2010年04月15日

米澤穂信「儚い羊たちの祝宴」4

「身内に不幸がありまして」
「北の館の罪人」
「山荘秘聞」
「玉野五十鈴の誉れ」
「儚い羊たちの晩餐」
 短編五作

各篇の主人公たちは、閉塞的な世界で生きる上流階級の子息子女
彼らを結ぶのは「バベルの会」
大学の読書サークル
一年に一度、8月1日から山荘で行われる読書会がある

第一篇「身内に不幸がありまして」の主人公・丹山吹子は
毎年その読書会に参加することは出来ない
何故なら毎年7月30日に丹山家で殺人事件が起こるからだった


第二篇「北の館の罪人」の主人公・内名あまり
母が死に、身よりのない彼女は
母から聞いていた名門六鋼家の当主である父親のもとに身を寄せる
そして妾の子である、あまりは別塔の北の館で、幽閉された
長男の面倒をみるコトとなった
幽閉を苦とも思わぬそぶりの長男から、不思議な買い物を頼まれる.....

第三篇「山荘秘聞」
山あいの美しい山荘の管理を任された長屋守子
こまめに山荘を磨き上げ、食事の準備を怠らない
しかし1年を過ぎても誰も山荘に訪れる人がいなかった
主人の死により忘れ去られた山荘
しかしある日、近くの山で遭難した男を救けることに
病人とは言え1年ぶりの来客に守子はその世話にチカラを入れるのだった
しかし翌日、彼を救けるために救助隊が山荘に現れる.....

米澤氏 これまた久しぶりです
「ラスト一行の衝撃」に徹底的にこだわった連作集...
と言うコピー 残念ながら読んでいきなり返却したために
その!ラスト一行を「身内に....」以外覚えていない.......

実は第四篇の玉野五十鈴の誉れ」は
大阪行きの旅のお伴として購入(珍し〜)した
「STORY SELLER」に、中編の長さで入っていて記憶に新しい作品

全編に流れる独特な雰囲気
旧家を舞台とし、見目麗しい主人と、使える少女召使い
家に囚われ歪んだ世界に生きている儚い羊たち
狂った現実を日常の慰みに変えている

小栗純香は小栗家の跡取り
五十鈴は十五の歳から使えている使用人
影日向なく純香に使え、時には本を分かち合い使用人以上の存在として
純香の支えとなっていた
しかしある日、純香の叔父が殺人事件をおこしたことから
当主である祖母は怒り、呪われた血をひく者として純香を幽閉してしまう
そして間もなく純香の母が再婚し跡継ぎの男の子が誕生する

まともな食事を与えられず日ごとに衰弱して行く純香のもとに
幽閉されて以来姿を見せない五十鈴が盆を持って現れる
「跡取りのために毒を飲んで下さい」と...

5篇のなかでも、一番面白い作品
後半、幽閉された純香を冷たく突き放した五十鈴
予想もつかない展開の後、五十鈴の「誉れ」の意味が語られる
哀しいラストは秀逸

でも五十鈴の語り部分がすべて削られているので(か「STORY SELLER」が加筆??)魅力半減
せっかく読むなら「STORY SELLER」の方が面白い

最後の「儚い羊たちの祝宴」
バベルの会を退会させられた大寺毬絵の日記
成り上がりの大手家 見栄っ張りである父がある日
「厨娘」と言う一級の料理人を雇い入れた
膨大な量と金額の材料を使い「厨娘」は類い稀なる料理を作りだす
そんななか毬絵は「アミルスタン羊」の料理をリクエストする....

ブラック度で言えば一番の作品
本書にはいくつか原作のような古典のミステリがあるそうだけど
いつのもように知らずに読みました(泣....なのか?)
本書のなかで、どうしても気になった「アミルスタン羊」
今感想書きながら(まさに今!)検索したらビックリするよなものでした
読み終るまでは検索しないことをおススメ

「厨娘」が「アミルスタン羊」を捉え戻ってきた時に
突如、毬絵の日記は終ってしまいます ん〜ブラック

廃退的な雰囲気を漂わせる5つの物語り
2010年 このミスに三冊入った米澤氏 一番下の17位が本作
読む時にブラック系と気づいて、はっ「ボトルネック」のような
何でこんな本読んだんだろう的だったらどうしよう....と思っていたけど
違うタイプのブラックなミステリ 少し内容がダブるようなものもあったけど
とても楽しめました

「身内の不幸」と称し、親戚一同を殺しまくり休暇を取る古典的な方便が
なんとも可愛らしいと思えてくる


tg-wco4be2 at 04:25│Comments(6)TrackBack(1)clip!米澤穂信 

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1. (書評)儚い羊たちの祝宴  [ 新・たこの感想文 ]   2010年04月15日 20:57
著者:米澤穂信 儚い羊たちの祝宴(2008/11)米澤 穂信商品詳細を見る 上流階級の家を舞台にして綴られる5編を収録した短編集。 一応、これは...

この記事へのコメント

1. Posted by たこやき   2010年04月15日 21:04
なんか、この作品は「ブラック」で、
『ボトルネック』は「ダーク」かな? なんて感じました。

『ボトルネック』は、救いのない絶望感を感じたのに対して、この作品の場合、「理解を超えた存在」を見ての驚き、みたいな感じがしました。

でも

>「身内の不幸」と称し、親戚一同を殺しまくり休暇を取る古典的な方便が
>なんとも可愛らしいと思えてくる

って、よくよく考えるとすごい話ですよね(笑)
2. Posted by まめ   2010年04月16日 18:48
あれ?「玉野五十鈴の誉れ」ってSTORY SELLERに収録のと違いましたっけ。気づきませんでした(^^;)
どれもコワいけど面白かったです。
米澤氏のブラックなの、好きかもです。ボトルネックは未読なので読んでみたいです。
3. Posted by きりり   2010年04月19日 02:38
たこやきさん ボトルネック辛かったです(笑)
よくいますよね もう殺す親戚いないの...とか よく考えると怖い話です
4. Posted by きりり   2010年04月19日 02:39
まめさん 不安になりました.... もう返しちゃってるんで判らないけど確か短かった気が.... または、重複してたから読み飛ばしたのかも..とか心配
う〜ん ボトルネック... なんとも説明のしようのない作品 感想聞かせて下さい
5. Posted by 伊織   2010年04月19日 11:52
きりりさん、こちらでははじめましてです!
先日はコメントありがとうございました♪

まだブログにはUPできていないのですが、自分も読みました。初めての米澤さん作品でしたが、なかなかにブラックで好みの話でした。
こういうストーリー、意外とイケる自分に気づきました(笑)

ブログにUPした際にはトラックバックさせていただいてもいいでしょうか〜??

ではではまた遊びに来ます☆
6. Posted by きりり   2010年04月21日 04:05
伊織さん コメントありがとうございます!
上品な語り口が独特な雰囲気で静かながらブラックと言う...面白いですよね 短編だとおとしが効いてないとモノたらなくなるんですが、さすが米澤氏と言うウマさでした
感想楽しみにしてま〜す

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