海事博物館正面
海事博物館外壁
 海事博物館正面(左)と外壁(右)

ここは13世紀にバルセロナ伯ペラ2世が地中海支配のためガレー船建造を目的として設立した王立造船所跡で、バルセロナが次第に力を失いスペインに組み込まれ、18世紀になりカルタヘナへ移設されるまで実際に造船所として使われていました。この建物を修復し、1941に博物館として一般に公開されたものです。

ガイドの説明によれば、スペインでは歴史的な造船所の建築物は残っておらず、唯一バルセロナにある造船所が修復されたとのことです。近年では一般の来訪者は減少しており、学生の課外授業の見学が多くなっているようです。

ガレー船や展示復元船に関する資料蒐集も訪問目的の一つでしたが、これは見事に外れとなりました。ショップはあるのですが、販売されているのは海事関連の土産物が中心で、文献としては造船所の歴史を解説する分厚いスペイン語の本程度でした。資料はインターネットで探すことにしました。

この博物館の見所は、まずゴシックの建物そのものと、この造船所で1571年のレパントの海戦において、フェリペ2世の異母弟のドン・フアン・デ・アウストリアが乗船したガレーラ・レアル(Galera Real)が建造され、その実寸大のレプリカ船の展示です。レプリカ船は、レパントの海戦の400周年記念で1971年に完成しました。

入り口で荷物の安全検査を行うと受付があり、音声ガイドを持って行けと言われました。音声はスペイン語でした。これは首から下げるだけで現地ガイドと見学を開始しました。最初に映像展示でバルセロナで造船が始まった経緯についての解説があります。また、造船所の全景ジオラマとどのように建設されたのかの映像や造船の様子を示す映像展示があります。

造船所ジオラマと建設過程を示すビデオ
 造船所ジオラマと建設過程を示すビデオ

見学経路を辿ると、原寸大のオールを漕ぐシミュレーターがあり、いかに力を要したのかが体験できるようになっていました。階段を上がると、いよいよガレーラ・レアルの展示になりますが、まず最初に目に飛び込んで来るのが、ガラスケースに入った縮尺1/20のガレーラ・レアルの大型精密摸型です。帆や、実際にレパント海戦で船に掲揚した旗も再現されており、見応えのある模型です。

1_20摸型1x
1_20摸型旗に注目xxx
 ガラスケースに入った縮尺1/20のガレーラ・レアルの大型精密摸型

レプリカ船は全長60メートルにも及ぶ巨大なもので迫力があります。スターボードサイドの横にある壁には船に関する解説を、カタラン語、スペイン語、英語で表記したパネルがあります。印象的な解説は二つありました。1つは、[To live and to die in Galley]のタイトルで、船員周りの環境が劣悪で、漕ぎ手の寿命は2年程度であったとの解説です。どのような食事であったのか、また漕ぎ手には足枷が付けられていた、どのようなポジション/格好で船を漕いだのか等の解説です。

ガレーラ・レアル
解説パネル1


2つ目は、船尾の装飾に関する解説です。船側には勝利を祈る神々が描かれており、この神々をひとつ一つ解説してありました。神話の知識を仕込まないとダメだなと思いながら解説パネル全体を写真に納め、細かい所は後でショップで解説書でも購入しようと思っていたのが間違いでした。

船尾装飾の解説パネル
 船尾装飾の解説パネル

帰国してからネットで探し回り、スペイン語になりますが1つ文献を見つけることができました。(ご興味ある方は、ネットでARGO, LA GALERA REAL DE DON JUAN DE AUSTRIA EN LEPANTO Sylvène Édouardで検索ください。24ページもある論文ですが、船尾の装飾を豊富なカラー写真で解説しています。)

レプリカ船の見所はやはり船尾だろうと思います。特徴的なのは3本のランタン、船尾の形状、そしてメデューサの彫刻があることです。ガイドによると、船尾のランタンは三位一体を表しており、当時はキリスト像も飾られていたとのことです。飾られていたキリスト像は、バルセロナ市内のカテドラルにあるとのことで、現物を見学してきました。

ガレーラ・レアル船尾
カテドラルのキリスト像
 (上)ガレーラ・レアル船尾 (下)カテドラルのキリスト像

船尾の形状はユニークでこのようなカーブ形状はどう造作したのかも想像してみました。また、メデューサ像は船尾の彫刻としては初めてみました。メデューサは「見た者を恐怖で石のように硬直させてしまう」というギリシャ神話に出て来る怪物です。現在では、「宝石のように輝く目を持ち、見たものを石に変える能力を持つ」とされています。

館内摸型では、世界一周したVictoryやキューバで建造された80門艦のモデルとなった当時の模型などが目立っていました。

以上で今回のスペイン海事紀行を終えますが、次回のスペイン旅行ではセビリアをベースにして、カディス、ヘレス・デ・ラ・フロンテラやサンルカール・デ・バラメダ、また少し足を延ばしてジブラルタルも訪問してみたいと思います。

(栗田正樹 記)