日本食が食べたかった。
最初に思いついたのはサバの塩焼きだった。
イエッツPUBで台湾・アッシュリーは日本食について語った。
「台湾でソバやスシを食べたの。美味しかったわ〜」
ロンドンでも日本食は食べれるが、高い。
貧乏な我々の贅沢は、PUBのフライドポテト。
もう限界だった。
台湾・セイラとメキシカンも誘って、やってきた店内は、
日本人で溢れかえり、店員も日本人。
絶対的な安心。確信的なメニュー内容。恐れるものは値段だけだ。
「これって美味しいの?」
アッシュリーが何かを指して言っているが、
今は、思考全てサバの塩焼きにしかあらず、適当に答える。
結局アッシュリーが選んだのはサバの味噌煮。
さすが日本通を自負する辺り、ニクイ選択だ。
セイラはブタのしょうが焼き。
台湾コンビは、おふくろ系で迎え撃つらしい。
メキシカンはカレー。
やはり本能で少しでも辛いものを求めるのだろうか。
待つ間、久々の崇高な日本料理様のために、
神経を集中させ、胃袋の受け入れを体制を整えたかったが、
こんな時に限って、セイラが割り箸の「おてもと」の字を見て、
「これってどういう意味?」
と、ややこしい質問を投げてくるので、適当に、
「near the hand」
と言って終わらす。
メキシカンも箸の練習をしているが、
思い出せないほど複雑な握りで、「アハ〜」
とか言ってるので、非常に突っ込みたくなるが、
教育は全てNOVに丸投げして、私はサバを待つ。
まず来たのはNOVのからあげ定食。
待つのは辛いだろうと思い、先に食べるように促したが、
「懐かしい!んんんめぇ〜」
という、素直な感嘆に憎悪を抑えきれなくなり、
やはり待たせればよかったと、
芯まで火が通ってなければいいのにと、
冷淡な視線を投げるが絶頂を迎えたNOVには届かない。
セコイ人間に食の神は微笑まない。
私のサバは後手後手に回され、
メキシカン、セイラの喚起の声が、底知れぬ不安へと追い込む。
ええ、、ひょっとして忘れてしまったのだろうか、、、
今、料理が来たあのお客は私よりあとじゃないのか、、、
猜疑心に駆られ、焦燥に駆られ、自制心を刈られる直前に、
サバが来た。
「この味、あまいよ!どうしてくれるのよ!TOM!」
アッシュリーが味噌煮のことで何か言っているが、
今は、目の前にある塩焼きだ。
しかし思えば、このサバを求めるばかりに、
大切な友人達を無下に扱ってしまった、、、
反省します、、、の前に、やっぱり食べると、
「懐かしい!んんんめぇ〜」
やっぱりおいしい御飯は幸せだ、、、