2011年02月21日

桜庭一樹「伏ー贋作・里見八犬伝」4

「おぉっ 割れた夜空を歩いてるようだ 楽しいなぁー」

真っ黒に日焼けした顔に洗いざらしの着物
まともに梳いたことのないボサボサの頭
背中には、銃を入れたずた袋
猟師の娘浜路は唯一の肉親である浪人の兄が住むお江戸へやってきた

「割れた夜空かい 田舎者のわりには洒落たことを言うじゃないか」

鶯色の頭巾をかぶり覗く首は細くて青白い
首もとには牡丹のような赤い痣が浮かびあがる.....

桜庭一樹氏の贋作八犬伝
私としては数年前に異常に自分のなかで盛り上がった八犬伝と
桜庭一樹が合体するとは夢のような本であります

兄を頼って江戸へ来た浜路が闇夜で出会ったのは「伏」と呼ばれる犬人間
お江戸ではこの「伏」なる者による犯罪が多発し浪人を初めたくさんの
賞金稼ぎが「伏」を狙っていた

猟師生活で育てた?鼻で野獣の匂いを嗅ぎ当てられる浜路
怪しい「伏」の匂いに気づくも、あっと言う間に伏は姿を消していた
そこで兄と浜路は伏狩りを始めることに

偶然行った吉原の遊郭で看板花魁と禿の伏に出会い
打ち取った浜路と道節は伏狩りを追う謎の瓦版や冥土に出会う

伏が現れるところに必ず現れる怪しい冥土は
「八犬伝」の作者 曲亭馬琴の息子
馬琴の代わりに八犬伝を調べるうちに自分で真実の八犬伝を密かに書いていた

本書は三部の構成になっている
浜路と兄道節の伏狩りの話
冥土による「贋作八犬伝」
伏である歌舞伎役者・信乃による「伏の森」

いきなりの伏狩りで今ひとつイメージが湧かないまま
贋作八犬伝に運び込まれると、そこはもう桜庭一樹ワールド
女にしとくのは勿体ない伏せ姫とその片割れ不細工で引きこもりの鈍色
光と影が対で存在するその先に不思議な銀の森が広がっている

じっさい八犬士とはまったく異なると思える伏こと犬人間で
獣と人間の半々と言うか、かなりの獣より
伏に馴染むことなく本が終ってしまったかんじがある
最後の「伏の森」で自分達の先祖を知った伏たちが森を訪れ
自分達の起と結を結んでしまう

数年前に館山城で見た八犬伝に自分でも異常なまでに
八房に興味を持ったんだけれど(いつも突然夢中になるけど)
考えれば原作でも八房自身何かを表現していないんだなと思う

八犬伝のつながるたくさんの人々が登場して、
人も話もやや書ききれてないと言うかもっと読ませてくれ!って
思うけれど続くような続かないよな微妙な終わり方が気になる

 そうして、片頬で軽く笑った
 昨夜の俺の、つかのまの永遠をうまく捕まえたのだ

伏せ森で戯れる伏たちの姿は儚く、光と影が入れ代わる一瞬でしかないのかもしれない

まさに全編 桜庭一樹 堪能しました

tg-wco4be2 at 02:52│Comments(0)TrackBack(0)clip!桜庭一樹 

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