・前置き
今回の記事はほとんど愚痴と昔話で、尚且つ主観や独自研究も含んでいます。
あくまで話半分くらいに聞いてください。 
 
 唐突な話だが、みんな洋画劇場は好きだろうか?俺は大好きだ。子供のころ、毎週末に放送される洋画劇場を楽しみに待っていたし、アクション映画やSF映画が放送された時は楽しんだものだ。TV版の吹き替え、映画解説、全てを見終わった時の「ああ、週末がこれで終わるんだな」という寂しさ、そして来週放送のラインナップを楽しみに待ってまた次の週へ……こんな経験をした映画好きはどれくらいいるだろうか?たぶん、大体の人が経験した事があると思う。
 でもそれは子供のころの話だ。時は流れ2015年現在、洋画劇場のスタイルは大きく変わってしまった。
 毎週のように邦画が放送され、時にはバラエティやドラマスペシャルが流れる始末。盛隆を極めたあの時の洋画劇場は今や存在しない、地方のローカル局が深夜に放送する洋画枠、さらには都心部限定で見る事が可能な午後のロードショーが、その最後の洋画劇場の砦として孤軍奮闘している。
 だが、洋画劇場は死んでしまったのだ。


・緩やかに死んでいった洋画劇場文化
 終わりの始まりは2000年代に入ってからだった。
 当時は都心部ではなく地方住まいで、まだ小学生から中学生ごろであったが、この頃の洋画劇場は前述のように活気があった頃だった。伝説的番組である木曜洋画劇場は無かったが、週末になれば金曜ロードショー、ゴールデン洋画劇場、日曜洋画劇場という「三種の神器」とまではいかないが、それに匹敵する勢いの黄金番組が存在していた。放送ラインナップは80年代から90年代にかけての映画であり、どの局も名作やB級含めて、いろいろな映画を放送したのだ。
 レンタルビデオの料金がまだ高くて映画館も無かったこの頃、すばらしい洋画の時間を提供した。名作「ターミネーター2」「インデペンデンス・デイ」といった作品をみたのをよく覚えているし、ちょうど土曜が休みになり始めた時代だったので、少年時代の週末のテレビライフを彩るすばらしい時代の一端を垣間見れた時代だったのである。
 だが、終わりの始まりは唐突にやってきたのだ。
 まず始まりは「ゴールデン洋画劇場」の死だった。土曜日夜9時の洋画劇場の看板タイトルであり、2001年の9月29日、ついに息絶えた。
 正確には「ゴールデンシアター」としての再出発であり、単に番組タイトル名が変わるだけであったが、2年後にあたる2003年9月27日、フジテレビは「ゴールデンシアター」を廃止させ「プレミアムステージ」へと変更した。
 今度ばかりはタイトル名が変わるだけではすまなかった。ドラマ特番とバラエティという、俺たちが望んでいない番組がねじ込まれたのだ。フジテレビとしては「洋画以外にもいろいろな番組を放送する枠である」とアナウンスがあったが、洋画の放送頻度は極端に低下し、現在では一年に数本、果ては片手で数える程度まで洋画の放送は減少してしまい、事実上絶滅した。
 土曜の洋画劇場が息絶えた事はショッキングであった。だが、時代は緩やかな死を洋画劇場へもたらしていく。
 金曜ロードショーはいつものように放送を続けたが、時折、ドラマスペシャルなどが放送され、望んでいる洋画が放送されない日も増えていった。また、スタジオジブリの放映権を持っている金曜ロードショーはアニメも放送しており、邦画タイトルも混ざるなど、一概に洋画漬けではない番組へと緩やかに変貌を遂げて行った。
 そして、何よりも俺たちを失望させたのは日曜洋画劇場だった。
 週末の終わり、洋画劇場の有終の美を飾る最後の枠こそ、この日曜洋画劇場であったが、2000年代の後半から事態はゆっくりと悪い方向へと向かっていく。洋画劇場を銘打ちながら、日曜洋画にゆっくりと邦画が侵略をしてきたのだ。
 そればかりではない、邦画どころかバラエティ、ドラマ特番が侵攻をはじめ、洋画の放送頻度は日に日に少なくなっていった。洋画好きにとって最悪の敵となったのは、テレビ朝日の自社製作ドラマである「相棒」シリーズの劇場版であった。その放送回数は十数回を超え、ただでさえ少ない映画の放送回数を逼迫していったのだ。
 名実ともに邦画劇場となった日曜洋画は、ついに2013年に日曜エンタ・日曜洋画劇場として改題された。淀川長治氏も草葉の陰でお怒りになっているだろう。
 2010年代からは、それらの洋画劇場衰退期はさらに加速の様相を呈していく。2013年にはTBSが「水曜プレミアムシネマ」と題した洋画劇場を送り込んだが、わずか1年でその幕を下ろした。2010年にはテレビ東京の洋画枠であり、長年親しまれてきた木曜洋画劇場から発展した水曜シアター9が放送を終了したのだった。
 あとは知ってのとおり。洋画劇場は息絶えた。いや、まだ洋画こそ放送しているし絶滅したと思ってない人たちもいる、だが、かつての洋画劇場の跡地には昔の栄華の残り香はちっとも残っていない。
 この文化が自然に息絶えたとはちっとも思っていない、そればかりか、殺されたものだと思っている。
 では、誰がこの文化を殺したのか?

・皆が洋画劇場を殺した
 洋画劇場は殺された。その主たる犯人のひとつは、テレビ局だ。
 かつての洋画劇場全盛時代が過ぎ去り、2000年代には視聴率や予算という壁がテレビ局に襲い掛かった。また、この頃からバラエティやドラマと言った簡単に作れる存在が、洋画劇場という世界を揺るがし始めたのだ。その始まりが、フジテレビによるゴールデン洋画劇場の抹殺にあると俺は思っている。洋画を放送する枠をつぶせば、その分、バラエティやドラマで視聴率が取れる――コンテンツ不足の時代に採用された映画という枠が、今や他のコンテンツのための生贄として差し出された。
 さらには、邦画の大規模な侵攻も拍車をかけた。こと、自社製作ドラマの劇場版という存在はテレビ局には大いにウケた。数字の取れるドラマの劇場版を流せば、それに越した事はないからだ。同じように、映画に興味のない人間を引き入れる為にアイドルやタレント主役の邦画を流すという風潮もそれに拍車をかけた、それを大規模にやりがったのが、ご覧のとおり日曜洋画劇場である。
 さらに、全盛期には放送されていたB級映画やホラー映画・スプラッター映画も排除され、放送される映画に上限が見え始めた。それらの存在を悪影響と見なす連中からの抗議を回避するために、放送される洋画にも制限がかけられはじめ、さらには同じような映画が何度も何度も何度も放送されるという時代が到来したのもまた事実である。「トランスフォーマーシリーズ」や「ハリー・ポッターシリーズ」などがその代表例であり、同じようなシリーズ作品が短いスパンで来る事により、ラインナップが限られていきそれを見限る洋画好きも増えてきた。テレビ版のみで聴ける吹き替えも、吹き替え収録のコストの高さから全く作られなくなり、さらに洋画好きを離れさせる要因にもなった。
 また「テレビ離れ」もそこに拍車をかけていき、テレビ自体を視聴しないという方向性が、それらの悪循環を加速させたのでは?と言えなくも無いのだ。
 そして、インターネットとレンタルビデオの発達もそれらに洋画劇場の衰退に加担したとも言える。
 インターネットで提供されるコンテンツはテレビを遠のかせる事は明白であり、ましてや2000年代中期からは動画投稿サイトという、テレビを潰し得るコンテンツが流行り始め、面白いものはネットで見るという時代がテレビそのものを叩き潰し、同時に洋画劇場をも叩き潰したと言える。ネットで動画さえ見れば、テレビを買ったりアンテナ線をつなげる必要すらないのだ。
 さらには、2000年代にVHSが潰え、DVDが台頭してきた事も洋画劇場を殺すに至る要素となりえた。DVDは安価で、家庭にホームシアターを誰でも簡単に作れるという夢のようなソフトであったし、それさえあればわざわざテレビで放送され、カットとCMが入った洋画劇場を見る必要も無いし、見たい作品を見たい時に見れるという長所があったのだ。また、レンタルビデオの価格もDVD導入や他社との競合でぐっと安くなった。ちょっと小金を出せば好きな時に好きな物が見れる――その便利さが洋画劇場を潰したのだ。
 2000年代に入ってから急速に発展していった技術やシステムが洋画劇場を殺す要因を作り、テレビ局がまず先に洋画劇場へ致命的な一撃を、それも二度と立てないような深い傷を負わせた。そして、ユーザーが新しい選択肢に乗り換えて見捨てた事で、洋画劇場は死んでしまった。
 俺たちが殺した、とも言えるのだ。


・洋画劇場の跡地の上で
 便利な技術やシステムは、捨て去るのが難しい。
 誰でも安価にいつでも映画が見れて、懐かしの洋画劇場の吹き替えを収録したソフトも続々と発売され、ソフト市場が潤いつつある昨今「別に洋画劇場は無くて困らない・でもあったらいい」という立ち位置になってしまった。廃墟と化した洋画劇場という跡地しか、今の時代には残っていない。
 もちろん、洋画劇場は死んだが、その意思を受け継いだ番組は細々と深夜枠やBS放送、地方ローカル局番組として今でも存在している。だが、ゴールデンタイムを賑わせ、B級映画や名作映画がドンドン放送されていたあの頃は、もう存在しないのだ。
 時代が変わってしまったのだから、在りし日の栄光として向き合うしか俺たちはできない。それでも、まれに洋画が放送されると気になって仕方がないし、仕事中でも「家に帰って、テレビを付けて見ていたい」と思う事が多々ある。結局のところ、洋画劇場は消えてほしくないというのが本音なのだ。「殺された」とまで書いておきながら、そんな気持ちしか沸かない。「バトルシップ」が放送された時は、素直に楽しかったし、あの頃が帰ってきたようで、泣いた。
 今の日本は、洋画に対してとても厳しい。クソみたいなタレント吹き替え、バカのひとつ覚えのような幼稚な宣伝、規制や、果てに世界最遅公開というありがたくない事づくめの世界になってきているし、映画文化そのものを叩き潰すような時代が訪れている。
 だからこそ、テレビの洋画劇場が復活してほしい、そうとも思ってしまうのである。
 ふとテレビを付けたら面白い映画をやっていてついつい見てしまったという嬉しいアクシデント、思わぬ名作との出会い、子供たちに「洋画」を教えるという映画好きのゆりかご、そう言った世界を提供してくれる洋画劇場の復活こそが、今のクソみたいな日本の洋画世界を活気付かせてくれる一撃になるのでは?そう思わずにはいられないのである。