岡本: 2棟の建物にそれぞれ「土間の家」「吹抜けの家」という個性的なコンセプトを提案していただ
いたのですが、どうしてそういう発想に至ったんですか?
大川: それぞれの土地の長所をいかに生かすか、また短所を緩和、若しくは逆手に取って長所に変えて
しまうということをいつも考えます。
線路に面しているということを、人によってはネガティブに捉えてしまうかもしれませんが、北
側にあんなにまとまった空間が確保されている敷地は滅多にありません。光は反射するものです
から、北側が開けていると常に均等な光を室内に取り入れることができます。だから北側に大き
な窓をつけて、採光をとりながら眺望も楽しめるようにしました。
また土間は、いつもお客様にお勧めするのですが、あるとホントに楽しい空間で、小さいお子さ
んがいればベビーカーを置いたり、もう少し成長すればサッカーボールが転がっていたり、外で
遊んで汚れて帰って来たらそこで砂を落として…お料理好きの人ならお漬け物を漬けたり、アウ
トドア好きの人は道具のメンテナンスをしたり…仕事場としても使いやすい。
屋根のある半屋外空間はあるととても便利なんです。
岡本: 土間と普通の部屋の違いって、汚して良いか悪いかですよね。昔の日本の家には土間があって、
そこに竃があって料理をしたり、農機具の手入れや農作物の仕分けをしたり、汚れても良い場所
で色々な作業をしていた。だから現代の家でも汚れて良い場所をあえて壁の内側につくることで
新しい使い方が広がる…と言うか、実は日本の原点に帰ったとも言えますね。
では「吹抜けの家」に関しては?
大川: 南向きに広い間口がとれていて、公園の緑も望めて、実は吹抜けをつくるまでもなく充分明るく
開放的な環境です。ここであえて吹抜けをつくって確保したかったのは、家全体の風通りの良さ
です。上下階の窓を通じて風が通ることにより家全体で快適に過ごせます。
窓の大きさというのも大切で、冬の晴れた日は大きい窓の方が部屋が暖まりますが、寒い夜や暑
い季節は、窓が大き過ぎると空調の負荷が膨らみます。散々考え抜いて、ちょうど適度な大きさ
の窓をつくりました。
岡本: 吹抜けも魅力的ですが、僕が気に入っているのは、吹抜けに面して2階に設けたフリースペース
です。廊下のようでもあるけど、廊下にしては広いしデスクもあってお部屋としても使える…
土間は内と外の境界でしたが、このスペースはプライベートとパブリックの境界として、色んな
使い道があるなと思ってます。
大川: お子さんがいる家庭では、そこで本を読んだり勉強をしている気配を、お母さんが家事をしなが
ら感じられます。ただ、開けっぴろげ過ぎても落ち着かないものでして、隠れたり、落ち着ける
空間もいくつかつくっていて、家族のちょうど良い間合いがつくれる家だと思います。
岡本: 夫婦でも、それぞれが上下で違うことをしていても、ふと声を掛け合うような、近過ぎず遠過ぎ
ずの距離感がつくれますね。それが今の家族の距離感にちょうど良いような気がします。
わせて壁をつくって部屋を増やしたり、壁を取って部屋を大きくしたり…
住宅も変化していくべきなのですが、普通の建て売りはとにかく4LDK確保しなきゃいけないと
いう感じなので、それが合わずに私たちに設計を頼んでくるお客さんは多いです。
岡本: 戸建でもマンションでも、既製品はとにかく部屋の数を優先しようとしますよね。多いに超した
ことは無いですが、限られた規模の中で部屋数だけを優先すれば、部屋の大きさや採光等の快適
性にしわよせが出ます。普通の建売りは、お客さんの顔が見えていない故に最大公約数的なもの
づくりをしがちですね。
大川: 住む時が完成ではなく、住みながらこの家を育てて行ってくれるのが良いと思います。
岡本: 他に、これまでの注文住宅の設計で、お客さんの声を聞いてきた経験を生かせたポイントはあり
ますか?
大川: 収納については、ただ沢山つくるということでは無く、あるべき場所、あったら良いな、と思う
場所にあるということに配慮しました。
またキッチンは、既製品をそのまま当てはめるのでは無く、後から欲しい場所に棚を作ったり、
好みのタイルを貼ったりできるよう製作をしました。
それと素材ですね。注文住宅では、無垢の床材を希望される人がとても多くて、私が設計させて
いただいた住宅はほぼ100%無垢材を使っています。施工者からすると無垢材は、湿度によって
伸びたり縮んだりしますし、1枚1枚貼って行くとても気を使う素材ですし、普通の建売りでは
あまり使うことがありません。今回の施工は、私がいつも注文住宅を頼んでいる信頼できる工務
店にお願いをしており、だからこそ無垢材の使用が実現できました。

岡本: 最近は、複合フローリングもプリントの技術が良くて、ぱっと見では分からないくらいですが、
やはり裸足になって触れてみた時の感触が違いますね。足だけじゃなく、寝転がったり、小さい
お子さんも直接触れることが多い部分ですから、無垢材の方が安心できますね。
大川: 無垢材の方が、意外にメンテナンスがしやすいですし、使って行く内に年々良い味になって行き
ます。プリントの複合フローリングは出来た時が一番きれいなんですけど時間が経つと“中古”に
なってしまうだけなんですね。今回の家は、住めば住むほど味が出てくる…そんな感覚を共有で
きるお客様と出会えることを楽しみに感じています。
岡本: 私たちが色々な思いと気持ちを込めてつくってきた家なので、そこに共感して選んでいただき、
長く住んでいただけると、この家をつくった甲斐がありますね。
大川: そうですね。地鎮祭や、上棟時には餅撒きもしましたしね。
(続く)
次回は、外観デザインやインテリアについてお話をうかがいます。
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