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長い間ゾウは、アフリカゾウもアジアゾウも、共感力を持つ動物だと見なされてきた。彼らは泥の穴にはまってしまった子ゾウを助けたり、鼻を使って傷ついたり死にかけたりしている他のゾウの体を起こしたり、あるいは伝えられるところによれば、動揺している個々のゾウに鼻でやさしく触れて安心させることさえある。今、科学者たちは、アジアゾウは他のゾウが困っているのを見ると確かに動揺し、そして彼らを慰めるために手を差し伸べる—ちょうど私たちが誰かが苦しんでいるのを見たときにするのと同じように—ということを明らかにした。
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 その研究はアジアゾウの同様に対する反応を調査する最初のものである。タイのマヒドン大学の行動生物学者ジョシュア。プロトニックと、アトランタ州のエモリー大学霊長類学者フランス・ドゥ・ヴァールは、(アジアゾウたちに)ストレスがかかっているときと、彼らを動揺させるものがほどんどない時の、アジアゾウたちの行動を比較した。ほぼ1年間、毎月1~2週間、プロトニックは日々30~180分を費やして、タイ北部のゾウ自然公園で飼育されている26頭のアジアゾウを観察し、記録した。
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 プロトニックはゾウたちが自由に過ごす時間に彼らを観察し、近くをイヌが歩くとか、草むらでヘビがカサカサと音を立てるとか、敵意を持ったゾウが姿を見せるといったストレスのかかる出来事に対する彼らの反応を記録した。他の研究者たちはこれまでに、ゾウは動揺すると耳をヒラヒラさせたり尾を立てたりするということを、あるいは、自分の動揺を示すために甲高い声で鳴いたりうなり声を上げたり低いゴロゴロという音を立てたりすることがある、ということを明らかにしている。公園のゾウが別のゾウがこんなふうに行動しているのを見ると、その目撃したゾウたちはたいていの場合、「同じ感情を示すことによって応えるのです。ちょうど私たちが一緒に恐怖映画を見ているときにするのと同じように。俳優がおびえていると、私たちの心臓はどきどきし、お互いの手を握ろうとしますよね」とプロトニックは言う。これは「情動伝染」として知られる反応だ。
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 例えば、ビデオに記録された1つの出来事では、メスのメイ・パームは、近隣の別の公園にいる捕獲されたオスのゾウのうなり声を聞いて取り乱したジョキアという別のおとなのメスのゾウのそばに駆け寄る。2頭のゾウは耳を前に突き出して尾を高く上げる。しかし、メイ・パームがそのようにするのは、ジョキアの動揺を見たあとだけである。メイ・パームはまた、大きなさえずるような高い声を出すのだが、それは安心を与える鳴き声として知られているもので、それから彼女はジョキアを鼻でなで、ついに鼻をジョキアの口の中に入れる—それは「『私はあなたを助けるためにここにいるのであり、傷つけるためではない』という合図を送っているのかもしれない」行動だ、とプロトニックは言う。すると今度は、ジョキアがメイ・パームの口の中に自分の鼻を入れるのだ—それはおそらく抱擁のような仕草であると研究者たちは言う。
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 プロトニックは84件のこうしたストレスのかかる出来事を記録し、それぞれが起こった場所、時間帯、天候、一緒にいた他のすべてのゾウ、および、これらの個体がどう反応したかを書き留めた。比較対照用の標準として、彼はこれらの出来事を、できるだけ多くの変数が一致しているけれどストレスのかかることは何も起こらなかった期間と比較した。研究者たちのその後の分析は、ゾウの情動伝染や特徴的な安心させるための行動は、ほぼ例外なく何らかのストレスのかかる誘因に反応してのみ起こる、ということを明らかにした。
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 最も重要なのは、ゾウは仲間の動揺を認識すること、すなわち、共感を必要とするかもしれない行動ができるように思われたということだ。「それは、人が感情の点で他人の身になって考える、あの能力なのです」とプロトニックは言っている。

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