昨年10月に行われた菅総理の所信表明「我が国は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、脱炭素社会の実現をめざします」と宣言しました。カーボンニュートラル(炭素中立)ですね。総理大臣これは、大変すばらしいことだと思います。しかしながら、一方では経済にブレーキをかけることになりかねない大きな問題を含んでいるようです。

恐縮ですが時代を遡ります。

CVCCエンジンをご記憶でしょうか。1970年、米国で自動車から排出される有害物質を強烈に規制する(当時のレベルです)マスキー法が成立しました。その内容は、

1975年以降に製造する自動車の排気ガス中の一酸化炭素(CO)炭化水素(HC)の排出量を、1970-1971年型の1/10以下にする。

1976年以降に製造する自動車の排気ガス中の窒素酸化物(NOx)の排出量を、 1970-1971年型の1/10以下にする。

この規制をクリアできない自動車は米国で販売できなくなることが決まったわけです。従って、それまで我が世の春を謳歌していたビッグ・スリー(GM、クライスラー、フォード)をはじめ、米国で自動車を販売していた日本メーカーも青ざめました。

みなさん、なんたって1/10ですよ。そんな技術は何処にもない。不可能!世界の自動車業界は驚天動地だったのです。また日本国内でも、米国に追随するかたちで昭和50年以降排出ガス規制が段階的に強化されることが決まっていたわけで、自動車各社はこの規制に対応したクリーンなエンジンの開発に迫られていました。初代シビック

そのような中、世界ではじめてマスキー法をクリアしたのが、ホンダが1972年発表した低公害エンジンCVCCだったのです。このエンジンはシビックに搭載され、一躍人気の車種となりました。もちろん米国においてもMade in Japanの地位とホンダブランドを押し上げる存在になりました。私は、はじめてシビックを目にした時の感動をいまだに記憶しています。カッコよかった!

ここで、ちょっとした自慢話です。CVCCエンジンは、のちに本田技研工業の3代目社長となられた久米是志氏が開発責任者でした。私、賀詞交換会で久米社長に言葉を交わしていただいたことがあります。(おしまい)

さて、日本が脱炭素の切り札としているのが水素とアンモニア。燃焼してもCO2を排出せず、化石燃料と違って枯渇の心配がない。タンカーしかしながら、製造の段階で排出されるCO2はかなりの量らしく、加えて製造コストが大問題。

電力においては石炭、LNG、石油などによる火力発電が現在のところ75%を占めており、再生可能エネルギーと言われている電力の比率は、はわずか18%しかありません(イギリス、ドイツの約半分)。

このような問題を抱えた状況で、果たしてカーボンニュートラルは実現できるのでしょうか⁈ かつてのCVCCエンジンのようなスーパーテクノロジーの登場に期待するしかないのか⁈

 昨年12月、政府は「グリーン成長戦略」なるモノを発表しました。「もはや化石燃料を使ってる場合じゃないよ。さっさと電力に転換しなさい」という内容で、その対象となる業種には物流、船舶、航空機、自動車なども含まれており、丸山運送で働く私には「物流業界包囲網」と映ります。DSC_1890

 さあ、未来に向かって今できることに取り組みましょう。もしかしたら誰かが開発してくれるかもしれないCVCCのようなスーパーテクノロジーに期待せず、小さなことでもいいからコツコツと積み上げていきましょう。

 

この話 つづきます。