THE ANOTHER SIDE

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イギリス・ロンドン留学記

もしも英語が話せたら、一体何が変わるのか

No.08 salvage

December.04

彼女の名前はクレア。
私とNOVはクレア様と呼んでいる。
いや呼んでいた、か。

2週間目も終わる頃、
相変わらずダメ留学生を演じていた2人に、思わぬ話が舞い込んだ。
「今度、みんなでウィンザー城に行くのだけど一緒に行かない?」
その声の主は、台湾人らしからぬ大きな瞳に丸い子顔で、
透けるように流れる髪を肩に浸したクレア。
断る理由と週末の予定なんてどこにも無いおれたちの答えはもちろんYES。

実際ウィンザー城なんてどうでもよかった。
週末に外人と遊びに行くという留学生なら当たり前の行為に、
感動すら覚えたもんだ。皆たどたどしい英語を使い、
母国語ならしょうもない会話がやたら楽しい。

韓国人・ジサンは子供のようだが、韓国の熾烈な大学競争を生き抜いた学生。のちに彼女から毎日話しかけられるようになっていく。
台湾人・セイラは30歳に見えたが20歳と言ったらやたら喜んでいた。
その効果があってか、遊びに誘われるようにもなっていく。
前回失敗したメキシカンとはここで交流を深めることが出来た。
今では毎日のPUBに欠かせない存在だ。

これを期に人が人を呼び、
僕らの世界はどうにか広がっていくことになる。
だが、この機会を与えてくれた当のクレアは、、、もういない。
セイラから聞いた話によると今は台湾で秘書の仕事をしているらしい。
誘ってくれたのは、彼女からしたら気まぐれだったかもしれないが、
僕らからしたら、クレアはクレア様。