1993年 アメリカ映画 未DVD化作品

 今年のサマーキャンプはダニ地獄で決まり!

 モンスター映画というジャンルにおいて、昆虫が主題になる事は結構多い。それらの場合、大抵はゴキブリだのクモだのが突然変異で巨大化したり、遺伝子操作でとんでもない進化を遂げたりする場合があるのだが、この映画に関しては凄まじい昆虫を題材にしてきた。ダニである。

 あらすじ……自閉症や登校拒否児などを集めたサマーキャンプが行われ、少年少女一行は篤志家のチャールズに率いられカリフォルニアの山奥にあるキャンプ場へと辿り付く。一行は楽しくキャンプを始めるが、その一方で、森の中で大麻栽培をしているボンクラ連中が垂れ流した廃液でダニが巨大・凶暴化。キャンプ場の一行にダニ軍団の魔の手が忍び寄り始める……

 あらすじの通り、主役はキャンプを主催するオッサンで、パッケージにもそれらしい表記があるのだが、物語の主役はメガネのナード風な少年のタイラー(演 セス・グリーン)である。登場人物が全員中学生かそこらくらいの子供なので、死傷率は最低限、悪人は死ぬという安心構図の娯楽モンスター映画に仕上がっている。
 登場する巨大ダニは、「常識的にありえないだろ!」と「いや、コレぐらいのサイズならいてもおかしくは……」の中間に位置するサイズで造形も粘液ベトベト&良く飛ぶ&大量に襲ってくる、と気持ち悪い要素を上手いこと盛り込んでいる。最後に至っては大盤振る舞いと言わんばかりに人間サイズの超巨大ダニが暴れまくったりする。ちなみに巨大化原因はよくある廃液系なのだが、「大麻栽培組織がばら撒いたステロイドの廃液」という一風変わった設定も持っている。
 ダニに襲われる面子だが、「自然サイコー!」を押し売りにする篤志家カップル、ナード風味の少年、ヒロイン、自閉症のアジア系少女、不良学生的なバカップル、都会派不良の黒人少年、麻薬栽培組織のボンクラトリオと良くも悪くも襲われるに相応しい連中が揃っているのも面白い。それでもダニによる死者は全体で4人のみと、この手のジャンルにしては死傷率が少ない。まぁデカくても踏み潰せば簡単に殺せる巨大ダニが相手なので妥当な生存率だろう。
 巨大化の原因となった大麻栽培団のボンクラが、自分たちだけ生き残ろうとして死ぬというお決まり展開は許せるが、個人的に巨大ダニのキャリアーになって死んだ黒人少年が実に不憫でしょうがない。
 愛犬と共にキャンプにやってきた、ナイフ持ち歩いている危ない不良少年なのだが、愛犬をダニに殺され悲観に暮れて飛び出し、ダニに襲われ朦朧としていたら大麻栽培団のボンクラに絡まれた挙句、ショットガンで撃たれボコボコにされ、ステロイドを飲んでたお陰で命からがらキャンプ場に辿り付いたら巨大ノミが体を突き破り死体はこっぱ微塵に……しかもこんな最悪な目に会ったにも関わらず、一行からはさらっとスルーされているという不遇っぷり。どう考えても脚本が黒人嫌いなんじゃねぇか?と思いたくなるような不遇のキャラだった。
 とまぁ役1名が可愛そうな事になっているが、映画全体のノリは低予算ながらしっかりとした娯楽寄りの作りだ。山火事や爆発シーン等は模型に頼っているが、ノミの卵などの不気味なビジュアルやストップモーションの活用など、よく出来ている部分は多い。90年代のB級モンスター映画としては満点を上げてもいい程の出来だろう。