロー)だけが集う「読書クラブ」には、長きにわたって語り継がれる秘密の“...

この記事へのコメント

1. Posted by TALKING MAN   2008年04月21日 02:07
こんばんは。
これはほんと隠れた傑作というか。

昨年のベスト10に選んだ時点ではまだ私の男も赤朽葉も読んでなかったけど、読んだ今でも一番好きだったりします。
2. Posted by 藍色   2008年04月21日 03:52
こんばんは。
学園を舞台にした桜庭ワールド、独特の世界でしたね。
キャラクターが個性的で時代ごとの事件にわくわくしました。
3. Posted by きりり   2008年04月22日 02:07
TALKING MANさん なんだか、当たりどころが良かったと言うか
他の作品と比べて、すごく違うのかわからないんですけど好きですよ
4. Posted by きりり   2008年04月22日 02:11
藍色さん 乙女が僕と自分を呼ぶのを許せる時と、許せない時があるんですが、めちゃめちゃ乗れて読めました キャラクターの名前もいいですよね
5. Posted by エビノート   2008年04月22日 19:42
もっとクラブ誌を読んでみたい!と思う内容でした。読書クラブに入り浸って読み耽りたい(笑)
こういう学校に通ったことのない私には、ちょっとした憧れでもあります。
6. Posted by きりり   2008年04月27日 00:28
エビノートさん 浸りたいですよね〜読書クラブとかすらなかった気がするけど、あったのかもしれない.... 女子校な楽しみが共通なところがあって読んでて楽しかったです

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