2013年 イギリス・オーストラリア映画
 
復讐と贖罪に向き合う男たちの姿を描く傑作

 あらすじ……鉄道好きの男、エリック・ローマクスは鉄道が縁で出会った女性、パトリシアと結婚する。順風満帆な結婚生活が始まったものの、エリックは第二次大戦中、シンガポールで日本軍の捕虜となり、タイ・ビルマ間の泰緬鉄道建設という過酷な労働に従事させられ、更に拷問を受けた過去からPTSDに悩まされ、やがて2人の関係にも影響を及ぼし始める。そんな中、エリックは自らの拷問に関わった通訳の日本人将校、永瀬が存命であると知る。復讐心や過去へ決別するべく、エリックは永瀬が暮らすタイへと向かうが……

 元イギリス軍人で、2012年に死去したエリック・ローマクス氏の原作「泰緬鉄道 癒される時を求めて」(原題 The Railway Man)の映像化作品。あらすじと著者名を見て判る通り、本人が実際に体験した話を元にしたノンフィクション作品であり、通訳の憲兵隊士官である永瀬隆氏(2011年没)も実在人物である。
 こぼれ話であるが、今作の舞台背景となる泰緬鉄道建設は、かの名作「戦場にかける橋」の題材となったあの舞台である。他にも「エンド・オブ・オールウォーズ」(同映画にも永瀬隆氏が登場人物として出てくる)が同舞台をモデルとしているので、興味がある方は2本とも見ておけば舞台背景をより深く知れるかもしれない。
 戦争映画ではあるが、戦闘シーンは殆ど無く、PTSDに苦しむ退役軍人の苦悩という1980年代=今と、そのPTSDの元となった捕虜収容所での虐待事件が主題となる1940年代=昔の二つの時系列の話が交差しながら展開していくシリアスドラマとなっている。題材が暗そうなので倦厭する人も多そうだし、実際に暗い映画なのだが、これがまた凄い映画だ。
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(画像上 主人公エリック。PTSDに悩まされる鉄道好きの退役軍人) 
 戦争時の虐待によるトラウマを抱えた元兵士の男が、自らが受けた拷問によるトラウマに苦しみ、そして復讐と向き合っていくという重たい内容であるが、戦争映画に見られる反戦というテーマを主題にするのではなく、戦争の根底にある憎しみの連鎖は断ち切れるのか?という疑問に対して答えを見せた一つの作品である。復讐を携えたエリックの決断や、1人生き残った元日本兵永瀬の心境とは……そういった登場人物のドラマを交えながら、この映画はエリックの重要な決断と明るい希望を残して終わらせている。それが実に素晴らしい。
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(画像上 捕虜となり日本軍からの尋問と拷問が……)
 物語の流れはやや性急な部分もあったりするものの、今と過去を繋げながら、戦争時の収容所で一体何が行われていたのかという核心に迫っていく展開は見事であるし、その間に繰り返される登場人物の駆け引きや、エリックと永瀬が長年の時を越えて対面した時の緊迫感あるシーンなど、息を呑む展開も用意されているため、見ごたえはかなりあるので、劇映画としても魅力をちゃんと兼ね備えているのも良かった所である。
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(画像上 憲兵隊の通訳で、因縁深き男との時を越えた対峙。緊迫感が凄い)
 また、キャスティングに関してもかなり良い映画である。主演は実力派俳優のコリン・ファース、彼を支える献身的な妻役としてニコール・キッドマン、主人公の戦友役にはステラン・スカルスガルドを据えるという豪華な布陣。更に、日本側からは真田広之が出演している。他にも若き日のエリックと永瀬を演じる俳優にジェレミー・アーヴァインと石田淡朗を配役しているが、これまた違和感の無い配役であり、すべての俳優の名演や駆け引きがドラマを良い物にしている。
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(画像上 ラストシーンは泣ける)
 捕虜の虐待、戦争犯罪、復讐、そして罪を許すという決断……と重たいテーマを題材にした考えさせられる作品であるし、決して軽い映画ではないものの、泣ける結末が待っている良い映画である。