ロープを知る

"a man is no sailor until he learns the ropes"

会場風景hd


第45回展は2023年7月16日から18日までの3日間、梅田スカイビル タワーイースト36階にあるスカイルームで開催され、ザ・ロープから5名の会員が訪問しました。報告者は17日の午後に会場を訪ね、当日夕刻に開催された懇親会にも当会安藤会員、岩本会員と一緒に参加し、楽しい一時を過ごしました。

今回の展示は34作品と絵画2点です。作品では、製作中のものが11点、2023年の新作が7点、これに2008年から2022年までに製作された会員自薦作品が加わり、期待通り見応えがある展示会でした。

ザ・ロープオーサカは1977年に設立されたザ・ロープに次ぐ老舗の同好会で、現在の会員規模は関西地区のモデラー41名で構成されてます。毎年7月の展示会と毎月第4日曜日に例会を実施するなど活発な活動を行なっています。

オーサカ第45回展目録表紙


JSMCCの会員クラブではどこも会員の高齢化に直面してますが、ザ・ロープオーサカでも毎回展示会会場で新会員の勧誘を行なっています。模型教室はザ・ロープと同じチャールズ・ヨットのキットを教材に1年かけて完成するプログラムを実施しているとともに、今年は帆船模型作りの楽しさをアピールするために、バイキング船のクリンカー張りの様子と、来場者にシュラウドにラットラインを張る体験を楽しんでいただく企画をされてました。毎年新しいアイディアを出されています。

ザ・ロープオーサカの展示会は、毎回訪問するたびに学ことが多くまた新たな刺激を受けます。紙面の都合もありフルカバーはできませんが、注目した模型を中心にレポートします。

まず、今年の展示会の目録カバーで紹介されたのは片岡さんのHMS Speedy (Vanguard Models, 縮尺1/64)の写真です。銅板張りに苦労されたとのことですが、sheathingの表現は大変丁寧な仕上がりでした。

#1 Speedy Coppering

中谷さんはネイビーボードスタイルで製作中のHMS Tygerを、右舷と左舷を別々に製作している様子を展示していました。このような展示スタイルは新鮮でした。中谷さんが手がける模型の縮尺は1/75で統一されており、このスクラッチ作品も1/75です。手がけた作品をずらりと並べると船の大きさの比較が分かりやすくなり、スクラッチのなせる技です。

#2 中谷氏タイガー

中島さんは、製作中のペーパーモデル、Shipyardの縮尺1/72 のHMS Wolfを展示していました。中島さんは木製模型の製作では超ベテランでザ・ロープオーサカを代表する匠のお一人ですが、「Shipyardは船のことを良く知っている」が、「紙は言うことを聞かない、主材料が紙であることを心構えて取り組むと出来栄えが違ってくる」とコメントされてました。

大石会長よりも、キットの指示手順通りでは上手く行かず、2〜3隻程度練習が必要だろうとコメントされてました。紙の厚さ(0.5mmとか1mm)のコントロールに加えてスティック糊を使うなど貼り合せも工夫が必要とのことです。

#3 中島氏ウルフ

もう一人の名工である早川さんは、フランスのフリゲート艦Belle Poule(スクラッチ、1/70)を展示されました。この作品は2017年に開催された第41回展で初披露されて今回再登場です。

第41回展の様子はザ・ロープニュース第97号(2017年9月)でもレポートしていますが、この第41回展を訪問したザ・ロープ会員は、リギングのブロックでは大きさ8種類、形状4種類を自作加工するという凝りように驚嘆するとともに、船尾の彫刻にも注目しました。

#4 早川氏ベルプール船尾

この船尾彫刻は前回では上手に撮影できませんでしたが、今回は性能が多少アップしたスマホのカメラで撮影を試みました。Belle Pouleの文字が刻まれています。船尾から見た写真をご覧いただくとレリーフの小ささがご理解いただけると思いますが、ここに船名を掘り込んでいます。凝り出すとここまでやるという見本です。

#5 早川氏ベルプール船尾彫刻 (1)


ザ・ロープオーサカ名匠の金岡さんはVASA(スクラッチ、1/78)を展示されてました。この作品は2013年に初出品されたものですが、特にキットの彫刻と比較するために今回出品したとのことです。写真の通り彫刻はそれぞれ掘り込み、中が透けて見える超絶技巧です。また、外板の釘頭の処理も綺麗に整っており脱帽の一言です。

製作に際してはストックホルムの博物館を訪問するとともに、名著”Historic Ship Models”でお馴染みのWolfram zu Mondfeldが1981年にドイツのMosaik Verlagから出版した”WASA”に含まれている図面をもとに、フレーム図面から起こして製作に4年半を要したとのことです。主材料はカバ桜だそうです。製作の苦労を示す出来栄えは添付写真4枚でご覧ください。

#6 金岡氏VASA 1

#7 金岡氏VASA2 船尾彫刻 (1)

#8 金岡氏VASA3船体釘打

#9 金岡氏VASA4 船首彫刻


金岡さんは製作中のLe Requin(スクラッチ+中国のキット、1/48)を展示していました。ザ・ロープでは中国のコピーキットは公式活動では対象外としていますが、キット彫刻部品の出来栄えをご覧いただくためにご参考までにレポートします。

当初フランスから図面を購入して製作図面を起こし始めたが、元の図が手書き図面のためにCADに取り込むと誤差が大きく後戻りの連続となり、この苦労の過程で中国でキットが発売されていることを知り、以前から中国のキットの進化には興味があったので製作に挑戦してみようと考えたとのことです。レーザーカットの正確さと、添付写真にある通りNCマシンによる彫刻の細かさに驚いているとのことです。

#10 金岡氏ルカン21

#11金岡氏ルカン彫刻

ザ・ロープ会員でもある三木さんは、新作としてオスマンの沿岸交易船(スクラッチ、1/60)を展示していました。この模型には個性を感じました。

FreeShipPlans.comより入手した基本3図面のみでフルスクラッチで挑戦した作品で、当初は小型で楽勝と思っていたがハードルが高く苦労したとのことです。イスラム圏の船なので帆装の取り回しが西欧のやり方と随分異なりさっぱりわからず、自分のテクニック総出で色々と試しながら楽しんだそうです。

#12 三木氏オスマン交易船

ユニークな模型としては、田中さんの四万十セール・カヌー(スクラッチ、1/60)で、カヌーにマストをセールを付けて製作してます。この作品解説で、四万十川は四万余りの支流があるという説に加えて、アイヌ語「シ・マムタ」(はなはだ美しい)が由来との説があることを知りました。

#13 田中氏四万十セールカヌー

最後になりますが、新入会員勧誘の努力を2枚ほどの写真で紹介します。
1枚目はクリンカー張りの説明で、これはBilling BoatsのOseberg720(縮尺1/25)の船体組み立ての様子のデモです。

#14 教室生徒勧誘テーブル

2枚目は「リギング(ロープ張り)挑戦しませんか」の看板でシュラウドにラットラインを張る体験用模型を展示していました。看板の後ろには「クラブ・ヒッチ」の説明と手順を示すボードが隠れてます。
#15 リギング体験

来年も海の日を挟んで展示会が開催されると思います。炎暑になるかと思いますが、是非ザ・ロープオーサカの技巧と匠の世界を覗きにお出かけください。
(ID144 栗田 正樹)


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私はザ・ロープに入会して23年になりますが、これまでザ・ロープの素晴らしい諸先輩方にご指導を受けてきました。

独特の帆船模型感、個性、卓越した技術を持たれている諸先輩方は、私達モデラーの目標でもありました。私は、1993年製作のル・フェニックスに始まり、現在まで8隻の構造模型を製作してきました。

まだ途上の域を超えていませんが、今回の「構造模型製作講座」を通して、皆様の知識向上のお役に立ちたいと思っています。そしてこの講座を通して、皆様と共により良い構造模型製作技法の確立を実現したいなと思っています。

(土屋講師からのメッセージ)

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帆船模型を趣味に持つ者にとって、構造模型の製作は一つの大きな目標である。ザ・ロープニュース108号(2020年7月1日発行)で募集した「構造模型を一緒に作りませんか!」には予想を大きく超える22名もの応募者があった。

以来、田中さんと土屋さんは、教材づくりに追われる一方で、受講生の電動工具の保有の有無などのアンケート調査、Zoom初心者に対する試験などを経て、今日の開講に漕ぎ着けた。なかでも材料(桜材)の調達には難航し、八方手を尽くしてやっと人数分を確保したという。


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会場一番乗りは、遠方の土屋さん(静岡から)と佐藤さん(熊谷から)のお二人。定刻の1時間以上も前に駆けつけた。ベテランの佐藤さんでも、この日が楽しみで待ちきれなかったそう。




会場はJR水道橋駅徒歩3分の貸会議室『内海』。新型コロナウィルス感染予防対策として (1)会場の座席数は定員の1/2 (2)全員マスク着用 (3)入り口で消毒用アルコールと検温を徹底した。

会場には、札幌、仙台からの参加を含め21名が出席。前日のインフルエンザ予防接種で微熱のある加藤さんは急きょZoom参加に切り替え、全員がリアルタイム受講を実現した。

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講座は予定を早めて定刻の5分前からスタートした。
まず、田中さんから講義に入る前に全体工程、題材としたエルミオーヌなどの説明があった。講座開設の背景には、ザ・ロープでも構造模型を作る会員が近年めっきり少なくきて、このままでは構造模型の製作者がいなくなるとの危機感をもっていたという。

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そして、今回の講座の目標として掲げたのは(1)先ずこの講座を通して構造模型製作手法を習得する  (2)  エルミオーヌを製作することによって、最終的には自分の好きな船の製作も出来るようにする  (3)  フレーム図面がない場合に自分で図面が描けるようにする、そして最後に (4)  受講者のノウハウも加えて当会の「構造模型製作技法」を完成させたい、ということだった。

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つづいて、土屋さんから2時間にわたって、スライドとホワイトボードにより詳細に製作過程が説明。会場では早くも熱心な質問が飛び交った。
  1. 製作概要
  2. ボディプランから型板を製作
  3. フレーム組立台の製作
  4. ダイヤゴナルラインの決定と記入
  5. 船体組立台を製作
  6. スクエアフレームの製作
  7. フレームの組み上げ
  8. スクエアフレーム全体の組み立てと整形
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受講生の自己紹介では「中級講座が終わったばかりだが、こんなチャンスは逃せない」とひきつづき参加した方もおり、そろって構造模型の製作意欲満々。講座が修了する2022年の春には多数の構造模型モデラ―が誕生すると想うだけでも期待が膨む。

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なお、講義は集合講座とZoomによるオンライン講座を2カ月おきに交互に開催し、全12回を予定。その間はメールによる質問を受け付けるが、メールの内容は受講者全員が共有することにしている。

その質問メールのやりとりは、すでに翌日の21日から始った。共有されたメールのやりとりは貴重なノウハウの蓄積となり、「新たな構造模型の製作技法の確立」に寄与することになるであろう。

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目玉の1/48カティサークは佐野会員(元美術の先生)がスクラッチビルドした大作。本人がイギリスの本物を見に行って製作した芸術品で、小林会長曰く「日本一のカティサークだ」と言うのもうなづける出来栄えです


札幌帆船模型同好会の「第30回記念 札幌帆船模型展」をに9月15日に瓜生幹事と見学してきました。大通公園の隣の一等地にある「らいらっく・ぎゃらりー」で9月14日から20日まで開催されています。

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会場には、小林会長の忍路丸、大城会員のチャールズヨットのジオラマ、佐野会員の1/48のカティーサークなどが10隻が展示されていました。岡田会員の装飾に金箔を使用したバイキング船も目を引いています。

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大城さんは躍動感のある洋上模型、チャールズ・ヨットを左舷に5度傾けて帆走している様子をジオラマに


いずれも力作ぞろいで見ごたえがあり、平日にもかかわらず切れ目なく見学の方が来展されていました。小林会長に北海道新聞がインタビューする姿も見られました。

船を見た後は、北海道のおいしいもの(北海道限定札幌クラシックラガー含む)を会長、大城ご夫妻と堪能し、懇親を深めることができました。

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 (岩本和明)
【北海道新聞電子版に掲載されました】
2020-09-17 07.20.15 www.hokkaido-np.co.jp b902663e763a

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