Keep On Thinking

少しでも日本の医療を良くして、多くの人々が健康な生活を送ることができる世の中にしたい。このブログは自分の思考の軌跡を綴る場であり、少しでも多くの人々に「気づき」を与える場でもある。医療、社会全般、科学にも視野を広げ、リハビリテーションや神経科学などの分野も紹介します。「必要なのは、信じる心ではなく、それとは正反対の、知ろうとする心である。-バートランド•ラッセル」

AHA/ASA脳卒中リハビリテーションガイドライン2016

Guidelines for Adult Stroke Rehabilitation and Recovery A Guideline for Healthcare Professionals From the American Heart Association/American Stroke Association

米国のAHA/ASAから、改定された脳卒中リハビリテーションのガイドラインが公表されています。ガイドラインの内容は学際的であり、合併症の予防と医学的管理(褥瘡や拘縮、深部静脈血栓症、膀胱直腸障害・失禁、疼痛、転倒、脳卒中再発など)が前半に記載されています。ガイドラインを読むと、私が所属している病院でやりたいこと、やらなければいけないことが、見えてきました。たまには、ガイドラインを読んで、脳卒中リハビリテーションの概観をおさらいすることは大事ですね。

以下の記事も参考にしてください。

AHA / ASA Newsroom:In-patient rehab recommended over nursing homes for stroke rehab

当院から2本の論文が「理学療法学」に掲載されました。

当院から2本の論文が、「理学療法学」にオンラインファーストで掲載されています。ぜひ、読んでください。1本目の論文のファーストオーサーは、私の嫁です。我ながら、嬉しいです。嫁は自宅で論文を執筆していましたが、論文執筆に悪戦苦闘していて、発狂寸前だったことを記憶しています(笑)。

北村 友花, 野添 匡史, 金居 督之, 久保 宏紀, 山本 美穂, 古市 あさみ, 間瀬 教史, 島田 真一.軽症脳梗塞患者における急性期病院入院中の身体活動量と身体機能との関係.理学療法学.2016

久保 宏紀, 金居 督之, 北村 友花, 古市 あさみ, 山本 実穂 , 小林 実希, 野添 匡史, 間瀬 教史, 島田 真一.脳内出血患者における急性期病院退院時の機能予後とその要因.理学療法学.2016

慢性期重度上肢麻痺に対する複合的訓練によって食事動作を獲得した1症例

後輩の論文が、2016年5月号の作業療法ジャーナルの症例報告に公表されました!私も、本報告の患者さんに何度か代診で関わらせていただきました。本報告を読んでいただければわかりますが、患者さんに提供した食具には、後輩のアイデアが加わっています。介入全体を通して、後輩が症例に対して丁寧に関わっていたことが印象に残っています。是非、お読みください。

原田奈菜子,竹林崇,笹沼里味,高木真人,島田眞一.複合的訓練を実施し,麻痺手による食事動作を獲得した1症例.作業療法 2016; 50(5) : 491 - 495.

写真 2016-05-02 18 15 45

脳卒中回復メカニズムのパースペクティブ -Nick Ward先生の教え~パート3~-


Nick Ward先生(UCL Institute of Neurology, Queen Square)からの学びはまだまだ続きます。現在(2016年4月15日)、イタリアのヴェニスでEuropean Stroke Conference 2016が開催されています。Nick Ward先生が、そこでプレゼンテーションする資料が公開されています。題名は、「Mechanisms of stroke recovery and restorative stroke therapeutics」です。リハビリテーション関連に従事している者にとっては、関連文献も含めて、読んでおくべき資料です。

Nick Ward先生は、プレゼンテーションの後半部分で、脳卒中回復における可塑性とその神経分子生物学について詳しく述べています。脳卒中の回復に寄与する神経分子の探索や回復を促進する薬物の開発に関する研究が進められていますが、未だ決め手となる薬剤は開発されていません。当ブログでも、以下のような記事を以前に紹介しましたが、ラットなどの動物実験では薬物の効果が出ているものの、ヒトに対する応用的な治療は発展途上です。

広範囲な脳梗塞を呈したラットに、抗Nogo-Aの投与に続けて課題指向型訓練を行うと、驚異的な回復を達成!:Keep On Thinking

我々療法士にとっては、まず、脳卒中の回復過程で脳神経系の様々なレベルで可塑性を惹起させることが大事であることを認識しておくべきでしょう。薬物がなくても、課題や行動変容によって、脳の可塑性を引き起こすことができるのです。Nick Ward先生の資料でも、脳卒中の回復過程で、ミクロなネットワークから、マクロなネットワークといった各階層で神経ネットワークの再構築が起こることを紹介しています。

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最後に、Nick Ward先生のプレゼンテーションのまとめを述べておきます。現代のリハビリテーション医学、臨床現場に必要なことがまとまっていると思います。

1. 練習量は、多ければ多いほどよい。回復を促進するほどの十分な身体的・行動学的な介入は提供できていない。
2. 脳全体における損傷領域の解剖学的知識は回復の予後を予測する手助けとなる。そのため、脳卒中の回復を検証する試験では、損傷領域の階層化が必要である。
3. anti NoGoやInosine、GDF10のような回復を導く分子生物学的構造において、損傷領域に明らかな変化がみられたものが存在する。
4. 神経ネットワークにおいて、抑制性へと傾いた状態から、抑制性と興奮性のバランスを整えることで、構造的な可塑性へと導かれる。
5. ターゲットとする神経生物学的因子が知っているので、ヒトにおいて回復を予測する生体マーカーが求められる。薬物の開発が待たれる。
6. フェーズ3の大規模試験は尚早か。1. (または、少なくとも上記の事柄を並行して)に関するメカニズムの理解が急務である。

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一次運動野と背側運動前野からの皮質脊髄路の残存程度は、脳卒中後の手の運動機能回復と関連している(Strokeから)。


Nick Ward先生(UCL Institute of Neurology, Queen Square)の「Motor Recovery after Stroke - What is the Future?」からの学びは続きます。本記事では、脳卒中後の運動機能回復は、脳卒中による神経損傷とどの程度関係があるのか?について1つの論文を紹介します。

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Schulz R, Park CH, Boudrias MH, Gerloff C, Hummel FC, Ward NS. Assessing the Integrity of Corticospinal Pathways From Primary and Secondary Cortical Motor Areas After Stroke. Stroke. 2012; 43:2248-2251.

背景と目的:一次運動野はもちろんのことだが、皮質脊髄路は背側・腹側運動前野皮質や補足運動野からも神経線維を受けており、これらの皮質から出ている神経線維は、脳卒中後の運動機能の回復に潜在的に関わっている可能性がある。我々の目的は、これら4つの運動皮質(一次運動野、背側・腹側運動前野皮質、補足運動野)における手の運動を司る領野から出ている皮質脊髄路の微細構造の残存程度を測ることと、これらの変数が手の運動機能障害にどのように関係しているのか調べることである。
方法:機能的MRIから同定された皮質領野からの確率的トラクトグラフィー(拡散テンソル画像を用いた脳などの三次元的視覚的評価法)によって、健常対象者のグループにおけるそれぞれの運動野内の手の運動を司る部分から出ている皮質脊髄路を明らかにした。慢性期脳卒中患者のグループにおける内包後脚のレベルで、それぞれの皮質脊髄路に対する微細構造の残存程度をfractional anisotropy(FA)を使って計算した。
結果:fractional anisotropyは損傷半球において、全ての皮質脊髄路で減少していた。握力は、一次運動野と背側運動前野から出ている皮質脊髄路の残存程度と関連していた。しかし重回帰分析では、背側運動前野が、握力の強さに関わる一次運動野の皮質脊髄路の能力を向上していた。
結論:握力は一次運動野から出ている皮質脊髄路に決定的に関与しているが、運動前野から出ている皮質脊髄路の微細構造の残存程度は、脳卒中後の運動機能の回復を援助する役割があると思われる。

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図は論文から引用
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図は論文から引用

私見。運動機能の回復は、一次運動野と背側運動前野からの皮質脊髄路の残存程度と関連する。運動機能の回復を予測するうえで、皮質脊髄路の残存程度を知ることは、大事であろう。普段見るMRIからも、ある程度評価できる?
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脳卒中リハビリテーションの必読書

Principles of Neural Science (Principles of Neural Science (Kandel))
↑現在進行形で、こつこつ必死に読んでいます。

カンデル神経科学
↑日本語訳が出たみたいです。




Stroke Rehabilitation: A Function-Based Approach, 3e

↑英語ですけど、脳卒中リハビリテーションの教科書で世界No1だと思います。

脳卒中のリハビリテーション 生活機能に基づくアプローチ 原著第3版
↑日本語版が出ました!

Stroke Rehabilitation: A Function-Based Approach, 4e
↑2015年9月に第4版が出ました!

Cognitive and Perceptual Rehabilitation: Optimizing Function, 1e
↑高次脳機能障害に対するリハビリテーション、作業療法に関する書籍ではNo1だと思っています。




Neurological Rehabilitation: Optimizing Motor Performance WITH PAGEBURST ACCESS, 2e

↑英語ですけど、神経疾患に対する効果的なリハビリテーションを学ぶことができます。

ニューロロジカルリハビリテーション―運動パフォーマンスの最適化に向けた臨床実践
↑上記の日本語版です。

Stronger After Stroke: Your Roadmap to Recovery
↑第2版出ました!一般向けに書かれた脳卒中で失われた機能を回復するための戦略。

エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション
↑第2版の日本語訳です!

作業で語る事例報告: 作業療法レジメの書きかた・考えかた
↑作業療法士は、一読あれ。




脳から見たリハビリ治療 (ブルーバックス)

↑ニューロリハビリテーションの入門書といえば、これだ。




学習と脳―器用さを獲得する脳 (ライブラリ脳の世紀:心のメカニズムを探る)

↑学習と脳の関係を知らずして臨床ができるか。いやできない。




最新運動と脳 改訂版―体を動かす脳のメカニズム (ライブラリ脳の世紀:心のメカニズムを探る 5)

↑運動と脳の関係を知らずして、臨床ができるか。いやできない。

認識と行動の脳科学 (シリーズ脳科学)
↑認知、注意、運動、思考など様々なトピックを面白く学べます。

ハーバード大学テキスト 心臓病の病態生理 第3版
↑ハーバードの学生と教師が作り上げた教科書。心臓病を知るにはこれしかない。

心電図のみかた、考え方―基礎編
↑私の中では心電図の教科書でこれが最強だと思います。

栄養塾 症例で学ぶクリニカルパール
↑栄養管理を学ぶための入門書。内容は歯ごたえがあります。

運動療法のための 機能解剖学的触診技術 上肢

運動療法のための 機能解剖学的触診技術 下肢・体幹
↑触診技術を学ぶなら、私はこのテキストを選びます。

筋骨格系のキネシオロジー カラー版
↑やっと出ました第2版。生体力学を学ぶならこれしかない。

よくわかる脳MRI 第3版 (画像診断別冊KEY BOOKシリーズ)
↑第3版出ました!脳MRIの参考書ではNo1。

理学療法リスク管理マニュアル
↑リスク管理を学ぶなら、とりあえずこれ。

リハビリテーションリスク管理ハンドブック
↑合わせて読みたいリスク管理本

ベッドサイドの神経の診かた 改訂17版
↑神経疾患に対する検査と評価は、これがあればとりあえず大丈夫。

神経内科ハンドブック 第4版―鑑別診療と治療
↑神経内科は全般的におさえておきたい。

神経内科ケース・スタディ―病変部位決定の仕方
↑これ読んでから、ハンマー振る頻度増えました。

神経心理学入門
↑高次脳機能障害を学ぶなら、まずこれでしょう。

神経心理学―認知・行為の神経機構とその障害 (放送大学教材)
↑面白くて良書ですが、残念ながら絶版です。

高次脳機能障害学 第2版
↑第2版が出ました。改訂されて第6章に注意と注意障害が加筆されています。

視覚性認知の神経心理学 (神経心理学コレクション)
↑症例が豊富で面白いです。英語の文献もたくさん紹介している。

臨床家のための高次脳機能のみかた
↑認知症患者の高次脳機能を理解するにはこの本がベスト。

高次脳機能障害マエストロシリーズ(3)リハビリテーション評価
↑高次脳機能障害に対する検査と評価の入門書。




リハビリテーションのための脳・神経科学入門

↑ニューロリハビリテーションの入門書Part2。

↑神経疾患を学ぶなら、最高の入門書。

活動分析アプローチ-中枢神経系障害の評価と治療-【第2版】
↑第2版でました。ADLへの介入には大変参考になります。
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