2007年05月17日
タブエディタ(秀丸エディタ)上に構築されたDV-Xα法計算支援環境テストユーザの集い
明日(5月18日(金))夕方(18:00〜)、岡山市内にて、
「タブエディタ(秀丸エディタ)上に構築されたDV-Xα法計算支援環境テストユーザの集い」
これを岡山弁に翻訳すると、
「ほんまの話をすると、要するに、理大の柴研と香川大の石井研の合同コンパっちゅうことじゃのー、でーれー楽しみにしておるで、盛り上がるとえーじゃのーほんまに楽しみじゃ」
とも言います(岡山理科大学のことは岡山では一般的に“理大”と呼ばれています)。
「会費3000円ちょっきしやけど、よーけ料理もお酒もあるから、まんでがん、しのべとってね、もう食べれん、おなかおきたなるぐらい、よーけな」
といったところでしょうか。
両研究室では、単結晶X線構造解析によって様々な化合物の原子種と原子位置を決定した後、タブエディタ(秀丸エディタ)上に構築されたDV-Xα法計算支援環境で化合物の電子状態計算を行って、その計算結果を実験結果(物性)の理解にフィードバックさせるという作業を日夜行っております。
どちらかというと岡山理科大学の柴原隆志研究室は合成に、香川大学の石井知彦研究室は計算により重きを置いて仕事をしておりますので、両研究室の密接な情報交換はとても有意義であると考えております。
両研究室(岡山理科大学理学部化学科の柴原隆志研究室と香川大学工学部材料創造工学科の石井知彦研究室)はどちらも
「タブエディタ(秀丸エディタ)上に構築されたDV-Xα法計算支援環境」
のヘビーなテストユーザ集団ですので、この
「タブエディタ(秀丸エディタ)上に構築されたDV-Xα法計算支援環境」
についても使用してみての忌憚ない意見・感想などを集め、この支援環境の開発者である泉富士夫先生に報告申し上げる予定にしております。
学生さんの場合、学生である間は申請すれば、秀丸エディタは無償で使うことができます。あとは岡山理科大学理学部化学科の柴原隆志研究室もしくは香川大学工学部材料創造工学科の石井知彦研究室のメンバーであれば、泉富士夫先生の開発された
「タブエディタ(秀丸エディタ)上に構築されたDV-Xα法計算支援環境」
をはじめ、東北大学の門馬綱一氏が泉富士夫先生と共に開発された次世代・統合3D可視化システムVESTAの最新のベータ版がテストユーザとして使えます。そして岡山理大の坂根のウェブサイトで公開している教育用分子軌道計算システムeduDV、あとは黄色い書籍はじめての電子状態計算―DV‐Xα分子軌道計算への入門のCD-ROMの環境を入手すれば、自分のWindowsパソコンで、研究室のWindowsパソコンで、この次世代電子状態計算環境をいち早く(しかもほとんど無償で)使うことができるといった次第です。
しかも何と言ってもVESTAの画像が美しい!この美しさに感動できるだけでもDV-Xα計算が楽しくなります。さらに楽しいだけではなく、計算結果から物性を理解・説明できたとしたら、もぉ至れり尽くせりの幸せに浸れるといった次第です。
新しい化学物質を合成して、X線回折実験から原子種と原子位置を特定して、あとはWindowsパソコンの画面上、マウスカーソルでボタンを押したりプルダウンメニューを選択していくだけでここまで得られる上質な成果、違いの分かる研究者には感動的な環境です。
私(坂根)が学生時代、岡山理科大学の情報処理センターの大型計算機FACOM M-380で、幾晩も徹夜で他の研究室の待機ジョブと競争の上、ジョブクラスを変えるなどしてなんとかTSS(タイムシェアリングシステム)に割り込んで自分のジョブを回し、何時間も何時間もかけてジョブが終了したらラインプリンタ室に走っていって計算結果を取りに行き、その結果を見て次のジョブを回すべくJCL(ジョブ・コントロール・ランゲージ)を作成して、再びサブミット!リストジョブ!リストジョブ!とひたすら繰り返してやっていた時代、そんな方法で何ヶ月もかけてX線構造解析、DV-Xα法による電子状態計算をしていた時代(しかも凄まじく高額な計算機使用料金!)を振り返ると、思わず岡山弁でドスをきかして
「でぇれぇーしょべーんじゃ!」
と叫びたくなります。
たった十数年しかたっていないのに、ハードウェアもソフトウェアも、それだけ著しい進化を遂げたということです。
現代の学生諸氏から見れば、私(坂根)の学生時代のFACOMでX線構造解析&DV-Xα法計算なんて、逆に想像もつかない、あり得ない環境と思えるでしょうね。私が大好きな映画(3部作)Back to the Futureのデロリアン(あるいはHerbert George WellsのThe Time Machineでも可)で実際に1980年代に行って見てみない限りは実感できないことでしょう(私は1986年に岡山理科大学に入学いたしました)。
フォートランの1行が穴の開いたカード1枚で表現されていた時代、まだブラウン管のディスプレイというものがなくてテレタイププリンターといってキーボードで入力した結果は1行ずつ感熱紙にプリンター印刷して入力確認していた時代、DV-Xα法プログラムのフォートランのソースプログラム一式を当時・兵庫教育大学の足立裕彦先生のところから「長巻の磁気リールテープ」でいただいてきて、岡山理科大学の情報処理センターのFACOMにインストールしたあの時代(長巻の磁気リールテープは記念に、現在でも大事にとってあります)、たった十数年しかたっていないのに・・・。
是非、岡山理科大学理学部化学科の柴原隆志研究室および香川大学工学部材料創造工学科の石井知彦研究室のメンバーの皆様には、何気なく手に入れて使っている現在の計算環境が、ちょっと前(ほんのちょっと前ですよ)の時代の人間から見れば、いかに次世代の夢のような凄い環境であるのか、実感していただければありがたいと思っております。
そして願わくば、あまりの便利さに「ブラックボックス化」してしまっている計算過程(何を、どうやって、そんな数字やグラフやVESTA画面が出てくるのか)を、少々辛くても調べて勉強して理解する努力と苦労を惜しまないで欲しいと思っております。本当の意味でこの便利な環境を使いこなすためには、必要最低限の「中身の理解」が必要です。プログラムの作者ほどの理解には遠く及ばないにしても、必要最低限のユーザのマナーとして、ブラックボックスを覗く努力と苦労を惜しまないことをお勧めします。
昨日の私のブログ「Windows Vista上で動き出したeduDV, VESTA, タブエディタDV-Xα支援環境」で冒頭紹介したSHARPのサイクロン掃除機EC−VX1、私はもちろんただのユーザにすぎませんが、購入するに当たってはほぼ全メーカの最新機種の性能・特長を調べて比較検討しました。だから使っている現在も、この部分でこんな仕組みで、こんなことが行われているから、こんなによくゴミを吸い取るんだ、とある程度理解しながら使うことができております。
これがいきなり家電量販店に行って、お店の人の勧めるがままに購入して、何気なく使って、何となく性能がいいね、と感じるのとはちょっとレベルが違う、満足度が違うと思うわけです。
世の中何もかも、あまりに便利で快適ですが、その裏方には、製品開発のドラマがあり、泥臭い努力と苦労があって、様々な人々の様々なアイデアが詰まっていて、そしていざ現場で実際に作るという段階を経て、営業販売されて結果的に私たちの手元に届いているわけです。
X線構造解析や電子状態計算のハードウェアやソフトウェアの著しい進化の陰には、同様な物語が隠れているのだということに、是非思いを至らせてください。
例えばDV-Xα法の世界で言えば、足立裕彦先生および歴代の足立研の皆様方の試行錯誤、努力と苦労の結果、現在公開されているソースプログラムが存在しているわけです。そして泉富士夫先生およびRuben A. Dilanian氏、そして門馬綱一氏の努力と苦労の結果、三次元可視化システムVENUSおよび次世代・統合3D可視化システムVESTAが今ここに存在しているわけです。もちろんこの両者を橋かけするデータ変換ソフトCONTRD, CONTRDALL, MAKEC04Dなどを作成された大阪大学の水野正隆先生のご努力があってこそ、DV-Xα法の計算結果はこんなにもスムースにVENUSやVESTAで美しく三次元可視化できているわけです。そしてここ数ヶ月の間に、泉富士夫先生が秀丸エディタマクロを使って構築された「DV-Xα法計算支援環境」によって、ほとんど全てのDV-Xα法に関わるプログラム類がタブエディタ(秀丸エディタ)というプラットフォーム上に見事に美しく整理整頓されました。百里の道も一足から、千里の行も一歩から、やがて時は流れいつの間にか、ついにここまで来たかと感無量です。
DV-Xα界の一つの到達点であるこの秀丸エディタマクロで構築された「DV-Xα法計算支援環境」、これからDV-Xα法をはじめてみようかという学生さんや研究者にも、パソコンといえばWindowsでしょ、といったGUI世代の方々にも、極めて低い敷居で気楽に使い始めていただける素晴らしい環境です。
「DV-Xα法計算支援環境」には、DV-Xα法本体プログラムSCATはもちろんのこと、入力データを準備するユーティリティプログラム類、計算結果を数字やグラフなどで表示するための数多くのユーティリティプログラム類、高等学校のクラブ活動や大学での講義・実習での利用を想定して私が作成した教育用分子軌道計算システムeduDV、データ変換ソフトMAKEC04D, CONTRD, CONTRDALL、そして次世代・統合3D可視化システムVESTAまでがタブエディタ(秀丸エディタ)上のボタンやプルダウンメニューを選択、クリックしていくだけで使えてしまうのです。至れり尽くせりここに極まりけりといった素晴らしく便利な環境です。
ところで話は変わりますが、独立行政法人科学技術振興機構の
はご存知でしょうか。これの
(現在221話もあります!)が私は大好きです。みな14分間の番組です。
1万円札(現在視聴不可)、マヨネーズ、一眼レフカメラ、ミルクティー、ホッチキス、鉛筆、段ボール箱、板ガラス・鏡、アルミなべ、雑誌、レンズ付フィルム、口紅、ピアノ、くつ下、発泡スチロールトレー、アルミ缶、自動車、時計、ミシン、セロハンテープ、万年筆、ぬいぐるみ、ランドセル、蛍光ランプ、歯ブラシ・歯ミガキ、トランペット、石けん、スニーカー、オルゴール、ストッキング、ティッシュペーパー、お菓子、コンビニエンスのお弁当、缶詰、おもちゃ、自転車、麺、Tシャツ、原子力発電所、パイ、シャンプー・リンス、羽子板、レトルト食品、食品サンプル、消火器、ペットボトル、カップめん、墨、ファスナー、ハイテク野菜、乾電池(現在視聴不可)、蚊取り線香、新500円貨幣(現在視聴不可)、化粧品、ポテトチップ、信号灯器、ストロー、ばね(自動車用)、ブラインド、スプーンとフォーク、使い捨てマスク、コンタクトレンズ、スチールボール、輪ゴム、フォークギター、チョコレート菓子、バット、ローソク(現在視聴不可)、ハサミ、救急バンソウコウ、人工芝、柿の種、耐火レンガ、かまぼこ、茶わん、ハーモニカ(現在視聴不可)、琴、七輪、判子(ハンコ)、草刈機、鍵盤ハーモニカ(現在視聴不可)、グミキャンディー、釣竿、卓球ラケット、メガネフレーム、野球グラブ、手袋、ボウリングの球、金属バット、硬式野球ボール、しょう油、プラモデル、電球、スピーカ、ビデオテープ、パン粉、魔法瓶、パスタ、割りばし、レコード、マッチ、リコーダー、かつお節、ワイングラス、そろばん、かい中電灯、紙コップ、とび箱、粒ガム、毛布、手のべそうめん、プチケーキ、おもち、スティック菓子、みかんの缶詰、缶コーヒー、地球儀、ボールペン、マシュマロ(現在視聴不可)、清涼菓子、バレーボール(現在視聴不可)、ガラスびん、ノート、ローラチェーン(現在視聴不可)、便器、絹糸、ジーンズ、トイレットペーパー、自転車タイヤ、ピンポン球、たまごパック、ふりかけ、ドレッシング、自動車用ホイール、石油ファンヒーター、トウフ、グラスビーズ、冷凍たこ焼き、消しゴム、下水道管、ドラム缶、たいこ、さきイカ、バウムクーヘン、かりんとう、瓦(かわら)、こんにゃく、消防ホース、塩、たわし、まんじゅう、ブリキロボット、冷凍ぎょうざ、将棋盤、コーンフレーク、剣道具、カーブミラー、お菓子(ウエハースとボーロ)、どら焼き、だて巻き、布粘着テープ、プロセスチーズ(現在視聴不可)、紅茶ティーバッグ、カニ風味かまぼこ、こんぶ菓子、納豆、いちごジャム、こいのぼり、ごま油とラー油、ラップとアルミホイル、えのぐ、アルミサッシ、アイスクリーム、テニスボール、黒板とチョーク、ドッグフード、トマトジュース、コーンの缶詰、野球ヘルメット、テニスラケットのガット、カイロ、イカの塩辛、冷凍ハンバーグ、マネキン、梅ぼし、スクーター、砂糖、タオル、ふ菓子、木琴、フッ素樹脂加工のフライパン、駄菓子、システムキッチン、木のお皿、ゴルフクラブ、ぬい針(現在視聴不可)、冷凍焼きおにぎり、日本茶、駄菓子(2)、朱肉、気泡緩衝シート、桃の缶詰、天体望遠鏡、コアラ型チョコ菓子、ドラム、鉄筋、フェルトペン、ボタン、カーペット、和紙、ピーナッツ、画鋲、オブラート、硯(すずり)、寒天(かんてん)、ソーセージ、ちくわ、焼き海苔、ルアー・毛針、ゴム手袋(現在視聴不可)、麦わら帽子(現在視聴不可)。
身近な様々な製品が実際にはどこでどうやって作られて私たちの手元に届いているのか、目から鱗が落ちる情報満載ですので、是非お時間のあるときに1話ずつでもご覧下さい。
(現在6話)というものもあります。こちらは長編44分間の番組です。
ボーイング777、フェラーリ(現在視聴不可)、豪華客船(現在視聴不可)、700系新幹線、消防自動車、巨大貨物船。
最近のテレビ番組、際だった芸のない芸能人と呼ばれている人々(一種のキャラクター)がたいした脚本もなくだらだらと遊んだり騒いだりしている風景を見せるだけの、番組製作側の製作意図不明な面白くも何ともない軽薄な番組が多いと思いませんか。
そのような番組、見ている方は何か新しい情報や知見を得るわけでもなく、自分の人生に何か豊かさをもたらすわけでもなく、脳味噌は停止状態にあり、見るだけ時間の無駄です。
そのようなテレビ番組を何となく見るよりは、もしご家庭に比較的高速のインターネット接続環境があるならば、THE MAKINGやTHE MAKINGスペシャル版を視聴することをお勧めします。
世の中の便利さを少しでもブラックボックス化しない、少しでも興味を持って中身(仕組み)を覗いて理解して自分の視野を少しでも拡げる、これこそが「自然科学」を学んで活かそうとしている私たちの人生において、常に求められる(必要な)態度なのだと思っております。
今月号(2007年6月号, Vol. 62)の月刊誌「化学」(化学同人)のp.34〜35に、DV-Xα研究協会副会長の河合潤先生が「専門の計算屋や計測屋にはならないでほしいと思います.」「どんなに簡単なプログラムでも,自分で書いたものはそれなりに価値があります.」と書かれています。
DV-Xα分子軌道計算は「DV-Xα法計算支援環境」によって初心者にも熟練者にも、CUI世代にもGUI世代にも、皆にとって使い勝手が良く、これからDV-Xα法を始める方にとっては使い始める敷居が極めて低くなりました。しかし「DV-Xα法計算支援環境」の中で何が行われているのか、なるべくブラックボックス化しないよう、両研究室(岡山理科大学理学部化学科の柴原隆志研究室と香川大学工学部材料創造工学科の石井知彦研究室)の学生の皆様には努力は惜しまないでいただきたいと思っております。
計算機化学は計算機を使って行う化学実験です。入力する数字、出力されてくる数字やグラフや3D画像、これらを自分の手や脳味噌を動かして理解に努め、試行錯誤して使ってこそ、「DV-Xα法計算支援環境」の本当の意味でのユーザとなれることでしょう。
特に「化学」は、「物質」を扱う学問分野です。化学を志す皆様には、是非「DV-Xα法計算支援環境」など便利なツールを利用しながらも、巷に溢れる「モノ」を化学の視点、量子化学の視点から眺め、原子核と電子の世界を想像しつつ「モノ」が理解できるようになっていただきたいと思っております。