2015年 イギリス映画
 
マナーが人を作るとか言いながら人をボコボコにする映画

 あらすじ……世界のどの政府機関にも属さない秘密諜報機関キングスマン。そのエージェントがある事件の調査中に殉職する。キングスマンのエージェントであるハリーは調査の引継ぎと後任エージェントのスカウトを行い、かつて共に戦い自分を庇って殉職した男の息子、エグジーをキングスマンへとスカウトする。ギャングの義父のせいで荒れた生活を送っていたエグジーは、ハリーと共にエージェントの道を歩み、類稀な才能を開花させながらスパイとして成長していく。一方で、頭のイカれた大富豪ヴァレンタインが恐るべき人類滅亡計画を実行に移そうと企んでいた。世界規模で進む陰謀にハリーたちキングスマンは立ち向かっていくが……

 キック・アス、レイヤー・ケーキなどの作品で知られるマシュー・ヴォーン監督が再びDCコミックとタッグを組んだスパイアクション映画。2015年は「007スペクター」「コードネーム・アンクル」と大作スパイ映画が次々と公開されたが、今作はそんな中でも飛びきり異色とも言えるスパイアクション映画に仕上がっている。主演は「英国王のスピーチ」「裏切りのサーカス」のコリン・ファース、今作で主役に大抜擢された新人俳優タロン・エガートン。アメコミの重鎮マーク・ミラーと「ウォッチメン」の作画を手がけたデイヴ・ギボンズのタッグによる原作コミックの映像化である。

 スパイ映画と言えば、最近は奇想天外なガジェットや荒唐無稽な設定を極力廃した、ジェイソン・ボーンシリーズやダニエル・クレイグ版007のようなリアル路線ものが多いが、今作はかつての007……特にロジャー・ムーア時代の「ムーンレイカー」あたりのようなハチャメチャな路線を踏襲したかのような作品になっており、ド派手かつ凄まじいノリのアクション超大作に仕上がっている。

 劇中でも触れられた通り、マイ・フェア・レディのような「社会の底辺にいた人たちが階級や地位の壁を飛び越えてのし上がり成長していく」という物語であり、若手=主人公エグジーとそれを見守る師匠=ハリーという構図になっており、意外と話の骨組みはオーソドックスで、IT富豪の人類滅亡(救済)計画を阻止していくいかにも往年のスパイ映画的な展開も相まって王道的ではあるが、付随する要素がとにかくキレッキレで見ていて超楽しい。

 秘密諜報機関キングスマンの超テクノロジーやスパイガジェットの素晴らしさや、人を凶暴化させ殺し合わせる洗脳電波(それも携帯やPCから鳴る)も凄いが、パリッとカッコいいスーツを決めた紳士のスパイがバンバン悪党をぶっ殺しまくる展開に、チラ見せながらも包み隠さないキレッキレの暴力描写、更には終盤の下劣かつ凄まじく楽しい死のオンパレードなど、これでもかと黒いユーモアとアクションと中二心をキュンキュンさせる設定の塊を豪速球でブン投げてくる侮れない内容に仕上がっている。

 キャストも豪華で実に楽しい。イギリスの実力ある俳優を多く取り揃え、新人から抜擢されたタロン・エガートンや、イギリスの名優コリン・ファースに「裏切りのサーカス」でも競演し存在感を見せ付けたマーク・ストロングと言った配役は無論の事、マイケル・ケインという超大御所も参戦。完全にダークサイドに落ちたワクワクさんにしか見えなかったサミュエル・L・ジャクソンもIT富豪の悪役をノリノリで演じきっていたし、義足の殺し屋ガゼル役のソフィア・ブテラも可愛いかったりと至れり尽くせりの布陣で全員が映画を盛り上げていた。あとマーク・ハミルもいた。
 
 大雑把でアバウトなノリながらも細かい所で伏線が効いてたり、様々なロケーションでの戦いやスパイ映画あるあるな要素を万遍なく放り込んだ新しいスパイ映画シリーズ作品となる傑作ではあるが、やはりマシュー・ヴォーン映画独特のノリや、あの下品と悪趣味の塊のような展開(俺は大好きだったけど)が人によっては受け付けないかもしれないが、娯楽大作として申し分ない、いや、それ以上のお気に入り映画である。続編にコリン・ファース出てくれないかな、いややっぱり無理か。