1988年 アメリカ映画
 
ゾンビ×刑事アクションの異色映画

 あらすじ……破天荒な刑事コンビのロジャーとダグは、連続して発生する強盗事件を追っている最中に何発撃たれても死なない強盗との銃撃戦に巻き込まれる。2人は何とか強盗を倒すが、浮かび上がる不審な点を捜査していくうちにある製薬会社に不審な動きがありと知り、捜査へ向かう。だが、謎の男との格闘戦の最中、ロジャーが死んでしまう。悲観にくれるダグだが、製薬会社の中に隠された死者蘇生装置によりロジャーはゾンビとして復活する。身体が完全腐敗するまでのタイムリミットが迫る中、ロジャーとダグは事件の黒幕を追って捜査を続けるが……

 ターミネーター、ランボー2、コマンドーなど多くの大作映画の編集担当で知られるマーク・ゴールドブラットの数少ない監督作品の一つ(もう一つはドルフ版パニッシャー)。主演に「ザ・グリード」や「野獣教師」シリーズのトリート・ウィリアムズ、コメディアンのジョー・ピスコポを迎えた唯一無二と言っても差し支えないゾンビホラーコメディ刑事アクション映画である。何じゃそりゃと言わんばかりのジャンルだが、どう表現してもこうとしか言いようがない不思議な映画である。
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(画像上 毎回ゴリラみたいなツラのジョー・ピスコポで笑う)
 組み合わせの妙が光る映画であるが、意外にも映画のプロットとしてはそれなりに拮抗しているので悪くはない。刑事ものお決まりの捜査や銃撃戦に、永遠の命を手に入れようとする黒幕たちの存在、そしてゾンビとの死闘、人体破壊のショッキングシーン、主人公たちの掛け合いやプラックな笑いを含むコメディ要素や終盤のどんどん人が死にまくるシリアスな展開など、1本にふんだんな娯楽のエッセンスを詰め込もうとする意欲的な姿勢が伺える。
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(画像上 死体組成装置でカムバック!ただしそのうち腐ってまた死ぬ)
 ただまあ正直に言えば1本の映画にしては色々と要素を詰め込み過ぎであるし、実際そのような感想も否めなくはない。90分という尺では編集が追いつかなかったプロットだったのか荒削りな部分もちらほら見られる。逆にこれが2時間映画とかだったら、却って冗長になっただろうし、そこらへん作り手が匙加減に苦戦したと思えるような結果に終わっているのが残念な所だろう。監督は編集マンだしその辺どうにかならんかったものか……
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(画像上 ゾンビだが銃も使う。どっちかと言うとブゥードゥーのゾンビに近い?)
 とは言え楽しい映画ではある。刑事アクションとホラーの2つを楽しめる部分や、特殊メイクや特殊効果をふんだんに盛り込んでいるし、トリート・ウィリアムズとジョー・ピスコポの掛け合いも(吹き替え版なら)見ていてかなり楽しいし悪趣味な笑いもかなり詰め込んであり黒いユーモアが好きな人には楽しめる。テレビ放送でカルト的な人気が出たのも頷ける。最後の掛け合いも完全な下ネタギャグながら文字通りのゾンビコップとして死闘を終えた男たちが死をも笑い飛ばして死んでいく勇壮なオチだし、結構気に入ってる。
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(画像上 名優ヴィンセント・プライスもちょっと登場する)
 昔はテレビ放送とVHSのみでしか見る事のできなかった幻の作品だが、近年のソフト化ブームに乗ってようやくDVDとBDが発売されて日の目を見た事で誰もが楽しむ事に出来るようになったのはすばらしい事だろう。ソフトには秋元羊介と江原正士の名声優2人が主役コンビを吹き替えた良質の日本語吹替が収録されているので、是非ともそちらで古き良き洋画劇場のノリで鑑賞してみるのがオススメだろう。