ロープを知る

A man is no sailor until he "learns the ropes."

カテゴリ: ザ・ロープ帆船模型展

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会場に用意する『ザ・ロープニュース』のファイル

「ザ・ロープ展まで1ヶ月を切る」とタイトルしてブログを書いてから、早いものであと2週間に迫った。ブログには『カウントダウン・タイマー』を設置、オープニングまで日読みが始まった。

さて、ザ・ロープ展の会場にこの1年間に発行した当会の会報『ザ・ロープニュース』を3冊のクリアファイルに入れて用意し、ご来場者の閲覧に供します。この『ザ・ロープニュース』は会員向けに年4回発行している。総会・例会の報告、研修会の報告、JSMCC展示会の訪問記、書評、DVDの紹介など、当会の活動状況と帆船模型に関する多岐にわたる情報を会員に提供している。

3年前からは、日本語版のほか英語版 ”The Rope News” も発行している。海外の同好会と会報の定期的な情報交換を行なっており、国際的なクラブ連携の一翼も担っている。

キラーコンテンツは何と言っても『研修会報告』。年5回開催している研修発表内容を、豊富な写真とあわせて誌上で詳しく再現し、帆船模型製作のノウハウをわかりやすく解説し、会員間の情報共有に努めている。「こういうふうに作るのか」「こういう作り方もあったのか」と参考にしている会員も少なくない。

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岩本会員による研修会発表「帆船模型製作技法その5ー船体の工作」はロイヤル・キャロラインの製作を例にしている

研修会報告で紹介されている帆船模型のいくつかは、今回の会場に出品されているので、ぜひ完成作品とあわせ、ザ・ロープニュースにある製作過程の記事も参考にしてご鑑賞いただきたい。“作品の見方“ も変わるのではないでしょうか。

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大川原会員の研修会発表「ブルーノーズの小物製作」

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加藤会員による研修会発表「ロイヤルキャロラインのボート」

※なお、この会報はホームページから会員限定でダウンロードする方式としている点、ご了承ください。

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印刷を待つばかりとなった展示会プログラム。表紙にはショーウィンドウに展示する会員制作の日本の船を特集。

第42回ザ・ロープ帆船模型展まで1ヶ月を切った。展示会の準備にあたる幹事の間では、最後の追い込みに入った3月初から、確認のメールがフォローしきれないぐらいに激しく飛び交うようになってきた。

そんな中で、大量に準備しなければならない展示会プログラムは原案も出来上がり、印刷を待つばかりになっている。表紙は、当会の肥田会員デザインの案内ハガキとともに、当会会員が制作した日本で活躍した船を前面に打ち出している。

展示会場の外にある大型ショーウィンドウも日本の船を特集して展示。帆船と云えば西洋のものと思いがちだが、日本にもこれだけの種類の帆船があるとは意外な驚きでもある。さらに、『日本の船』の精密画の第一人者であられたイラストレーター・画家の故谷井健三氏の絵画も展示される。展示会ご来場の節は、ぜひショーウィンドウもお見逃しなく。

また、会場内にも『特別展示』として構造模型の4作品(ラ・フルール・ド・リ/坪井 悦朗、HMS カンバーランド/土屋 勝司、HMS ベローナ/ 久保田 榮一、ル・ソレイユ・ロワイヤル/村石 忠一)が出品される。もちろん、いずれもスクラッチビルド(自作)である。

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久保田 榮一氏製作のHMS ベローナ/の構造模型

構造模型の魅力は、「正確な図面もない時代に巨大な木造帆船がどのように作られたのか、内部の構造はどのようになっているのか。木材をどのように組み立て、また強度を増すための様々な工夫がなされていることが実に良く理解できる。製作には時間もかかるが難しいことへ挑戦をして再現できた時の喜びは何物にも代えがたい」(第40回展パネルより)。名人の手による名作をじっくりご鑑賞ください。

➤2017/4/16-4/22 (ニュースリリース) 第42回ザ・ロープ帆船模型展

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縮尺1/300坪井悦郎会員のビクトリーと縮尺1/48の故白井一信会員のビクトリー

昨年から始まったザ・ロープ帆船模型展アルバム復刻プロジェクト。第2弾は2002年に銀座伊東屋で開催された第27回展。この年の出品作品数は60点。

復刻対象のアルバムは8年分であるが、実はこの27回展が一番充実しているようだ。画像数は約300枚。ほとんどの作品に数枚のディテール写真がある。多いものでは1作品に何と17枚も。

この年の展示会の様子を調べるために『ザ・ロープニュース』のバックナンバーを探したところ、「帆船模型、中高年に人気」と題した新聞記事が見つかったので、あわせてご紹介しておきます。

展覧会の時に「時事通信社」から帆船模型という趣味について取材を受け、その記事が2月後半から3月始めにかけて福島・静岡・九州で地方紙に掲載されました。その後各地から問い合わせを頂き帆船模型に興味を持つ方が沢山いらっしゃることを実感しました。
・・・第27回展示会の後で 一門龍男
(ザ・ロープニュース No.36 2002.5.31)

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第27回展の作品画像集はこちらから。
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第27回帆船模型展 Photo Gallery of the 27th Annual Exhibition 2002

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2001年に開催された第26回ザ・ロープ帆船模型展の作品アルバム2分冊

先のブログでもご紹介したザ・ロープ帆船模型展の出品作品の写真アルバムは、全部で十数冊。それまで幹事が持ち回りで保管していたが、昨年、幹事の渡辺さんがすべてスキャナーで取り込みディジタル化してくれた。
(*)なお、アルバムは昨年暮れの『譲りますマーケット』で会員に無料提供された。

アナログ写真からデジタルに変換した貴重な画像は2001年の第26回展から2011年の第36回展まで。貴重な作品を撮りためた画像は、このままにしておくのはいかにももったいない。ホームページでアルバムの復刻版として再現することにした。

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(左)チャールズ・W・モーガンと(右)ハリファックス

これまでホームページの作品画像集(旧「ギャラリー」)には第30回展以降のすべての作品を載せているが、アルバムに残っていた写真からその先4年分が復元できることになる。

差し当たり第26回展のアルバムから67作品の100枚ほどの写真をホームページに掲載した。往年の名作の素晴らしい画像と合わせ、製作者の作品にかける思いや製作上の苦労話なども当時の出品リストから再現した。こんなすごいコメントもある。

最近、ザ・ロープの模型も『博物館レベル」というような表現が盛んに聞かれる中、製作途中で3500ミクロン(何mmとは恥ずかしくてとても書けない)の図面との誤差に気づき、とてもブルーな気持ちになってしまったが、ここは数で勝負と、船体・甲板の釘打ちに精を出した。その数1万本以上。

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ル・ルカン Le Requin 1750 中園利孝
何とも小さくてよく見えないかもしれませんが・・・。ロープは推定直径0.015㍉のナイロンファイバーを3本撚りあわせ0.03~0.2㍉の5種類の太さのものを作り、実物の船の縮尺に近いものを使用した。滑車は他の木部と同じくツゲ材を使用し、一番小さいものはツゲ棒の0.4㍉の面に0.2㍉の穴を開け、長さ0.7㍉にカットした後、特製のクリップに固定してサンドペーパーで仕上げた。また大砲や舵のヒンジは真鍮や銅の線、あるいはそれらの板で製作し、黒染めの薬品処理をしてある。さらに甲板や外板の釘、約2千本は直径0.2㍉のナイロン線を染色して使用した。

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ヒアシンス La Jacinthe 1825 金森弘一
シェードの汚れたアメリカ製スタンドに、ステンドグラスのシェードを作ろうと思い、船の出る図柄を考え、ホメロスのオデッセウスの航海に定めた。改めてイーリアス・オデッセイアを読み、ゼウス・パリスの審判、トロイ戦争におけるアキレウスとヘクトルの一騎打ち、オデッセウスの苦難の旅、航海を邪魔するポセイドン、目をつぶされたキュークロプスの襲撃、サイレンの誘惑、そして帰国して反逆者を射殺すまでをデザインした。円筒のため、入れたくない縦の切れ目を多くとらなければならない。全体の半田付けが終わるまで型からはずして光の効果を見ることができない。ガラスのかけらは飛ぶ。ステンドグラスは血の滲む作業である。photo211
ステンドグラスのランプシェード Stained glass Lamp shade 宮島俊夫

ぜひ、じっくりとご鑑賞いただきたいもの。残りの27回展以降については、これから順次掲載する予定である。お楽しみに。

第26回展はこちら(作品画像集>第26回展(2001年)から。
英語サイトはこちら(1/2)こちら(2/2)から。

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41-21 ロイヤル・キャロライン Royal Caroline 製作者:岩本 和明
1749年英国デットフォードで建造されジョージ二世が愛用した3本マストの王室専用ヨット。装飾を楽しむつもりが船体の彫刻だけで2年も掛ってしまった。装飾はツゲを彫刻し、同じ形は低溶融金属で複製した。艦尾には海神・女神・女王などが、舷側はいろいろな人物や動植物が配置されている。色彩は王室ヨットなので“アナトミー”の解説を参考に華やかにし、艦尾の居室の床材はマホガニーとエリマキの寄木細工にした。

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41-13 HMS ミネルバ HMS Minerva 製作者: 土屋 勝司
英国海軍の38門フリゲート艦で他に3隻の姉妹艦がある。1790年、海軍省は軍艦の装飾の簡素化を定めたため、後の艦にはフリーズ(舷側や.船尾にペイントされた天使・動植物・幕などの模様)が無い。アナポリスの米国海軍兵学校博物館にあるこの船の模型に魅せられて製作したが、彼我の技術の隔たりを痛切に感じた。

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41-03 日本丸 Nippon-Maru 製作者: 長崎 景
「太平洋の白鳥」と呼ばれる練習船。設計から製作まで総て一貫して我が国で行った。帆走性能は初代日本丸をはるかにしのぐ世界でも有数の高速帆船。

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41-14 チャールズ ヨット Charles Royal Yacht 製作者:田中 嘉明
昨年の帆船模型教室で、講師を務めたときに教材として製作したものだ。このキットは帆船模型造りの基本ノウハウが網羅され、作り易さとともに受講生を飽きさせない華麗さと豪華さを備えている。

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41-16 ビーバー Beaver 製作者:佐藤 憲史
Hudson's Bay Co.が北米西岸の探査のためロンドンで建造した小型外輪船。蒸気機関が船体の40%を占めるため、乗員居住区や貨物室が著しく制限された。

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41-11 フェア・アメリカン Fair American 製作者:三上 裕久
アメリカ独立戦争当時の私掠船。

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41-19 ゴールデン・ハインド Golden Hind 製作者:菊池 幸雄
イングランドのガレオン船で1577年に建造された。当初は「ペリカン」という名がついていたが、フランシス・ドレークの乗艦となり、世界周航を行なった際の出資者であるクリストファー・ハットン卿の紋章にちなんで、「ゴールデン・ハインド」と改名された。

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41-22 HMS ベローナ HMS Bellona 製作者:清水 謙一
1760年に建造の英国の74門艦。その後50有余年にわたりフランス、オランダ、スペインに対する海上作戦に従事し、北海や西インド諸島まで遠征した。1814年9月に解体された。船の美しさに魅かれて製作を始めたものの船首・船尾の複雑な工作に閉口し、数度の中断を経てやっと完成した。甲板上の艤装やロープ類は自己満足ではあるが見ていて時間を忘れる。

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41-23 HMS フライ HMS Fly 製作者: 篠崎 精一
1776~1780年にかけて建造されたスワン級フリゲートの5番目の艦で、1776年に進水した。FLYの原図面は存在しており、このクラス艦としては端正な船体ライン、また装飾・彫刻に富んでおり魅力的である。

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41-24 バウンティ Bounty 製作者: 福島 一
全長27.7m幅7.4m定員46人の小型だが3本マストの全帆装船(full rigged ship)である。ミッションのパンの木をタヒチから西インド諸島へ運ぶ途中で反乱が起きる。武装船としては4ポンド砲4門、小型旋回砲10門のカッターに分類される小型の帆船であるが、全帆装で模型としては存在感がある。5回も映画化されており“バウンティ物語”は興味が尽きない。

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41-25 レディ・ネルソン Lady Nelson 製作者:肴倉 忠
18世紀後半~19世紀初頭の典型的な英国海軍のカッターをモデルにしている。このようなカッターは英国南部のフォークストン港とその周辺の密輸業者を取り締まるため、英海軍が採用した。

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41-26 HMS ホットスパー HMS Hotspur 製作者:佐々木 高行
セシル S. フォレスターの海洋冒険小説 “海の男:ホーンブロワー・シリーズ”に登場し、大活躍したホーンブロワー艦長のスループ艦である。実在した船ではないが当時の特徴を全て備えている。ホーンブロワーの物語は、英仏戦争を題材にした海洋小説であり、それを思い起こしながら製作して行く過程は、来るべきフランス海軍との対決を主人公と一緒に準備している気持ちになれ、充実した時間であった。

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41-31 ボンバルダ Bombarda 製作者:山口 桂一郎
前マストを取り外したような船体に極めて大きな炸裂弾を発射する臼砲を搭載した特殊艦。喫水の浅い船体のため、陸に接近し高い弾道の炸裂弾を発射し、要塞を攻撃する任務に用いられた。

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41-32 ル・セール Le Cerf 製作者: 田中 武敏
フランスで1779-1780年に活躍した18門のブリガンティンカッター。船体はクリンカー張りだが1780年以降はその上が銅板張りとなった。ブードリオの図面による2隻目の構造模型だが、構造模型の図面ではない為フレーム図を引き直すなど多面にわたり、土屋会員に指導を頂いたことに謝意を表したい。

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