2006/08/11

ランド・オブ・プレンティ

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2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ以降迷走を続けるアメリカという国の姿を、元グリーンベレー隊員の男と、アフリカで育った彼の姪との対比によって描き出したドラマ。
ドイツ人、ビム・ヴェンダース監督の視点が興味深い。

あらすじ
ベトナム帰還兵ポールは9・11以後のNYを監視し、テロを防ぎ、人々を護るという使命を持っている。
誰に頼まれたわけでもない、誰に任命されたわけでもない。
半ば妄想じみたポールの使命感は、どこへ向かうのか?

ポールの姪のラナは、亡き母の手紙を伯父に届けるために10年ぶりにアメリカに帰国する。
イスラエル、アフリカと世界を見てきたラナのまなざしは、アメリカの歪みを見つめる・・・

妄想オヤジの暴走とその顛末、それを見つめる姪の、それぞれの旅路の終結とは?


映画としては、それほど面白い作品ではない。
ぶっちゃけポールのような、あんな妄想オヤジはいないと思う。
ポールのキャラクターに関しては、あまりにディフォルムしすぎな観がある。
その常道を逸した演出は、バカ映画に一歩足を踏み入れかけている。
かと言ってみるべき所が無いわけでもない。
ラナのキャラクターと、彼女が見つめるアメリカの姿はとても興味深いものがある。
NYには、家もなく貧困にあえぐホームレスたちがたくさんいるというのに、アメリカは国外のことばかりに目を向けてきた。
メディアも人々も意図的に目をそらしているかのように。

アメリカの抱えた矛盾と歪みをヴェンダースが提示している。
そのヴェンダースのインタビューが、DVDには特典映像として収録されている。

世界中の人たちは、あの日の出来事を同時に体験した。
それは即ち、あの出来事に関する記憶を共有しているのだ。
そんなことを語っていた。

そう、確かにあの記憶は今も鮮烈に覚えている。
あの日に感じた恐怖も不安も、とんでもない事が起こったという実感も、世界が変わってしまったことに気づいたことも。

また劇中、ラナは語る。
アフリカで9・11のテロを知った時、街では人々が歓喜していたという。
アメリカが、世界中から憎悪されている現実、その裏には確かに複雑なものが存在してる。
あのテロの後、パレスチナの民衆が狂喜している映像を見た記憶がよみがえる。
あの映像がパレスチナ人の総意ではないと思うが、それでも平和ボケの俺にとっては悲しかった。

正義は個人の置かれた立場や経験によって異なるのは理解できる。
だが、一方的に民間人を殺傷するテロリズムという行為が正義だとは思えない。

迷走を続ける世界。
イスラエル軍は武装組織ヒズボラの殲滅を狙ってレバノンに侵攻。多くの民間人が犠牲になっているという。
中東和平は程遠い。
イギリスでは旅客機爆破同時多発テロの計画が未遂に終わり、24名の容疑者が逮捕された。

いまだ燻り続ける世界情勢の中、安穏と平和を享受している俺のような輩は、時おり2001年9月11日の出来事を思い出す必要があるのかもしれないな。



thanks_dude at 22:34│ 映画 | ドラマ

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2. 【洋画】ランド・オブ・プレンティ  [ ハサウェイのシネマ!シネマ!シネマ! ]   2006/11/16 14:55
A+  面白い A     ↑ A− B+ B    普通 B− C+ C     ↓ C−  つまらない 『評価』  B+ (演技4/演出4/脚本4/撮影3/音響3/音楽3/美術3/衣装3/配役4/魅力3/テンポ3/合計37) 『評論』 「ブダhjp )
9.11グラウンド・ゼロはアメリカに、「貧困とパラノイアと哀しい愛国心」をもたらした。 2001年09月11日。 ニューヨーク、ワールドトレードセンターのツィンタワーに旅客機が、激突した。 「そのとき、あなたは、何をしていたか?」 僕は仕事の関係で、香港からのたぶん最...

この記事へのコメント

1. Posted by kimion20002000   2006/09/11 09:19
TBありがとう。
9.11の真実もまた、これから明らかにされていくのでしょう。その後の、イラク侵攻に関しては、アメリカでさえも、60%以上が間違いだったと判定している。また、上院議会報告書では、イラクとアルカイダの関係は、完全に否定されています。5年が経過して、映画やドキュメントでも、真実を探る動きが出始めています。
2. Posted by ライファート(エスパー)、管理人   2006/09/11 20:09
>kimion20002000さま
TB&コメントありがとうございます。
あのテロ以来、迷走を続けたアメリカも、少しづつ真実に向き合う用意ができてきたみたいですね。
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