ロープを知る

The Official Blog of Model Ship Builder's Club "The ROPE"

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7月8日、2回目の帆船模型教室をマイスペース銀座マロニエ通り店において開催しました。早い梅雨明けによる猛暑の中でしたが、受講者19名全員が参加しました。


 授業の前半は、前回の課題であるキールとフレームの組み上げ、べベル加工、前部・後部の内張り接着、船尾外板の組み立てまでの作業を終えた受講者の作品について、3人の講師が分担して個別指導及びQ&Aを行いました。

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全員が参加した教室

受講生の6割の方が初心者でしたが、大部分の受講者の作品はテキスト通りに製作されていました。キールに多少の捻じれがあったり、ベベル加工が不十分であったり、サイドフレームがきっちっと組み込まれていなかったり、内張(ブルーワーク)が多少ずれていたりなどのケースはありましたが、修正可能であり、まずは順調な滑り出しであったと思います。

後半は、次回までに仕上げて来てもらう外板張りの工程についての説明をしました。初めに、帆船の船体の特徴、A曲げ、B曲げ、ねじりについて説明し、次に、外板の構成、基準外板を中心に上部、シアーレールの張り方、下部のウェル、ウエル以下の外板の張り方、キールから上部へ向けての張り方などを説明しました。

また、外板の抑え方については、画鋲止めだけでなく、待ち針を使用するケースなどについても説明を加えました。初心者にとっては最初の壁となる外板張りですが、テーパ加工、B曲げ、S字カーブB曲げ、A曲げをきちっと行うこと、左右一対で作業をすることなどが重要であることを理解してもらったと思います。

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2回目を迎え、講師にも余裕の様子が・・・

外板張りは、帆船模型の多くの工程の中でも時間と手間のかかる重要な工程といえますので、次回までにじっくりかつ慎重に取り組んでもらうようにお願いしました。

初回の時はあまり質問もありませんでしたが、今回の授業では活発に質問が飛び交い、受講生の間でも会話が弾んでいるように見受けられました。今後もこの調子が継続されるように進めていきたいと考えています。
(福島 一 記)

メアリー・ローズ博物館とHMSビクトリー
 メアリー・ローズ博物館とHMSビクトリー

ポーツマスの必見アトラクションの一つが、2013年5月にリニューアルオープンしたメアリー・ローズ博物館。HMSビクトリー号の横にある、楕円形で黒色の平べったいモダンな建物の内部が博物館となっている。入場料金はポーツマス海事博物館のアトラクションとは別料金建てだが、現在は入場時間のスロット制限が解除されている。

メアリー・ローズは、16世紀の初頭にヘンリー8世によりポーツマスで建造された。
1545年、対英侵攻作戦を展開するフランス艦隊との遭遇時に沈没、1971年になりポーツマスと対岸にあるワイト島の間にあるソレント海峡の海底で船の一部が発見された。その後、発掘が進められて1982年に船体の約半分が、チューダー朝時代の多数の遺物とともに引き揚げれらた。船体の半分というのには理由があり、海底に斜めに横たわった船体の上部が海流で流され、下半分は堆積物に埋まり生き残ったというわけだ。

船体は、ストックホルムのVASAと同様な乾燥処理が続けられ、この処理が完了したのはつい最近の2016年になってのこと。博物館内部は3階建てとなっており、ガラス越しでメアリー・ローズの各甲板が見られる。また、各階に引き揚げられたチューダー朝の遺物の展示がある。乾燥ダクト類はすでに撤去されており、船体全体が良く見えるようになっているとともに、船内での生活ぶりがプロジェクションマッピングで投影もされていた。


館内風景3
館内風景1
 館内風景1

見学順路の設計も工夫されていた。順路は2階入り口→1階→3階→2階出口で、出口にミュージアムショップとカフェテリアが併設されている。特に面白いのは、最初と最後のプレゼンテーションであった。まず1545年7月19日メアリー・ローズの最期と題した ”The Cowdry Picture” c.1545の大きな拡大絵があり、チューダー朝の服をまとったガイドがこの絵の内容を説明する。

メアリー・ローズの最期の絵(絵葉書)
 メアリー・ローズの最期の絵(絵葉書)

これはショップで販売されていた横長の絵葉書だが、絵の下に『ポーツマス沖のフランスとの戦闘』のタイトルとともに番号をつけて解説している。これらをガイドがストーリー仕立てで丁寧に説明した。これがヘンリー8世、これがフランス艦隊、これがフランスのガレー船と撃ち合いをするイギリス艦、そして絵のほぼ中心に海面上に横になったマスト2本出ているのがメアリー・ローズ、周囲に溺れそうな船員と救助船といった具合だ。

ただし、メアリー・ローズの沈没した理由は諸説あってはっきりとしていない。追加で搭載した予備の大砲の重さに加えて艤装が重すぎ、ガンポートの位置が喫水近くなり過ぎた、はたまた予備の兵隊を積み過ぎて船の安定を欠いた、などなど。

説明はこれから始める館内見学を大いに盛り上げた。展示されているのは引き揚げられた船体の一部で、船全部を見れるわけでもなくよく考えられた演出だった。(訪問後で知ったことだが、初期の来訪者の中には、ストックホルムのVASA博物館のように船全体が見れると誤解している向きもいたそうだ。)

館内風景2
館内風景4
 館内風景2

館内を順路に従い廻った後の最後の展示は、その後継続された海底調査や引き揚げの様子も示すビデオ展示もあり、中身が濃い。例えば、これまでの引き揚げの様子に加えて、まだ展示がされていない船首部分のステムの引き揚げ状況などだ。加えて、見学後に購入したEXPOSEDと題するガイドブックには、21世紀の発掘と題して直面する課題も記載されていた。

現在のイギリス海軍は大型空母クィーンエリザベス(満水排水量65,000トン)を就役させポーツマス港に配置しているが、この空母のポーツマス港の出入港水路がメアリー・ローズが発見されたサイトと干渉していることだ。このガイドブックには、さる2014年にメアリー・ローズが発見された海面上に将来の水中考古学者による調査用にと新たなブイが設置されている写真が掲載されていた。意味深な写真だ。ヘンリー8世時代の最新鋭艦と現代の最新鋭空母がソレント海峡で遭遇しているのだ。

最新鋭空母クィーンエリザベス
 最新鋭空母クィーンエリザベス

ミュージアムショップ情報:

参考図書:
参考図書
MARY ROSE King Henry VIII’s warship 1510 - 45 Owners’ Workshop Manual,
Brian Lavern, Haynes Publishing 2015

英語になるが、メアリー・ローズの歴史に始まり、引き揚げから展示まで網羅的に解説しているハードカバーの参考書。本書の最後にチューダー朝時代を研究するイギリスの歴史家の言葉が印象的で、簡にして要を得ている。
The Mary Rose is the English Pompeii, preserved by water, not fire.
All Tudor life is there; it is like stepping inside a Holbein painting.

メアリー・ローズのキットモデル
Jotika が、Heritageシリーズのキットとして発売している。以下のサイトをご参照。
掲載されている写真は白黒だが、クリックするとカラー版の映像を見ることができる。
http://www.jotika-ltd.com/Pages/1024768/Heritage_Front.htm

参考
博物館公式サイト https://maryrose.org
展示解説は英語のみ

博物館の前で館員と記念撮影
 博物館の前で館員と記念撮影

(2018年6月 栗田正樹)


1716年創業のパブ The Dolphin
 1716年創業のパブ The Dolphin

ロンドン近郊から1泊2日でポーツマスに出かけました。第一日目のお目当はHMSビクトリーとその博物館、ならびに英国海軍博物館の見学です。HMSビクリトリー関係展示をほぼ丸1日かけて巡回をしました。HMSビクトリーの大規模保存修繕プロジェクトについてレポートします。


訪問のまとめ

最初に第一日目の訪問の総括をしてしまうと、大雑把に2点。
  • ビクトリーは2011年から向こう15年をかける大規模保存修繕作業途上にある。これも資金の調達進捗次第のところもありそうで、マストやリギングが装備されたHMSビクトリーの勇姿はしばらくの間は拝観できないということ。
  • ただし、船体の塗装については専門的な調査の結果を踏まえ、既に1805年のトラファルガー海戦時代の塗装色に改められている。「黄色」ではなくどちらかというと「肌色」と、「黒」というより「ダークグレー」に再塗装されていた。私はHMSビクトリーの模型を制作する技量もなく、そもそも取り掛かる気力もないが、これからチャレンジを考えているモデラーにとっては参考になる。


大規模修繕計画の概要

ビクトリー展示の現況
 ビクトリー展示の現況

HMSビクトリーの周りには立て看板で計画の概要が簡単に掲示されているが、その横にあるビクトリーの博物館には、大規模修繕計画の概要が結構詳しく開示解説されていた。

HMSビクトリーは、2012年に英国海軍より保存財団に移管されるとともに、その際に緊急に対処を要する分野として、雨漏れ/腐食/マストのぐらつき/船体構造の歪が指摘されている。保存財団はこれらを真正面から受け止め、向こう100年の維持保存を担保する大胆なプロジェクトの立ち上げを資金確保とともに動き出している。

船体仮支柱の状況
 船体仮支柱の状況

展示を見ると、かなり突っ込んだ診断が行われており、船体はレーザースキャンで症状を把握している。1920年以降合計22箇所の支柱で支えられた船体の歪みが明らかになっている。解説では、そもそも洋上での運動で船体の重力の分散具合が変化した結果船体が膨んでおり、雨水のアッパーデッキへの浸透とプランキングの腐食が進行していたことが原因だとしている。展示を見ると、これからもっと大変な工程があることが、修繕作業の大項目とその工程表から見て読み取れた。

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(左)修繕前のスキャニング (右)船体の歪みを示すパネル

大規模修繕のプロジェクトは期間15年、予算規模27百万ポンド(為替レートを現在の1ポンド150円で換算して40億円)、現在のようなオープンエアの展示で、まずは少なくとも向こう50年間は小修繕を加えながら持たせるという意欲的なもの。また、マスト/ヤード/リギングの全取り外しは、現在のポーツマス展示以降初めてとなる。(従い、HMSビクトリー目当ての来訪者の減少は覚悟の上とも言える。)

大規模修繕は大きく4段階の順番で施工される。第1段階 スターボード側 → 第2段階 船首部分 → 第3段階 ポートサイド側 → 第四段階 船尾側。並行して各段階の工程表が掲示されていた。それぞれの段階で詳細な施工分野が検証され、完了を経て次のステップに入るという計画になっている。

4段階の大規模保存修繕計画表x-horz
 4段階の大規模保存修繕計画表


塗装については、1920年にポーツマスに展示された時には1820年代に使われたクロームイエロー色としたが、このカラースキームは1990年代亜鉛成分が使用禁止となるまで使われたが、それ以降イエローオレンジ色の塗装に改められた(この色がこれまで我々モデラーのお馴染みの色合い)。

これを現物の塗装層を分析し、1805年前後の色、展示解説ではpale yellowと書いてあったが、日本語で言えば「肌色」に改められた。同時にお馴染みの黒色も、ダークグレーに改められた。

塗装層の説明パネル
 塗装層の説明パネル

さらに解説では、保存の議論としてはお隣のメアリー・ローズのように「船を建物で覆ってしまい、空調が効く室内展示」も検討されたとあった。これはさすが資金的なハードルがあったのであろう。続く解説では、「これから10年ごとに温暖化の影響や大規模な気候変動の変化を見ながら見直す」とあった。

歴史的なアイコンを長期的な視野で後世のために維持保存するという強い意志と、資金を何とか確保するという覚悟に対し、強い感銘と尊敬の念を抱いた訪問となった。UKというのはすごい国だ。


余話:ポーツマスのパブをはしご

夕方の早い時間にホテルから徒歩でパブ巡りに出かけた。1件目は小振のパブで日本のスナック感覚だったが、バーテンダーというかママは化粧がやたら濃い女性で、迫力があった。怖そうな感じで生ビール一杯目で失礼。

2件目はポーツマスで一番古い1716年創業のThe Dolphinというパブ。すぐに目に飛び込んできたのが「お犬様歓迎」のサインとカウンターに下げられた各国の国旗。サッカーのワールドカップもあってのことだ。もちろん我が日章旗もあった。

パブ内部 犬歓迎のサインと国旗の掲示
 パブ内部 犬歓迎のサインと国旗の掲示

同行したイギリス人から「どこかの国の国旗が欠けているが分かるか?」と問いかけられた。答えは「サウジアラビア」で、「彼らは酒が飲めないからさ」だそうだ。イギリスのユーモアである。暖炉の前にはお犬様用のボールが無造作に置いてあった。これもユーモアか。

パブでは軽食も楽しめる。定番のフィッシュ&チップスはボリュームあるが、ポテトフライは本物。生ビールを試したが、なぜかイタリーのラガーが飛び切り喉越しが良かった。満足満足の一日だった。

(2018年6月 栗田正樹)















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