彼の名はジョン。
ホリデーになると孫に会いたいばかりに、
イギリス南部はブライトンからやってくるMr.Unwinの父は、
いつだって豪快で返事に悩まされるお爺ちゃん。
イースターホリデーがやってきた。
と同時に、この日を待ってましたと言わんばかりに、
車をかっ飛ばして来た、巨体の爺ちゃん。
よっぽど孫と話したいのか、2人に何とか絡もうとするが、
親族と言えども年齢の壁は厚いようで空回りが続く。
ある日、彼が庭の端で寂しげに煙草を吹かしているので、
全館禁煙の我が家では肩身が狭い私も、
その寂しげの会に参加する事にした。
「ハロー!TOM!ホリデーはどこか行かないのか?」
明日、イギリス南東の教会の街・カンタベリーに行くと言ったら、
「おお!!そいつは良い考えだ!TOM!」
たぶん爺さんは、叫ばないと喋れないのだ。
行ったことはあるのか尋ねたら、
「もちろんさ!そこには歩いて行ったよ!」
おお、、カンタベリーまでは約100Km。
そんな突っ込み所 満載な一文で、どう言えばいいか悩んでいたら、
「3日掛かったよ!もちろん私がまだ若い頃な!」
なんでわざわざ、歩いて行ったのか尋ねたら、
「娘が死んだからさ!」
ええー、、なんて返せば良いんだよ、、、
無理やり話を変えようと、カンタベリーの次の日は
オックスフォードに行く予定だと言ったら、
「ほう!懐かしい!私はそこの大学に行っていたよ!ハッハッハ!」
ほんとこの爺さんは、ボケているのか本気なのか、
非常につかみ辛い、、、なので、
キッチンに行ってホストマザーに裏を取る。
「ええ、そうよ。ほら!クリスマスにお婆ちゃんが来たでしょう?
その奥さんとはそこで知り合ったらしいわよ。うふふ、、、」
うふふじゃないって、、、
キッチンから窓越しに見える、かのオックスフォード大学卒業生。
だから、ガッハッハ!とブルブル腹を揺らし、煙を吐き出すその姿が、
壊れて煙が出ている洗濯機のように見えるはずがないのだ、、、