1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 03:03:56.43 :UWhlCP6h0


俺が765プロに就職して半年ほど経った。
現場では謝ってばかりだが、仕事も徐々に覚え、アイドルたちともコミュニケーションを取ることができるようになった。

しかし、問題があるとすれば一つ・・・。

小鳥「おはようございます、プロデューサーさん」

事務員の音無小鳥さん。問題は、彼女に一目惚れをしたかもしれないということだ・・・。 


3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 03:07:39.15 :UWhlCP6h0


小鳥「どうかしましたか?」

いえ、なんでもありません!おはようございます!

思わず見とれていた、とは言えず、大声で誤魔化そうとする。

小鳥「ふふっ。今日も元気でいいですね」

そう言って微笑んだその顔はまるで花が咲いたようだった。 


8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 03:15:18.17 :UWhlCP6h0


今日の仕事は春香にオーディションに付き添い。しかし、最近の俺はそれどころでは無かった。

春香「…さん」

春香「プロデューサーさん!」

ふと我に返ると春香がこちらを見ていた。

春香「私の話、聞いてましたか?」

本当に聞いていない手前、嘘をいっても仕方がないと判断した俺は、首を横に振る。

春香「やっぱりそうですよね・・・」

溜息とともに、春香の呆れた顔が見れた。 


10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 03:21:13.24 :UWhlCP6h0


春香「今日のオーディション、どうやってアピールをしたらいいのか、参考意見を聞きたかったんですけど・・・」

とは言っても春香はすでにそこそこ売れている。普段の実力が出せれば今日のオーディションも問題ないはずだ。

まぁ、いつも通りでいいんじゃないか?
入社半年の、無責任で、何の重みもない言葉しか出てこない。

その時、スタッフから春香の名前が呼ばれる。 

春香「分かりました、今日も全力で頑張って行ってきます!」

春香「あと、悩み事は後で全部話してもらいますからね!」

どうやら、春香にはお見通しのようだ・・・。 


12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 03:25:53.20 :UWhlCP6h0


春香も無事合格し、帰りによったファミレスで春香から永遠に思えるのような、質問攻めをくらった。

春香「へぇ、プロデューサーさんは小鳥さんがタイプなんですね・・・」

神妙な顔をした春香が真面目な顔をしてまた質問を繰り出す。

春香「それで、小鳥さんに告白するんですか?」

冗談かと思ったが、春香の真剣な顔を見て応える。

「告白も何も・・・、そもそも音無さんのことよく知らないし。一目惚れというか、ただの憧れかもしれない・・・」



13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 03:30:13.10 :UWhlCP6h0


「そもそも、彼氏とかいるんじゃないか?ほら、あんなに綺麗な人だし」

俺の中途半端な返事は、春香のお気に召さなかったようだ。
溶けた氷の水を、ストローで音を立てて飲み干す。

春香「・・・帰ります」

荷物をまとめる春香を見て、慌ててコーヒーを飲み干す。
事務所に送り届けるまでがオーディションだ。



14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 03:36:57.79 :UWhlCP6h0


先程とはうってかわって、一言も話さない春香を横目で見ながら、運転を続ける。

「ほら、着いたぞ」

春香「・・・ありがとうございます」

不機嫌の理由が本当にわからない俺は、思い切って春香に訪ねようとした。その時・・・

春香「プロデューサーさん」

「ん?なんだ?」

春香「小鳥さんは私から見てもとても素敵な女性です。だからプロデューサーさんが・・・・・・、でも、それでもだめ・・・」

春香「だから、頑張ってください!」

途中、俯きながら小声で話す春香の声は俺の耳には届かなかった。
しかし、無意識にも、ありがとう頑張るよと、返事を返していた。 


15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 03:39:57.90 :UWhlCP6h0


事務所に戻った俺は早速、音無さんに声をかけた。

「お疲れ様です」

小鳥「あっ、プロデューサーさん。お疲れ様です」

微笑み返すその姿は、本当に疲れが吹き飛ぶような笑顔だった。

「あの・・・」

「はい、なんでしょう?」

結局俺は、何も聞くことはできなかった。 


17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 03:47:00.02 :UWhlCP6h0


春香「ええっ!まだその程度の進展だったんですか?」

何故か春香との仕事終わりにいつも立ち寄るファミレスで、何故か俺の恋愛相談となった。

春香「別に私から言ってもいいけど・・・、でもそれじゃ、あまりにもフェアじゃないし・・・」

春香はまた、あの時のように俯いて呟いている。

「なんだったら春香、音無さんの趣味とか好みとか教えてくれよ。分かれば映画とか食事に誘えるし・・・」

春香「別に知ってますけど、プロデューサーさんには教えません。大体、本人が話した記憶もないのにいきなり好みを当てられたら、気味悪がられますよ」

春香のもっともな指摘に、ノックダウンさせられる。 


18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 03:51:45.91 :UWhlCP6h0


春香「そもそも、趣味すら聞けないプロデューサーさんが、いきなりデートに誘えるんですか?」

どうやら春香は、出会って半年の俺の性格をずばり熟知しているようだ。

春香「いえ、普段のプロデューサーさんと小鳥さんの会話を聞いていれば嫌でもわかりますよ。せっかく小鳥さんが話を振っても、プロデューサーさんったら、すぐ仕事に戻るし」

なら、その時言ってくれという言葉しか出てこないがが黙って聞き流す。 


20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 04:00:10.34 :UWhlCP6h0


春香「じゃあ、プロデューサーさん。こうしましょう」

春香の提案は、簡単なものだった。

春香「あと、半年後までに小鳥さんと付き合う・・・ううん。せめていい雰囲気になること」

春香「もし、それまで経っても何も関係が変わらなければ、私から一つ罰ゲームです」

春香「あー、どうしようかな、罰ゲーム。うんうん。プロデューサーさんが思いっきり困っちゃうようなの考えます!」

なぜか春香の中では、俺が罰ゲームが受けるということは決定事項らしい。

「いいぞ。その代わり、俺が音無さんと付き合ったら、春香に一つ罰ゲームな?」

半年後にはどちらかが罰ゲームを受けるという有り難くもない約束は、無事、交わされるとこになった。 


21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 04:03:59.99 :UWhlCP6h0


春香との約束のおかげが次の日からは音無さんと普通に会話できるようになっていた。

「あっ、小鳥さんか・・・」

勇気を出して音無さんに下の名前で読んでいいかと尋ねると、案外あっさりとした返事が帰ってきた。

小鳥「はい。いいですよ」

普段からその名は呼ばれ慣れているようで、なんの抵抗もないようだった。




23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 04:12:15.34 :UWhlCP6h0


それから数ヶ月、俺は初めてデートに誘うことができた。
しかし、デートとは言っても・・・

小鳥「真ちゃんと雪歩ちゃんの主役の舞台ですか?」

「はい。どうやら好評だったみたいで、一日だけ追加公演をしたいって言われまして。小鳥さんも一度、見に行きたいって言ってましたよね?」

小鳥「そうなんですよ。今までの公演は、全部業務と被ってて・・・。確かに追加公演の日なら見に行けますね」

「小鳥さんにとっては貴重な休日ですけど、良かったら一緒にどうですか?二人も、ぜひ見て欲しいって言っますし」

小鳥「はい!案内よろしくお願いします」

悪いな春香。勝手に俺は勝った気でいた。 


26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 04:18:51.41 :UWhlCP6h0


小鳥「ホントに良かったです。思わず感動で泣いてしまいました。ありがとうございます、プロデューサーさん」

「いえ、俺はスタッフに頼んで席を用意して貰っただけですから。お礼は役を演じ切った二人に伝えてください」

小鳥「はい!楽屋には行けませんでしたけど、さっきメールしたら・・・」

噂のデートの当日、真と雪歩主演の舞台を見た俺達は感動が覚めやらぬまま、レストランへ場所を移していた。

今までに何度も練習や、公演を見た俺でさえ、最終公演の二人の鬼気迫る演技に軽く泣かされたのは内緒だ。



27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 04:26:48.10 :UWhlCP6h0


料理が徐々に運ばれてくる中、やっと本題が切り出せたのはデザートが出てきてからだった。

「小鳥さんは、お付き合いしている男性はいらっしゃるんですか?」

小鳥「わ、私ですか?」

小鳥さんは酷く狼狽した様子で答えてくれた。どうやら現在、彼氏はいないらしい。
むしろ、今までも仕事などで良い出会いもなく、嘆いていたそうだ。

小鳥「正直、もう諦めていたんです。でも、プロデューサーさんに彼氏がいるかと聞かれるということは、私に、多少でも、女としての魅力が残っているということですよね?」

この流れをスルーするほど、俺は鈍感ではないようだ。

思い切って告白を切り出した。 


29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 04:34:22.03 :UWhlCP6h0


小鳥「・・・・・・」

俺が告白を全て言い終えてから、小鳥さんは顔を上げない。

これは、焦り過ぎたか。無意識にも、春香との約束に間に合わせようとしていたのかもしれない。よく考えると、焦って半年で告白する理由など他になかった。

小鳥「プロデューサーさんは良い人だし、告白はすごく嬉しいんですけど・・・」

やっと顔を上げて答えを返してくれる小鳥さんは、何か迷っているようだった。

小鳥「もし、お付き合いをするとしても、アイドルの子たちはどうするんですか?」

俺には質問の意図がわからなかった。アイドルがどうして出たのか。
アイドルという立場上、恋愛を制限している。その前で、職場の社員同士が付き合うのはまずいということか。 


30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 04:39:35.58 :UWhlCP6h0


「良くわかりませんけど・・・。お付き合いがバレるのがまずいのなら、社長など一部に報告して、アイドルたちには内緒にするという事でどうでしょう?」

小鳥「そう・・・よね。私も皆みたいに若くないし、もしかすると私を好いてくれるのは最後の人かもしれないし・・・」

小鳥「分かりました。よろしくお願いします」

「ホントですか!ありがとうございます!」

その時の俺は、人生で一番嬉しそうな顔をしていたに違いない。 


32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 04:48:54.78 :UWhlCP6h0


小鳥「その代わり、お付き合いする上でお願いが・・・」

小鳥さんは言ったことはさっきとほとんど同じだった。付き合っても業務には影響を出さない。社長と律子には報告する。
そして・・・

小鳥「アイドルの皆には言わないで欲しいんです。特に春香ちゃんには」

春香?もし、小鳥さんと付き合えることを、一番に報告しようとしていた俺は悩んだ。
小鳥さんに念を押されなければ、春香にだけは、と言っていたのかもしれない。

しかし、理由は、付き合えるかどうかを賭けにして、黙っていると罰ゲームを受けるからと正直に話すわけにも行かず、諦める事とした。

小鳥「ごめんなさい。プロデューサーさんには、かなり制限をしてしまって。本当にそれでもいいんですか?」

「ええ、俺は小鳥さんと付き合えるなら、なんでも良いですよ」

本当に良かったのか今でも分からない。 


66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 10:42:49.05 :UWhlCP6h0


「・・・という訳なんだが」

律子「・・・」

小鳥「朝からいきなりごめんなさい」

律子「・・・まあ」

律子「いいんじゃないですか?」 

律子は怒っているわけでなく、喜んでいるわけでもない。
なんとも微妙な表情で答えた。

律子「・・・あずささんはこっちで何とかします。あんまり恋愛に呆けて、仕事に影響を出さないようにしてくださいね」

「いいのかっ?」

律子の返事に思わず声が大きくなる。

律子「良いも何も二人が決めたことなんですから。フォローは任せてください」

その時の律子は普段、いや、それ以上に頼りになった。 


69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 10:53:15.53 :UWhlCP6h0


無事、社長と律子に了解をもらえたあと、俺達は正式にお付き合いを始めることとなった。

とは言っても、そこは社会人。学生時代のように四六時中一緒なんてこともなく、そもそもバレてはいけないため、事務所では、今まで通り事務員とプロデューサーだ。

皆のお陰で話題は尽きない。
休日には、一緒にアイドルが出ている番組を見てダラダラ過ごす。
お昼に時間が合えば一緒に食事、帰りが遅くなれば車で送るなど、中学生のような清らかな交際だった。



70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 10:59:53.53 :UWhlCP6h0


交際を始めて数ヶ月、小鳥さんは日々、アイドルたちの事を思って過ごしているという事を改めて感じた。

小鳥「えっ、私が歌うんですか?」

「カラオケボックスに来て歌わない訳にはいかないでしょ?」

期待してますよという言葉は、小鳥さんには失礼だったのかもしれない。
歌声を聴きながら、後悔していた。



71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 11:04:56.90 :UWhlCP6h0


小鳥「プロデューサーさん」

「はい、なんですか?」

カラオケボックスに行った後、俺の家で小鳥さんの手料理に舌鼓を打ちながら答えた。

小鳥「・・・」

小鳥「やっぱり・・・お別れしましょう・・・」

唐突なその言葉に、俺は息をすることができなかった。

「どうして・・・」

これが本音。考えるよりも先に口から漏れる。 


73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 11:10:13.03 :UWhlCP6h0


小鳥「春香ちゃんとの約束、覚えていますか?」

「・・・」

ふと気付けばあの約束から明日で半年。
なぜ知っているのか、だから、どうしたのか、疑問しか思い浮かばない。

小鳥「ごめんなさい。実は春香ちゃんには交際してるって伝えたんです」

いつから?どうして?

小鳥「社長と律子に話した日、あの時です」

なんで?それで?

小鳥「・・・」

小鳥「春香ちゃんはプロデューサーさんを好きだって言う事、もう・・・気付いてますよね?」

「・・・」



74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 11:16:24.01 :UWhlCP6h0


もちろん気付いていた。
それが、本当の恋愛感情か、思春期特有の年上の男性への憧れか、細かくは分からないが好意はあるんだろうなと。

レッスンに見に行っても、トレーナーからは俺の前だと普段以上の力が出ていると言われ、俺が忙しい時に、律子がオーディションに付き合っても、

律子「私じゃダメみたいです」

と言われる始末。

普段はできるだけ春香との仕事を優先していた。

しかし、小鳥さんと交際を始めてからはそうも行かない。
ちょうどいい機会だと、おかしくない程度に距離を取り、最近では俺が居なくても結果を残すようになってはいた。 


77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 11:22:30.72 :UWhlCP6h0


「でも、それは、今とは関係ないですよね」

だからと言って、別れを切り出される理由は本当に分からない。俺の声は震えていた。


小鳥「プロデューサーさんは」

小鳥「春香ちゃんのことが好きなんです」


「違うっ!」


思わず大声でかき消そうとする。

「違います!俺は小鳥さんのことが好きで」

小鳥「やめてっ!・・・もう・・・やめてください・・・」

俺には小鳥さんの涙を止めることはできなかった。 


82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 11:31:35.70 :UWhlCP6h0


何分経ったのだろう。小鳥さんが落ち着くまで、呆然と眺めることしかできなかった。

小鳥「プロデューサーさんはとても良い人・・・お付き合いしても変わりませんでした・・・」

小鳥「一緒にご飯を食べて、一緒にテレビを見て、一緒に寝て・・・ずっと一緒に居られればよかった・・・」

「・・・」

小鳥「気付きませんでした?私が皆の話をするとすごく楽しそうな顔をするあなたは、春香ちゃんの話の時だけ、ずっと笑顔なんです。いえ、テレビに出ているのを見ても、本人を目の前にしても」

だから何が悪かったのだろう。自分の担当アイドルの活躍を、笑顔で迎えないプロデューサーなどいるのだろうか。

小鳥「でも、ずっと同じ顔。どんな話しでも、どんな状況でも、ずっと・・・」 


85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 11:38:17.76 :UWhlCP6h0


小鳥「まるで、裏切りを悟られないように、ただ、笑顔で塗りつぶしているだけ」

「そっ、そんなの・・・、小鳥さんの考え方次第じゃないですか!」

また大声で誤魔化す。声を大きくしても、なにも伝わらない、薄っぺらい言葉。

「俺は小鳥さんのことが好きです。本当に。春香は俺の担当アイドルです。だから・・・」

小鳥「・・・また」

小鳥「また、その顔をするんですね」

「・・・っ!」

何も考えていない。何もしていない。

ただ春香のことを考えていただけ。春香のことを想っていただけ。


どうやら俺は、役者にはなれないようだ。



89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 11:44:04.65 :UWhlCP6h0


それからのことは覚えていない。

タクシー会社に連絡して、小鳥さんを家に返した。
いや、小鳥さんが自分で連絡したのか。


別に、小鳥さんへの怒りはまったくない。

ただ、自分自身に対しての、怒り、失望、絶望・・・。

しばらく経って落ち着くと、自分自身が分からなくなっていた。



92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 11:53:15.05 :UWhlCP6h0


もう、泣いていたのか、怒っていたのか、寝ていたのか、それさえも分からない。

唯一分かる、それは、今すぐシャワーを浴びて出社しないと遅刻する、それだけだった。



重い足取りで階段を上る。

感じたことのないドアノブの冷たさに、震える手を抑え、ドアを体で引っ張る。


「・・・おはようございます」

律子「プロデューサー! 今朝から小鳥さんが・・・来て・・・」

律子のあんなに驚いた顔は今までに見たことがなかった。
交際宣言した時に、この顔を期待してたのに。 


93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 11:56:24.15 :UWhlCP6h0


律子「・・・大体わかりました。事故や事件に巻き込まれた訳じゃなさそうですね・・・」

俺達にとっては大事件だったが。
そんな軽口も出てこない。

律子「原因は、春香、ですね」

素直に驚いた。本当に大体のことは分かっているようだった。
今の俺もさっきの律子のように驚いた顔をしているのだろうか。 


95:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 12:04:44.39 :UWhlCP6h0


律子「春香からは前々から相談されていました・・・。でも二人が付き合い始めてから、察したのか、私が何も言わなくても諦めたようでした・・・」

頼んでもいないのに律子は説明を始める。
その話しは、昨日も聞いたんだけどな。

律子が少し息を吐くと、後ろから声が聞こえた。

春香「・・・プロデューサーさん」

律子「はっ、春香?いつの間に!」

いつも何も、俺の背中越しの影にずっといたじゃないですか。

春香「少し、いいですか・・・?」

歩きだした春香に黙ってついて行く。

春香「ここなら、良いですか?」


誰もいない、レッスン場。

人気のない中、二人で立ち尽くす。

初めて春香と出会った場所。



97:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 12:11:32.99 :UWhlCP6h0


春香「・・・」

春香「小鳥さんと喧嘩したんですか?」

どうやらうちの女性陣はエスパーのようだ。
何も言ってないのにバレてしまう。
きっと、小鳥さんとの交際も、アイドルたちにはバレていたんだろう。

春香「私の気持ちは、全部、律子さんが話してくれました」

春香「・・・」

言葉が出てこない。また、薄っぺらい笑顔を向けているのだろうか。

春香「今日で半年ですね・・・」

春香「・・・プロデューサーさん。私からの罰ゲームです」

春香「小鳥さんに謝って。そして、仲直りしてください」

P「っ!!」

また・・・まただ・・・。



98:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 12:14:45.82 :UWhlCP6h0


また、こうなってしまう。

春香「今の私の気持ちはそれだけです」

過ぎていく足音に振り返ることもできず、ただ、無音になるのを待つ。


望まれた静粛で押し潰されそうになった。




100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 12:18:11.57 :UWhlCP6h0


この期に及んで仲直りしろという。

律子が丁寧に喧嘩した理由、話してくれただろ。

それとも春香は、俺の気持ちに気付いていないのか。


いや、そんな訳がない。


もし、もしも、春香が私と付き合えと言えば。


俺はどうしていたんだろうか。 


102:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 12:26:10.88 :UWhlCP6h0


春香・・・、小鳥さん・・・。

どちからと向かい合っても、どっちも正解で、不正解のような気がした。

なら、逃げればいいのか。
そう思っても、そこに道はないように思えた。

レッスン場の鏡を見て、ふと気付く。

もう決まっている、そんな表情だった。

「・・・」

携帯を取り出した手が震える。

ドアノブを握った時から一向に震えは止まっていなかった。 


103:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 12:30:21.49 :UWhlCP6h0


初めて携帯を持った子供のように、慎重にボタンを押す。


一つ、一つ。


電話番号、覚えてたんだな。


番号なんて、自分の携帯と、実家と・・・これぐらいか。


全て押し終えたあと、通話ボタンを押し、耳に当てる。


呼び出してる時間が、永遠のように思えた。




106:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 12:34:10.69 :UWhlCP6h0



「・・・」


通じた。


「もしもし」


本当に俺の声か?


受話器の向こうからは一向に反応がない。


それでも続ける。


「俺と」


もう戻れない。



終わり 


110:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/24(月) 12:36:49.45 :UWhlCP6h0


なにこれ

支援ありがとうございました


元スレ
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1348423436