小川洋子

2007年07月29日

小川洋子「ミーナの行進」4

もし自分の人生を木の年輪のように見るコトが出来れば
ちょっと他の年と違う色をしている年を見つけられるかもしれない
1年なんてとっても短いけど、思えば長く特別な年と言うものがある
普段忘れていても、一度片隅を覗いてしまうと否応なしに蘇ってしまう記憶が心のどこかに潜んでいる

母とわかれ1年間親戚の家に住むコトになった13歳の朋子
そこは芦屋の豪邸で叔父さんはフレッシーなる清涼飲料水のメーカーの社長である
そこの家には、朋子の1歳下小学生のミーナが住んでいた

庭にはかつて動物園があっと言うほどの夢のような豪邸
ハンサムな伯父さんや西洋式の暮らしは夢を散りばめたようだ
でも夢のように見える家族や家と、同時に存在するまったく別の現実
ちょうど子供から大人になりはじめる朋子にとっての"特別"な1年続きを読む

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2007年03月10日

小川洋子「博士の愛した数式」4

毎回会う度に、初対面の人のように挨拶をされる
同じ質問に同じ答え
病気だと分かっていても、相対する人は戸惑いを感じるだろう

連続する時間と記憶の堆積が、唯一自分の存在の標とも言えると私は思う
80分と言う時間しかないなら、私はそのなかで無理矢理ひとつひとつの出来事の完結を望むだろう
本を読むのも映画をみるのも友人と話をするのも その時間内に
そして80分の世界が終わり、私はゼロに戻る
満足感や幸福感は一時の感覚ではなく、その記憶なのだ
ならば80分の記憶になんの意味があるのか続きを読む

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2007年01月17日

小川洋子「完璧な病室」3

弟はいつでも、この完璧な土曜日の記憶の中にいる
病に冒された弟との日々を描く表題作、海燕新人文学賞受賞のデビュー作

自分の勤める病院に入院した弟はあと1年の命だと言う
淡々と過ぎて行く日々と確実に少なくなる弟との時間

 もし弟が病気にならなかった
 弟を愛する方法をずっと知らずにいただろう
 「弟」と言う簡単なひと言で
 二人をかたずけていただろう
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