2009年03月
2009年03月30日
何故男性が劇場に少ないのか？−幾つかの仮説
「何故男性が劇場に少ないのか？」
特に自分の父親世代を劇場で見ることはかなり少ない。
太宗を占めるのは女性で、平日の公演ともなれば殆ど中高年女性！なんてこともよくある。
（これがクラシックコンサートだったりオペラだったりするとまだ男性も多い気がする。）
この疑問に対する仮設をいくつか挙げ、それについて検証を行ってみたいと思う。
仮説� �中高年男性は娯楽にお金を使わない
学生時代、「アートプロデュース」という授業があり、最終課題が自分で舞台芸術の公演を企画・立案・プレゼンテーションする、というものだった。
企画書を提出し、優秀作品については最後の授業で受講生の前でプレゼンテーションが出来る、というもの。
この授業は３年次以上の受講が望ましい、とされていたけれど、２年の時教授に熱くお願いし受講許可を貰った思い出の講義。これで単位が取れなかったら悔しいのでこの最終課題もかなり気合をいれて取り組んで、最終的に２年連続で優秀作品に選ばれた。というのがちょっとした自慢。
この当時から演劇の公演における観客の男女比のバランスは気になっていて、２年生の時は「おとうさんのためのシェイクスピア」という企画で行った。
取り組むにあたって、友達のお父様に協力していただき、アンケートを行ったのだが、結構「映画には年数回行く」が「劇場には今までで数回しか行ったことがない」という方がいらっしゃった。
このアンケートを汎用的な結果として扱うにはあまりに母集団が少ないけれども、こういう方結構いらっしゃるんじゃないだろうかと思料。
とすると、仮説の「娯楽にお金を使わない」というものは弱い気がする。
このあたり、レジャー白書なんかで調べてみたい。
�⊆乃錣禄�・子供のものだ、という意識がある
これも先述のアンケートで聞いたのだが（「どうして劇場に足を運ばないのですか？」というものの質問の、回答の選択肢に入れた）、これに対して「YES」と言ったお父様いらっしゃった。
とすると、このイメージを払拭して、来やすい環境を作る必要がある？
��チケットの取り方が分からない
これは中高年男性に限らず、劇場にあまり足を運ばない人全般の阻害要因として挙げられそうだが、この場合、チケットを取り慣れている女性（奥様なり娘さんなり）に旦那さんも連れてきてもらう、というアプローチが出来ないか？
と学生時代考えていて、「おとうさんのためのシェイクスピア」のチケットの売り方も、「元々演劇をよく見に行く女性に、おとうさんを連れてきてもらう」というアプローチをします、と書いていた。
これが実際実現可能かどうか…ちょっと考えてみたい。
�せ�間がない・合わない
「１万円あるなら劇場に行くんじゃなくてパチンコに使う」と言われた、という話を何かの講義の時に聞いたことがあるが、演劇がその人の中で「わざわざ時間を割いてまで行く価値があるもの、と認識されているかどうか」ということに繋がっていくのだろうな…
�ジ�演のチラシに男性に対する訴求力がない
チラシって結構有用な媒体だと思うが、実はこれ女性向けで男性にとっては魅かれるものではない、ことが結構あるんじゃないか？
というのを日経アソシエに載っていたワコールの「クロスウォーカー」の商品カタログの、女性版と男性版とでアプローチを変えたという事例を読んでふと思った。
![日経ビジネス Associe (アソシエ) 2009年 3/17号 [雑誌]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51XER27s1BL._SL160_.jpg)
日経ビジネス Associe (アソシエ) 2009年 3/17号 [雑誌]
クチコミを見る
曰く、女性用は商品のビジュアルイメージを伝え、男性用は図表・説明文が圧倒的に多いつくりになっているのは、「男女の購買動機が違う点に着目して」カタログを作り分けたからだそう。
もしこの仮説が有効であれば、�△乃鵑欧拭崋乃錣禄�・子供のものだ、という意識がある」という仮説に対しても繋がりそうなので、次回この点に関してもう少し踏み込んで考えてみたい。
特に自分の父親世代を劇場で見ることはかなり少ない。
太宗を占めるのは女性で、平日の公演ともなれば殆ど中高年女性！なんてこともよくある。
（これがクラシックコンサートだったりオペラだったりするとまだ男性も多い気がする。）
この疑問に対する仮設をいくつか挙げ、それについて検証を行ってみたいと思う。
仮説� �中高年男性は娯楽にお金を使わない
学生時代、「アートプロデュース」という授業があり、最終課題が自分で舞台芸術の公演を企画・立案・プレゼンテーションする、というものだった。
企画書を提出し、優秀作品については最後の授業で受講生の前でプレゼンテーションが出来る、というもの。
この授業は３年次以上の受講が望ましい、とされていたけれど、２年の時教授に熱くお願いし受講許可を貰った思い出の講義。これで単位が取れなかったら悔しいのでこの最終課題もかなり気合をいれて取り組んで、最終的に２年連続で優秀作品に選ばれた。というのがちょっとした自慢。
この当時から演劇の公演における観客の男女比のバランスは気になっていて、２年生の時は「おとうさんのためのシェイクスピア」という企画で行った。
取り組むにあたって、友達のお父様に協力していただき、アンケートを行ったのだが、結構「映画には年数回行く」が「劇場には今までで数回しか行ったことがない」という方がいらっしゃった。
このアンケートを汎用的な結果として扱うにはあまりに母集団が少ないけれども、こういう方結構いらっしゃるんじゃないだろうかと思料。
とすると、仮説の「娯楽にお金を使わない」というものは弱い気がする。
このあたり、レジャー白書なんかで調べてみたい。
�⊆乃錣禄�・子供のものだ、という意識がある
これも先述のアンケートで聞いたのだが（「どうして劇場に足を運ばないのですか？」というものの質問の、回答の選択肢に入れた）、これに対して「YES」と言ったお父様いらっしゃった。
とすると、このイメージを払拭して、来やすい環境を作る必要がある？
��チケットの取り方が分からない
これは中高年男性に限らず、劇場にあまり足を運ばない人全般の阻害要因として挙げられそうだが、この場合、チケットを取り慣れている女性（奥様なり娘さんなり）に旦那さんも連れてきてもらう、というアプローチが出来ないか？
と学生時代考えていて、「おとうさんのためのシェイクスピア」のチケットの売り方も、「元々演劇をよく見に行く女性に、おとうさんを連れてきてもらう」というアプローチをします、と書いていた。
これが実際実現可能かどうか…ちょっと考えてみたい。
�せ�間がない・合わない
「１万円あるなら劇場に行くんじゃなくてパチンコに使う」と言われた、という話を何かの講義の時に聞いたことがあるが、演劇がその人の中で「わざわざ時間を割いてまで行く価値があるもの、と認識されているかどうか」ということに繋がっていくのだろうな…
�ジ�演のチラシに男性に対する訴求力がない
チラシって結構有用な媒体だと思うが、実はこれ女性向けで男性にとっては魅かれるものではない、ことが結構あるんじゃないか？
というのを日経アソシエに載っていたワコールの「クロスウォーカー」の商品カタログの、女性版と男性版とでアプローチを変えたという事例を読んでふと思った。
日経ビジネス Associe (アソシエ) 2009年 3/17号 [雑誌]
クチコミを見る
曰く、女性用は商品のビジュアルイメージを伝え、男性用は図表・説明文が圧倒的に多いつくりになっているのは、「男女の購買動機が違う点に着目して」カタログを作り分けたからだそう。
もしこの仮説が有効であれば、�△乃鵑欧拭崋乃錣禄�・子供のものだ、という意識がある」という仮説に対しても繋がりそうなので、次回この点に関してもう少し踏み込んで考えてみたい。
2009年03月29日
ドイツに行ってきました。
久々のエントリー。年度末でバタバタして、最終週に連休を取りドイツに行ってきました。
ツアーだったので芸術鑑賞の類は一切できなかったので残念。
写真みたいな感じで街中にコンサートや展覧会のポスターがみっしり貼られている光景をよく見ました。
ちょうどもうすぐイースター（今年は4月中旬だそうな）、という時期だったからか、バッハのマタイ受難曲とか、スターバトマーテルとかの演奏会＠教会が多いみたいです。
ドイツの人はこういうポスターを見て行こうと思うのかしら？どのくらい人々の行動に繋げる効果があるのかしら。
大学4年の時に個人旅行で母とヴェネツィアに行った時に、コンサートのポスターを街中で見かけ、観光案内所でチケットを買って行ったことがありました。
ヴェネツィアはヴィヴァルディの生誕地、ということもあり演目はヴィヴァルディでした。
写真の右端の白っぽいポスターが私の聴いた演目が書いてあるものです（見にくいですが）。
ちなみにこのコンサートを聴いた帰りの船でパスポートを盗まれ、大変な騒ぎになったので、コンサート自体の印象が相対的に薄くなってしまってます（笑）
この話はいずれ私の旅ブログのほうで詳しく書こうと思います。
「女子的一人旅のススメ。」→http://blog.livedoor.jp/traveling_girl/
ともあれ、街角でポスターを見て、行きたくなって、行っちゃう、っていうことがもっとスムーズに出来るといいな、と特に演劇の場合に思います…
チケットを取るのが手間だし、見たい時に売り切れていることが多いし。
ケータイで劇団四季なんかはぱっとチケットの残席数が見れたりするので便利だなぁ、とは思います。
元旦からひそかに勉強をしていた簿記３級に無事合格したので、これをはずみに今後は興業の収支や数字なんかにも着目しながら、勉強を続けていきたいと思います。
明後日で私の会社での「新人ちゃん」ライフが終わるので、より会社員としての仕事が大変になっていきそうですが、アートマネジメントの勉強も負けずに頑張っていきたいと思います！
2009年03月17日
都市と劇場について〜金丸座VS国立劇場〜�９駑�劇場を分析！
さて最終回。一生懸命書いていた文章が消えてしまい衝撃・・・
国立劇場の分析をしたいと書いていたが、ここまで国立劇場の特徴をこんぴらさんの近くにある金丸座と比較して書いてきた。
これを踏まえてSWOT分析をしてみる。
国立劇場の分析をしたいと書いていたが、ここまで国立劇場の特徴をこんぴらさんの近くにある金丸座と比較して書いてきた。
これを踏まえてSWOT分析をしてみる。
内部要因 |
|
|
| |
強み | 弱み | |||
公演を定期的に行っている | 客層が偏っている | |||
�� | �� | 都心からのアクセスがいい | 機会 | 外部要因 |
�� | �� | 非日常性に欠ける | 脅威 | |
日経アソシエに出ていたスキームを使って「クロスSWOT分析による戦略例」とやらを考えてみたい。ちなみにアソシエの例題はラーメン激戦地でのあるラーメン屋の戦略を考える、というものだった。
�機ァ峩�み×機会」 積極的攻勢（強みを武器にして機会を最大限に生かす）
リピーターの確保・育成
��. 「強み×脅威」 差別化戦略（強みを生かして脅威に対抗する）
普段から足を伸ばしやすい劇場づくり（当日券の拡充など）
��. 「弱み×機会」 弱点強化（弱みによって機会を失わないよう対策を打つ）
立地を生かして愛好者層の外にもアプローチ
��. 「弱み×脅威」 防衛策（弱みと脅威が重なる最悪の事態を回避する）
目先を変えたイベント的な要素を持ち込む
…というのが私の分析、。
やってみて興味を持ったのが�兇鉢掘�
�靴砲弔い討倭阿�ら話題に出している鑑賞教室がいい例なのかしらと思った。
東京の真ん中にあるから、社会科見学のコースに組み込んだりも出来る。
ただ、せっかくオフィス街の中にあるのだから、近隣の企業に勤めるビジネスマンも足の運べる教室があるといいのに…と思っていたら、この鑑賞教室、6：30〜とか7：00〜といった回もあって、その名も「社会人のための歌舞伎教室」（例→★）などをやっている様だ。
時間帯の設定は難しいところだけど、この社会人のための教室の客層がどうなっているのか凄く気になる！きちんと機能しているのか、やっぱり女性が多いのか…次回開催の際は是非足を運んでみたい。
それと、個人的に是非力を入れてほしいのは�供�
舞台芸術はチケットを前もって買っておかなくてはならないから、急に時間ができても鑑賞しに行こう、というのは難しい。（その点は美術館や映画館の方が柔軟）
例えば平日の夜など、チケットにゆとりのある日は当日券を売り出し、ケータイで予約して当日劇場で購入・引き換え（これは新国立劇場のアカデミック・プランの販売形態）というような方法で入手出来ればこの劇場の強みを活かせるのではないだろうか。
先日アートマネジメント関連の論文の中に「一部の愛好家のためのものとなっている伝統芸能」という表現が出てきて、やっぱり「うーん」と思ってしまった。
伝統芸能の観客層を広げる、というのは果たして有効なのか？
有効である理由を考えてはいろいろ書いてきたが、やっぱり根拠として弱い気がする。
今ぼんやりと思うのは、もし限られた人のものとしてあり続けたら、by chanceの伝統芸能との出会いが無くなってしまうのでは？ということだ。
「見てみたら、なんか面白かった」と思う人が増える機会を増やす、というのはやはり大事なのではないだろうか。
これはきっと現代芸術とか、クラシックとか、諸々の「敷居の高そうな」芸術全般に言えることだと思う。
2009年03月09日
都市と劇場について〜金丸座VS国立劇場〜��国立劇場編
劇場比較第2弾は、国立劇場編。なにより注目したいのがこの立地。（地図は独立行政法人 日本文化芸術振興会のHPよりお借りしました）
永田町駅から徒歩10分、半蔵門駅から徒歩5分、皇居のお向かい、隣が最高裁という、まさに首都・東京のど真ん中に！
地図の下の方に「国立図書館」と書いてありますが、その下は国会議事堂、内閣府、特許庁があります。
すごいライン上にある劇場なんですな！
アクセスの良さは抜群です。しかも終演後は渋谷・新宿方面へ臨時のバスが劇場前から出ていた。
えんえん石段を上って行った金丸座とはえらい違いです。
が、三宅坂JCTが近いから車はびゅんびゅん通っているし、お堅い官公庁街だけあってコンクリートの建物ばかりで、ドライな街です。
最高裁はこんな感じ。
（HPより拝借）
その隣にあるのがこれ。国立劇場。
ただし、永田町側から行くとこの裏手を回ることになります（写真は皇居を背に撮った向き。）
直線的な建物の街ですな。
まさにオフィス街に溶け込んだ感じの劇場建築。
（銀座の歌舞伎座はまた違うけど。慶応の東門のような唐突感がある）
前回から論文を引用している近藤端男氏は、前近代から近代の劇場の変貌について、
「悪場所から都市の空間の中に溶け込んだ劇場は、かつての舞台と一体化した饗宴性をなくし、古典的演劇としての価値を得た」
と言っています。
私が文楽を見たとき、隣のお姉さんがもしゃもしゃ上演中に何か食べてたおじさんに「うるさい」と注意した話をしましたが、江戸歌舞伎だったら上演中の飲食はOKだったわけで（歌舞伎座とかは普通に今でも可能）、それが「ハレ」の意識を生む一因だったと近藤氏は言います。
悪場所、というのは金丸座にはあてはまりませんが、都市のはずれ・異空間という意味では共通するものがあると思います。
古典的演劇、という一つの枠組みに規定されていくことによって、きっと「敷居が高い」ものになっていったのではないだろうか…？客層も低い身分の者のための「芝居」から、高貴な者のための「演劇」と変容したというし…。
これは客層だけでなく、歌舞伎役者も河原乞食からスタートして世襲制・家柄、という世界になったことともパラレルのような気もする。
むむー。
次回、まとめます。
2009年03月08日
都市と劇場について〜金丸座VS国立劇場〜��
文楽をテーマに、もう一つ国立劇場について考察したいと書いた。
都市と劇場の関係において、伝統芸能を永田町の、最高裁判所の隣にある国立劇場で見る、というのは何やら奇妙な気がしたからだ。
近代以前は都市の外に追いやられていた劇場は、「国家」という概念の誕生によって、演劇と国家のアイデンティティが結びつく考えが生まれることで、街の中心にNational Theaterがつくられることになる、という変遷は国を問わないと学生のころ授業で習った。
国立劇場はまさに後者だが、伝統芸能を近代の思想を背景に生まれた劇場で上演することは、どのような強み・弱みを持つだろうか。
これを現存する日本最古の劇場といわれる金丸座（こんぴら歌舞伎）と比較して考えたい。
金丸座は香川県の金刀比羅宮（こんぴらさん）のすぐ近くにある劇場。
まず、近代以前の劇場について、近藤 瑞男氏の「都市と劇場」で述べられていることを要約すると、以下の通りである。
芝居というのが農業を基盤とする封建社会において、生産と全く結び付かないものであり、有効歓楽の場、諸悪の根源である「悪場所」として蔑視されていた。
それゆえ歌舞伎の上演は京・江戸・大坂の三都市限定で、芝居小屋の建設は一定地域にのみ許可されていた。
悪場所として蔑視され、都市の外に追いやられることで、その娯楽空間はより日常空間から引き離され、逆にハレとしての空間の輝きを増すことになった。
すなわち異空間としての日常空間との差別化が行われ、独特の芸術・文化の発信源となった。
金丸座も非日常空間にあることは間違いない。
江戸時代は金毘羅参りは伊勢参りに次いで人気で、庶民の憧れだったそうだ。
近藤氏は芝居町は「川」「河原」「橋」「船」と深く関わっていたといい、たとえば橋であれば、
『「橋」は「端」であり、「日本の橋は、二つの世界を分け隔てる空間」（「橋と日本人」上田篤、岩波新書）で、日常空間と異空間を隔てる「橋」を渡ることで、祝祭空間に入っていくのを確認する。』
と書いている。
金刀比羅は芝居町ではないけれど、「船」でこんぴら参りに来た人が多かったのは、今もJR琴平駅前に立つ「高燈籠」という大きな高い塔が、船で来る人のために明かりをつけ、目印となっていた、という逸話からも窺うことができる。
このことからも金丸座は「非日常空間」であることが分かる。
アクセスも、石段を上って、左に曲がり、坂を上っていくと見えてくる、という感じ。
歌舞伎座よりも質素な外見だけれど、やっと辿り着いた！という感じと、役者の名前の書かれたのぼり（右側）が気分を高揚させます。
中に入るとこんな感じ。
まさしく祝祭空間！が目の前に広がります。
花道への出入り口から足を踏み入れます。
客席は升席。飲み食いが出来る。
でもすっごい狭い。
提灯がお祭りっぽさを盛り立てている気が。
都心にある劇場やホールは、駅からのアクセスがよくて足を伸ばしやすく、逆にそうでないところにあると「立地が悪い」などと評されがちだが、金丸座に実際足を運んでみると、立地の面からいえば相当悪いと思う。
本当に「わざわざ足を運ぶ」という感じ。
逆に、それゆえに近藤氏の書いているように「祝祭空間に入っていく」過程が楽しめるし、日常空間とは切り離された異空間を楽しむことができるのだと思う。
長くなってきたのでここらでいったんブレイク。
←黄色がテーマカラーのこんぴらさん。
絵本 夢の江戸歌舞伎
クチコミを見る
この本おすすめ。歌舞伎小屋の仕掛けなんかが描いてある絵本。すごいワクワクする。
都市と劇場の関係において、伝統芸能を永田町の、最高裁判所の隣にある国立劇場で見る、というのは何やら奇妙な気がしたからだ。
近代以前は都市の外に追いやられていた劇場は、「国家」という概念の誕生によって、演劇と国家のアイデンティティが結びつく考えが生まれることで、街の中心にNational Theaterがつくられることになる、という変遷は国を問わないと学生のころ授業で習った。
国立劇場はまさに後者だが、伝統芸能を近代の思想を背景に生まれた劇場で上演することは、どのような強み・弱みを持つだろうか。
これを現存する日本最古の劇場といわれる金丸座（こんぴら歌舞伎）と比較して考えたい。
金丸座は香川県の金刀比羅宮（こんぴらさん）のすぐ近くにある劇場。
まず、近代以前の劇場について、近藤 瑞男氏の「都市と劇場」で述べられていることを要約すると、以下の通りである。
芝居というのが農業を基盤とする封建社会において、生産と全く結び付かないものであり、有効歓楽の場、諸悪の根源である「悪場所」として蔑視されていた。
それゆえ歌舞伎の上演は京・江戸・大坂の三都市限定で、芝居小屋の建設は一定地域にのみ許可されていた。
悪場所として蔑視され、都市の外に追いやられることで、その娯楽空間はより日常空間から引き離され、逆にハレとしての空間の輝きを増すことになった。
すなわち異空間としての日常空間との差別化が行われ、独特の芸術・文化の発信源となった。
金丸座も非日常空間にあることは間違いない。
江戸時代は金毘羅参りは伊勢参りに次いで人気で、庶民の憧れだったそうだ。
近藤氏は芝居町は「川」「河原」「橋」「船」と深く関わっていたといい、たとえば橋であれば、
『「橋」は「端」であり、「日本の橋は、二つの世界を分け隔てる空間」（「橋と日本人」上田篤、岩波新書）で、日常空間と異空間を隔てる「橋」を渡ることで、祝祭空間に入っていくのを確認する。』
と書いている。
金刀比羅は芝居町ではないけれど、「船」でこんぴら参りに来た人が多かったのは、今もJR琴平駅前に立つ「高燈籠」という大きな高い塔が、船で来る人のために明かりをつけ、目印となっていた、という逸話からも窺うことができる。
このことからも金丸座は「非日常空間」であることが分かる。
アクセスも、石段を上って、左に曲がり、坂を上っていくと見えてくる、という感じ。
歌舞伎座よりも質素な外見だけれど、やっと辿り着いた！という感じと、役者の名前の書かれたのぼり（右側）が気分を高揚させます。
中に入るとこんな感じ。まさしく祝祭空間！が目の前に広がります。
花道への出入り口から足を踏み入れます。
客席は升席。飲み食いが出来る。
でもすっごい狭い。
提灯がお祭りっぽさを盛り立てている気が。
都心にある劇場やホールは、駅からのアクセスがよくて足を伸ばしやすく、逆にそうでないところにあると「立地が悪い」などと評されがちだが、金丸座に実際足を運んでみると、立地の面からいえば相当悪いと思う。
本当に「わざわざ足を運ぶ」という感じ。
逆に、それゆえに近藤氏の書いているように「祝祭空間に入っていく」過程が楽しめるし、日常空間とは切り離された異空間を楽しむことができるのだと思う。
長くなってきたのでここらでいったんブレイク。
←黄色がテーマカラーのこんぴらさん。
絵本 夢の江戸歌舞伎
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この本おすすめ。歌舞伎小屋の仕掛けなんかが描いてある絵本。すごいワクワクする。
