THE ANOTHER SIDE

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イギリス・ロンドン留学記

もしも英語が話せたら、一体何が変わるのか

No.68 mist

April.23

つい最近まで普通に話していた学校の友人が
突然、学校に来なくなりそのまま二度と会えないことがある。
ロンドンの霧に呑まれたように。

彼の見た目は活発そうでノリの良い日本人。
その未成年な少年の口から飛び出す、様々な逸話と、
波乱万丈な生い立ちで、最初は皆から人気があった。
一時期、私とNOVも彼と喫煙所でよく会い、PUBにも行ったもんだ。
だから彼の話は、ほとんどが嘘ということを
いち早く見抜けたのかもしれない。
友人も先生もその事に気付いたときから、
彼の存在はやがて希薄になり、学校にも来なくなり、
一年の留学予定だったが、半年で霧になった。


彼女の名前と顔を別々に覚えていたため、
名前を聞いても、突然学校を辞めて失踪してしまった、
ユンジュンの友達が誰だか分からなかった。
帰り道でNOVから詳しく聞いてみたとき、
一人の日本人の顔が浮かんだ。思い出したその顔は、
数ヶ月前に黒人に突然、唾をかけられたあの女の子だった。
かわいそうに、、、あれで滅入っていたのだろうか。
ロンドンの霧のような雲間から、あの青い顔が見えた、、、



一ヶ月前に警察から手紙が来た。
私が霧になりかけた、あの事件に関してだ。
内容は、
「犯人は残念ながら見つかっていません。
 今後も捜索を続け、疑わしい人物と判断しましたらご連絡します。
 何か危険と感じましたらご遠慮なく電話してください。」

もともと期待していなかったし、襲われた時電話なんてできないし、
もう、思い出したくもなかったので、
その手紙には、なんの意味も持たなかった。
四ヶ月経った今でも、並んで歩く黒人達を見ただけで、
頭が疼いて叫びたくなる。

悔しさで手紙を握りつぶし、
忌々しい記憶と一緒に捨てようと、ゴミ箱へ投げたが、
ふちに当たって入らなかった。