ロープを知る

The Official Blog of Model Ship Builder's Club "The ROPE"

2013年09月

9月8日(日)に開かれた第4回目の帆船模型教室。朝夕は少し涼しくなったとはいえ、日中はまだ残暑が厳しい日が続く。

前回までの工作は外板貼りを終えて甲板の上貼り、甲板周りの飾り処理、オーナメントの塗装と接着、船台の製作、船体塗装の準備まで。半数の方が予定通り進められていた。中でも外板、甲板の釘跡付けについては講師の見本を上回る申し分のない作品もあり、本物らしい仕上がり。

まだ外板貼りの段階の方もおられたが、講師や皆さんの作品について個別に質疑を進める中で疑問点等の確認を行ったので、次回の作品に期待したいもの。焦らずじっくりと取り組んでいただければ、これから気候も良くなってくるので、工作もはかどるはず。

後半は次回の工程説明で、ラダーのヒンジ製作と取付け、外板の仕上げ塗装、ウインドラスの組み立て、バウスプリットの製作、グレーチングの組み立て、階段の組み立てまで。教室としては将来の製作の参考に外板の塗装を勧めているが、木の風合いを残したいと塗装はしない方もおられる。

予習用にテキストを事前にお渡ししているので、それぞれについての注意点、ポイントなどを説明。なんといっても次回のメインの課題は外板の白塗装であるので、テキストにある塗料以外についても参考用に紹介した。

ここでは塗装前の研磨を十二分に行うこと、それでも塗装後に粗さが目立つのでパテで事前に修正すること、また修正しすぎると近代船のようにつるつるになってしまうので好みの問題ではあるが、仕上げ塗装回数はテキストの3回をメドにして各自トライしてほしいと説明。

最後に、自作品を持って写真を撮ったが、皆さんの表情には達成感が…いや、達成感は来年3月にとっておいていただくことにしましょう。
(松原記)

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1 中華料理店VOC

ジャカルタ近郊での仕事を終えて、ジャカルタ北部のコタ地区にあるバハリ海洋博物館を訪問した。博物館は午後3時には閉館してしまうので、博物館の近くで軽食を済ませてから訪問しようと適当なレストランを探していたら、なんとVOCの看板を掲げる中華料理店が眼に飛び込んできた。

VOCはオランダ東インド会社の頭文字だが、さる2005年にザ・ロープの30周年記念行事でオランダを訪問した際に、VOCに興味を持った。ザ・ロープの企画旅行だけに、訪問先は海事関連にこだわったかなりマニアックなのものであった。オランダ東インド会社関連では、母港となったエンクハイゼンやホールンを訪問し、当時のオランダとバタビア(ジャカルタ)を往復した帆船Vatavia号(いわゆるThe East Indiamen)の実物大レプリカや、木製帆船の建造技術継承の為に現在でも帆船が建造されている造船所を見学したり、アムステルダムの海事博物館ではオランダ東インド会社関連の展示を見学したりして、関心が一層と強まり、現地でVOC関連書籍を多数購入して日本に持ち帰った。

今回は、オランダ東インド会社の本拠地として栄えたバタビアにいよいよ来たとの興奮もあり、迷わずこのレストランに入った。従業員はインドネシアの若い女性であったが、オーナーは明らかに中華系で、ゆったりと店の入口で構えていた。17〜18世紀の200年間を裏方として支えた中華系の労働者の末裔に違いない。料理はいずれもスパイスが効いて口に合い、料理人も当時の味を引き継いでいるのだろうと想像も働かせながら料理を楽しんだ。
2 中華料理店VOC店内


レストランを出て5分も歩くと博物館の看板と見張り塔が見えてくる。歩道などはなく、また道路には信号もない。強引に車の流れを手で止めながら横断することになった。道を挟み大きな倉庫がある。オランダ東インド会社が建てた倉庫で、古いものは1652年に遡り、1759年まで増改築が行われたそうだ。大量のナツメグや胡椒、またお茶や絹織物、銅や錫など交易用に保管したオランダ風の倉庫であるとの解説があった。博物館はこの倉庫を利用している。記録を見るとこの博物館は1977年7月に開館している。
3 入口 見張り塔
4 入口看板


入場料は日本円で50円、入口で料金を受付の若い女性に支払うが、切符もなく案内のパンフレットもない。ミュージアムショップもなく、ガラス棚に手製の模型が販売されていたが土産物レベルにとどまり、残念ながら訪問記念で購入する品物の販売もない。多くの欧米の海事博物館とは違ってないないずくしの訪問となったが、幸い写真撮影は許可されているので、カメラ片手にまずは駆け足で展示内容を把握し、その後に興味のある場所を選んで見学をした。開館以来維持保全に手を加えている様子もなく、ケースに入っていない模型では埃がたまったり、リギングの一部が劣化したりしていた。解説のパネルはインドネシア語と英語の併記だったが、一部日焼けもしていた。来館者もそう多くはなさそうで、博物館運営の経費面では苦しいのであろうなとの印象を持った。一部実物大のボートの展示も倉庫内で行われているが、ここは改装中で、倉庫の窓越しから見学となった。
5 受付嬢と一緒に

オランダ東インド会社やバタビアに関連した展示は豊富ではなく期待はずれとなった。精密模型もThe East Indiamenの1隻のみであったが、インドネシアの歴史的な船の模型展示は興味深かった。展示は、まず現在の漁船や一般的な船や建造の様子の展示があり、続いて歴史的な船の展示になっている。6 現在の漁船
7 現在の漁船 パネル
8 現在の漁船 パネル
9 造船風景パネル
10 造船風景パネル2
11 歴史的船展示の様子風景


歴史的な船7隻の模型の解説内容を、写真とともに紹介したい。いずれも精密模型とは違ったものだが、遺跡のレリーフから再現した模型もあった。模型工作は人類の遺産を再現する作業であると誰かが言っていたが、ジャカルタでもこのような模型を発見できて楽しい一時であった。

Cadik Borobudur
ボロブドゥール遺跡にある仏教寺院のレリーフに刻まれた船を再現している。驚くことに、2002年に実船のレプリカが建造され、シナモン・ルート(ジャカルタとアフリカのガーナを繋ぐ海の道)11,000海里を半年かけて航海したとの解説があった。この航海の記録や写真の展示はなかった。
12 Cadik Borobudur

Boat Padewakang
スラウェシ(セレベス)島の南部で、商用、漁業、輸送用に使われた。南スラウェシ州の州都であるマカッサルが交易中継港として栄え、ここで活躍した船。
13 Boat Padewakang

Boat Patorani
17世紀ゴワ王国時代の船。現在でもトビウオ漁で使われている船との解説。
14 Boat Patorani

Majapahit Ship
13〜15世紀ジャワ島中東部を中心に栄えたインドネシア最後のヒンドゥー王国であったマジャパヒト王国で海運が栄えたが、この時代に活躍した船。東ジャワにあるPanataran寺院に刻まれたレリーフから再現した模型。パネルと共に展示されている。イマジネーションたっぷりの模型。
15 Majapahit Ship パネル写真
16 Majapahit Ship

A Kind of The Traditional Sailing Ship
マレーのSiak Sri Indra Gate王国の王様の船。伝説に基づき模型として再現。制作者はさぞかし楽しかったであろうと思わせる模型。特徴はパドルと装飾にあるとの解説。
 17 A Kind of the traditional sailing ship

Boat Golekan Lete
マドゥラ島と東ジャワ島を往復した船。カリマンタンから木材を運び、カリマンタンへは塩、米、大豆、トウモロコシを運んだ。船は製作後多分虫食い状態にあるのではないかと思われる。
18 Boat Golekan Lete

Perahu Nade
スマトラ島とマラッカ、カリマンタンを往復した船。
19 Perau Nade

倉庫の様子
模型展示を終えて二つの倉庫に挟まれた中庭に出ると、倉庫の建て方の様子が分かる。18世紀に増改築が行われたが、当時の原形をとどめており、倉庫入口のアーチ型の石積みには増改築の年代が刻まれ、また屋根に通風用の扉窓が設けられいた。大変興味深い。
20 倉庫風景 1
21 倉庫風景 2
22 倉庫入口 年代記録
23 倉庫年代記録

一般的にインドネシアの建物の天井は日本と比較して高いと感じるが、これも赤道に近く熱気を逃がすための工夫ではないかと思う。倉庫内は現在でも一部博物館の事務所としても利用されているが、1階部分の天井は高くない。冷房も行われておらず、それなりに風通しが良いのであろう。24 倉庫内 現在博物館事務所

一方、博物館入口側では、倉庫と道路の間に塀があるが、この挟まれた空間に当時は金属の銅や錫が保管されていたそうだ。倉庫には、雨天から金属を保護するため、また外部からの侵入を防ぐために守衛が巡回する回廊が設けられていたそうだ。現在では設置はされておらず、回廊を支えた金具が当時のまま残っている。
25 入口付近金具
  入口付近金具

見張り塔
博物館を出て、入口の見張り塔を見学した。入場料は日本円で50円。ここからの眺望では、博物館として利用されている二つの倉庫がV字型となっていること、また、今は埋め立てられているが、当時の川の様子とともに、オランダの来航に先立ち16世紀に栄えたSunda Kelapa港が一望でき、現在でも埠頭に夥しい数の木製の船が係留されている様子が分かる。イスラム教寺院のミナレット(尖塔)も遠くに見える。
26 見張り塔からの風景
 見張り塔からの風景

Sunda Kelapa港
博物館から車で5分も走ると、駐車料金を支払えば埠頭に車ごと入場できる。埠頭内はトラック、クレーン、貨物でごった返し、道路は大型トラック1台がようやく通れる程度のスペースしかない。 木製の船がぎっしりと並び、貨物の搭載は船のフォアマストに据え付けられた簡単な揚重用のクレーンで行われていたが、能力は明らかに低く、例えばスクーターは一台ずつ吊り上げて積み込んでいた。安心・安全意識はどうやらなさそうだ。埠頭側のクレーンも、中古で足回りが壊れた日本のクレーン車も利用されていた。知恵と工夫とローコストの世界との印象を受けた。そういえば、インドネシアは驚くほど大きな国で、面積は約189万平方キロと日本の5倍以上、国土は東西5100キロ、南北1900キロもあり、東西の総距離は北米大陸横断やヨーロッパ大陸横断にも匹敵する。人口は約2億人を超えて日本の2倍。最大の特徴は、何と言っても約1万7500もの島からなる世界最大の島嶼国家という点で、この港を訪問すると、外洋を航海する大型船より、目の前で見ているような小型船が活躍する世界であることを改めて感じる。小さい港ではあるが、その活気たるや凄まじい。
27 Sunda Kelapa港記念碑
28 Sunda Kelapa 埠頭風景
 Sunda Kelapa 埠頭風景

雑記

博物館のパネルに往時のバタビアの川の様子を見せる写真があった。29 往時のバタビアの風景
 往時のバタビアの風景

この川を実際に訪問して現在の様子を見てみた。オランダで見る跳ね橋もあり、護岸の様子も一時は整備された形跡はある。では現在はというと、一言で、汚く臭い。川にはゴミが投棄され、悪臭が漂っていた。ジャカルタではゴミは焼却処分とはならず埋め立てられるとのことで、日本でも溝浚いや川が汚れていた時代があったが、ジャカルタでは河川や道路は、経済成長に見合った整備が全く追いついていない現実を見ることができた。日本との比較はフェアではないことは重々承知しながらも、インドネシアにとってバタビアは歴史に残る世界遺産に相応しいと個人的には思うので、近未来経済が豊かになり、金銭的にも精神的にも余裕が出てきたら、日本の倉敷の美観地区のように整備されることを切に祈りたい。
30 跳ね橋
31 現在の川風景
 現在の川風景

ジャカルタの気温は摂氏30度台であったが、湿度は東京ほどではないとの体感であった。南緯6度、赤道に近いことから季節は雨期と寒気の繰り返しとなるが、現在北半球は夏なので、南半球は冬であることをふと思い出し、変に納得した。
動き回るとさすがに体力を消耗するしのども乾くので、案内役の駐在員にCafe Bataviaに連れて行ってもらった。オランダ東インド会社は18世紀末に消滅はするが、引き続きオランダはインドネシアを植民地として支配した。200年前のオランダ植民地時代の建物を利用して、1階はカフェ、2階はバー、レストランになっている。19世紀の雰囲気を味わえるカフェで、休憩や食事にはおすすめの場所。アイスティーを楽しんだが、甘みがなく、茶葉の香りがしっかり味わえる本格的なものだった。 近くにはワヤン人形博物館もある。ワヤンとは人形を使った影絵や人形芝居。広場の片隅では、若い人たちがインドネシア音楽のガラワンの練習をしていた。団体パック旅行では味わえぬ時間の使い方となった。ハードスケジュールの出張で肉体的にはつらいが、ちょっとしたご褒美の時間を存分楽しむことができたことに感謝したい。

(栗田正樹 記)

32 Cafe Batavia
33 Cafe Batavia 店内
 Cafe Batavia 店内

参考サイト


博物館公式サイト

http://www.museumbahari.org
Sunda Kelapa Wikipedia (英語)
http://en.wikipedia.org/wiki/Sunda_Kelapa
Cafe Batavia ぐるなび海外
http://r.gnavi.co.jp/indonesia/jp/id10015/

参考文献

帆船関連
Miller, Russel The Seafarers THE EAST INDIAMEN, Time-Life Books,1980
羽田正、興亡の世界史第15巻 東インド会社とアジアの海 第四章ダイナミックな移動の時代、講談社、2007年

オランダ東インド会社会社関連

永積昭、オランダ東インド会社、講談社学術文庫、2000年11月第一刷
Jacobs, Els M. IN PURSUIT OF PEPPER AND TEA, The Story of the Dutch East India Company, Netherlands Maritime Museum Walburg Pers, 1991
Gaastra, Femme S. THE DUTCH EAST INDIA COMPANY, Expansion and Decline, Walburg Pers, 2003

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