森見登美彦

2010年12月22日

森見登美彦「奇想と微笑—太宰治傑作選」4

 つい、ふとした心のはずみから こんなつまらぬ旅を企てる
 少しも気が進まないのに
 ふいと言いだしたら、必ずそれを意地になって実行する
 そうしないと誰かに嘘をついたような気がして嫌である
 負けるような気がして嫌である

 ばかなことと知りながら実行して、あとから激烈な悔恨の腹痛にてんてんする
 なんにもならない いくつになっても同じことをくり返してばかりいるのである

二三年前ひとり旅に凝り、だんだんとエスカレートして行き
かなり無理なスケジュールでこまめに旅をしていた頃があった

楽しいのか?と言われれば、旅が出来て楽しいより
決めたことをこなすコトの方が楽しかったのではないかと薄ら気づいている
そしてさらに言えば、ひとりでいると寂しかったりして
何故ひとりで来てしまったのだろうと、自問自答しながら見知らぬ街を歩いていた続きを読む

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2008年12月23日

森見登美彦「美女と竹林」3

「そうだ これからは竹林の時代であるな!」

幼少のみぎり、父親に連れられていった竹の子掘り
スコップでざっくりと地面を刺す音、立ちこめる土の匂い、
泥だらけのタケノコを抱え上げた時のふわふわざらざらした皮の感触
それが登美彦氏と竹林の出会いだった....

先輩のご実家の竹林から、竹林の賢人なり得るかを通り越し
うなるほどの金を稼ぐMBCモリミーオブカンパニー設立でカリスマ竹林経営者になり、
美しい妻を娶り庵に暮らし、作家としてダメになった時も諸事万端オーケー的な 
妄想を披露する本書
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2008年02月18日

森見登美彦「四畳半神話体系」2

とにかく怖いのだ
いったい何故怖いのか落ち着いて考えて見ると
やはり、あの羽からまき散らす鱗粉であろう
飛んでは鱗粉をまき散らし
殺されれば鱗粉まみれで死んでいる....

なので下鴨神社あたりから発生し鴨川、そして街を黒くモゾモゾと
覆ってしまう蛾の大群とは、かなり怖い オカルトである
本書の主人公は、もちろん京都に住む大学生である
女っ毛なし、無意味なほどの時間を過ごす森美正統派大学生
しかし大学も三年になり、ふっと自分が入学時に違うサークルを
選んでいたら自分の大学生活が違っていたのでは.....と展開する4つの話
同じ登場人物、出来事で半歩ずれた道を主人公は進みます続きを読む

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2007年11月19日

森見登美彦「有頂天家族」5

平安遷都よりこの方続く、人間と狸と天狗の三つ巴
人間は街に住み、狸は地を這い、天狗は天空を飛行する

 私はいわゆる狸であるが、ただ一介の狸であることを潔しとせず
 天狗に遠く憧れ、人間を真似することが大好きだ
 したがって、我が日常はめまぐるしく、退屈しているひまがない

下鴨神社糺ノ森住む平安時代から続く狸の一族「下鴨家」
堅いわりに土壇場に弱い長兄・矢一郎
引きこもり長じて蛙となった次兄・矢ニ郎
面白主義の主人公 三男・矢三郎
「あい あい」と返事するばかりで化けるのもままならない四男・矢四郎
偉大なる亡き父の跡を受け、まだちょっと器の足らない四兄弟が
狸界の次なる頭領を賭け、匹敵夷川家と戦うべく京都の街を暴れまわる
面白いっ 面白過ぎる! そして泣ける泣ける...続きを読む

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2007年08月26日

森見登美彦「夜は短し歩けよ乙女」4

名付けて「ナカメ作戦」
なるべく彼女の目にとまるように心がけるコト

京都の町を舞台に「私」と、私が一目惚れした黒髪の乙女の話
ひたすら外堀を埋めながら近ずく作戦のはずなのに外堀はすでに埋め過ぎて
本丸に切り込めないと言われてる「私」
森見作品の愛すべきキャラクター

今回は、先輩の妄想は多少控えめテイストで、むっさい妄想的な野郎たちが
好きな私には読み始め手ぬるい...と多少思いましたが、その分乙女が活躍してくれます

黒髪の乙女
超天然です 
大学生活と言う大人の世界に、むん!と挑む乙女の姿は
まるで荒海に飛び込む勇者のよう
 太平洋の海水がラム酒であればいいのに
とか乙女なのにのたまわり必殺技のおともだちパンチを隠しもちます
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2007年06月19日

森見登美彦「新釈 走れメロス」3

 京都吉田界隈にて、一部関係者のみに勇名を馳せる孤高の学生がいた
 その名を斉藤秀太郎という

本作「新釈 走れメロス」は、この孤高なる男の話から始まる
卒業していく友人達に社会の歯車になるかと高笑い、自らを死後100年名を残すと豪語する
下宿を焼き払う危険をおかしてまでも断固喰わんとした秋刀魚をのぞけば、
彼が惜しみなく情熱を燃やしたのは、ただ文章のみであった....

いつもの森見調の意味不明なる豪快さと堅物さで妄想を持つ男の登場と思わせて
一作目中島敦の「山月記」を元とした本作は、何やら哀しい物語
文章を書くことのみが秘奥へ至ると精進したが、気づけば11年 すでに言葉はバラバラになり
何もかけなくなってしまった

太陽の塔では、孤高な道をひた走りながらも、どこか途中でこんなんでいいのかオレ!と
もらしてしまう逃げがあるが、本作斉藤氏は極めつけ、とうとう戻れぬ別の世に入り込んでしまう続きを読む

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2007年03月02日

森見登美彦「太陽の塔」5

私の大学生活には華がなかった......
華がないどころではない この男達 
クリスマスを呪い、鴨川の恋人達を恨み、
女などいらないと、野郎ばかりで集まりで、おのが妄想にひたりまくる
そして朝起きれば、おのが男臭さに慌てて窓を開ける始末
お前らいつの時代の人間だ!と聞きたくなるよな 
古風な持てない男達の日常を、京都を舞台に繰り広げまする
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2007年01月30日

森見登美彦「きつねのはなし」3

久しぶりに怖い夢をみた
寒いと手がかじかんで布団にはいった時に、背中の下にしまいこんで眠る癖がある
いつも身体の重みで、すぐ目が覚めて手を出すのだが、この日はそのまま浅い眠りについたのだろう
夜中に目が覚めて、感じる大きな胸の鼓動に今見た夢の怖さを思い出す 
私の両の掌が背中の下にあるコトに気づいた こんな時に変な夢を見るんだ
眠るのが怖い こんな時は、ひと晩に何度も続けて怖い夢を見る 
現実に似ているのにどこか違う 夢のなかで、夢と分かっていて、
あ〜また嫌な夢を私は見ていると夢のなかで思う

この「きつねのはなし」も、変な夢を繰り返し見ているような話だった
京都の骨董屋を舞台に起こる不思議な話 4編
少しづつ重なっていて、でもぴったりと重ならない 
話のなかで見え隠れする狐面の男や得体のしれない動物がうろつき
まるで遠い昔に見たような錯覚を見せる
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