Keep On Thinking

少しでも日本の医療を良くして、多くの人々が健康な生活を送ることができる世の中にしたい。このブログは自分の思考の軌跡を綴る場であり、少しでも多くの人々に「気づき」を与える場でもある。医療、社会全般、科学にも視野を広げ、リハビリテーションや神経科学などの分野も紹介します。「必要なのは、信じる心ではなく、それとは正反対の、知ろうとする心である。-バートランド•ラッセル」

脳卒中若年者の41%で疲労がみられ、機能予後の不良と関連する。(JNNPから)

Maaijwee NA, Arntz RM, Rutten-Jacobs LC, Schaapsmeerders P, Schoonderwaldt HC, van Dijk EJ, de Leeuw FE. Post-stroke fatigue and its association with poor functional outcome after stroke in young adults. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2015 Oct;86(10):1120-6.

オランダで行われた大規模コホート研究。初発のTIAまたは脳梗塞の若年患者(18歳から50歳)511名を平均9.8年(SD:8.4年)追跡調査し、Checklist Individual Strength questionnaireを用いて疲労を評価した。その結果、若年脳卒中患者の41%で疲労がみられ、147名の年齢をマッチさせた対照群(18.4%)と比較すると、脳卒中患者群で疲労を呈している者が有意に多かった(p=0.0005)。疲労は、mRSで評価した生活機能の低下 (OR 4.0 (95% CI 1.6 ~ 9.6)や、IADLの低下 (OR 2.2 (95% CI 1.1 ~ 4.6)、情報処理速度の低下と関連していた(OR 2.2 (95% CI 1.3 ~ 3.9)。疲労のリスクファクターは、下の表が示しているように、抑うつ、不安、脳血管障害の再発が有意に挙げられた。

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表は論文から引用

私見。Choi-Kwonら(2011)の報告では、脳卒中後23%から75%の患者で疲労がみられると報告しており、本研究の結果もそれに当てはまる。脳卒中を発症して約10年が経過しても疲れやすいし、特に抑うつ症状や不安症状を呈している人は特別なケアが必要であろう。

疲労を改善するためには、以下の本が参考になるのではないか。

第一選択となる動作分析の教科書「動作分析 臨床活用講座」



本書を読んで最初に思ったことは、当院のリハビリテーション部の勉強会で、本書を参考にしながら、後輩たちが分担して、脳卒中患者さんの動作分析を発表してもらうことであった。それぐらい本書は、寝返り動作から起き上がり動作、立ち上がり動作・着座動作、歩行動作に関する動作分析についてわかりやすく丁寧に解説されており有益なものである。

動作分析するためには、解剖学や運動学(バイオメカニクス)の知識が必要となる。解剖学や運動学の知識は、対象者の動作を分析評価するためにあるといっても過言ではない。そのため、我々は一生懸命、解剖学や運動学の基礎医学を学ぶのだが、断片化された知識は容易に忘却する。本書は、解剖学や運動学の知識と動作分析の方法を並行しながら解説しており、多角的に理解でき、頭のなかに知識が定着しやすい。

動作分析は、対象者の3次元の動きを評価する。そのため、動作分析を学習する際には3次元で理解する必要がある。本書は、写真を多く取り入れており、動作の解説を頭のなかで3次元でイメージしやすく理解しやすい。また、動作を阻害している要因を一つ一つ丁寧に評価できるように写真にして解説しているので、目の前の患者さんに応用しやすい。何度も言うが、本書は丁寧に作られている。動作分析を学ぶ者にとって、本書は第一選択となるだろう。

脳卒中後の疲労の病態モデル(Strokeから)

Wu S, Mead G, Macleod M, Chalder T. Model of understanding fatigue after stroke. Stroke. 2015 Mar;46(3):893-8.

Strokeに脳卒中後の疲労の病態モデルに関する総論が報告されており、脳卒中後の疲労の病態を知ることができる。総論に示されている疲労の病態モデルは、今までの研究結果から導かれたものである。そのため、下の図には示されていない未解明の要因がまだ存在している可能性があり、脳卒中後の疲労の病態の全貌を理解するためには今後もさらなる研究が必要である。

脳卒中後の疲労の要因は、前期の疲労(Early Fatigue)と後期の疲労(Late Fatigue)と大きく2つに分けられている。まず、ストレス耐性や疾病に対する捉え方などの病前からの個人的因子が根底にある。前期の疲労には脳神経細胞の損傷や炎症、神経内因物質の変化といった生物学的要因が関与している。後期の疲労には抑うつや不安、残存している神経学的障害、日常生活動作の障害、自己効力感の低下、受身的なストレス対処行動や身体活動量の減少などといった心理的・行動学的な要因が関与している。脳卒中後の疲労に対してはこういった病態モデルを用いて、多角的な評価を実施し、問題点を明らかにし、適切に対応していくことが重要である。

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図は論文から引用

疲労を改善するためには、以下の本が参考になるのではないか。

脳卒中後の中枢性疼痛と半球間抑制の不均衡との関連(Front. Hum. Neuroticから)

Morishita T and Inoue T. Brain Stimulation Therapy for Central Post-Stroke Pain from a Perspective of Interhemispheric Neural Network Remodeling. Front. Hum. Neurotic. 2016; 10: 166-166.

脳卒中後の中枢性疼痛と半球間抑制の不均衡との関連を論じている総論である。下の図が示しているように、脳卒中によって左右半球の一次運動野の均衡が崩れ、損傷半球側の一次運動野から視床の後外側腹側核〔VPL〕への抑制が減少し、VPLの機能が過剰活動となる。さらに、VPLと神経ネットワークで結合している領域に影響が及ぶ。それらが、脳卒中後の中枢性疼痛の発生に大きく影響しているのではないか、とのこと。

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図は論文から引用

レビュー論文の著者は、脳卒中後の中枢性疼痛に対してtDCSを用いて半球間の不均衡を是正し、疼痛が改善した症例を報告している。対象者は、脳卒中によって左半球の視床が損傷され、中枢性疼痛を呈している。損傷半球の一次運動野の手の領域に陽極電極を、非損傷半球の一次運動野に陰極電極を設置し、tDCSを実施した。tDCSの効果はプラセボと比較し、二重盲検化で実施した。tDCSを20分間10セッション実施した結果、プラセボと比較してtDCSは、VASで測った疼痛の程度が有意に改善した。さらに、ARATが30ポイントから37ポイントへ向上し、上肢機能が改善した。

麻痺手(右手)の運動時の脳活動をfNIRSで計測したところ、通常時には右半球の過剰な活動がみられたが、tDCS施行後は、右半球の過活動が改善し、半球間の不均衡が是正されている。

Morishita T, Hyakutake K, Saita K, Takahara M, Shiota E, Inoue T. Pain reduction associated with improved functional interhemispheric balance following transcranial direct current stimulation for post-stroke central pain: A case study. J Neurol Sci. 2015 ;15(358): 484-5.

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図は論文から引用

疼痛に対するリハビリテーションを知りたければ、これ。

脳・神経科学の知見とリハビリテーションの臨床とをつなぐ架け橋



今から10年前の学生だった頃に、本書の第1版を夢中で読んだ記憶がある。当時は、基礎的な脳・神経科学の知見とリハビリテーションの臨床とをつなぐ架け橋となる参考書、特に日本語で読める本はなかったため、本書は画期的であった。約330本の膨大な参考文献をまとめ、初学者に対して読みやすく、しかし読み応えのある本書の第1版には圧倒された。

第2版はその第1版を超える内容となっている。参考文献は540本近くに及び、本書の分量は1.5倍となっている。しかし、語り口調は淀みがなく、強弱がはっきりしていて飽きず、読みやすくなっている。そのうえ、(これが大事なのだが)非常に内容が面白い。本書で取り上げられているトピックは全て、脳卒中リハビリテーションの臨床現場に欠かせないものだ。さらに、基礎的な脳・神経科学の知見と臨床とをつなぐ架け橋は強化されており、臨床を経験をしている者にとっては、基礎研究の知見がすっと頭に入ってくる。特に、疼痛に対するリハビリテーションや、運動学習理論、脳卒中の病期別の介入方法、身体所有感・運動主体感などは、明日からの臨床に活かせるだろう。

私は作業療法士になってから8年が経ち、人並みには論文を読んできたつもりだが、本書を読んで、知らないこと、読んでいない大事な文献がこれだけあるのかと再認識させてもらい、襟を正す気持ちになった。自分の無知を恥じずに、知の巨人である森岡先生の肩に乗って、脳・神経科学とリハビリテーションの広大な世界を見渡してみてはいかがだろうか。

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脳卒中リハビリテーションの必読書

↑現在進行形で、こつこつ読んでいます。

↑日本語訳が出たみたいです。

↑英語ですけど、脳卒中リハビリテーションの教科書で世界No1だと思います。これは原著4版です。

↑原著3版の日本語版が出ました!

↑英語ですけど、神経疾患に対する効果的なリハビリテーションを学ぶことができます。

↑上の日本語版です。

↑作業療法士は、一読あれ。

↑高次脳機能障害に対するリハビリテーション、作業療法に関する書籍ではNo1だと思っています。

↑高次脳機能障害を学ぶなら、まずこれでしょう。

↑面白くて良書ですが、残念ながら絶版です。

↑第2版が出ました。改訂されて第6章に注意と注意障害が加筆されています。

↑症例が豊富で面白いです。英語の文献もたくさん紹介している。

↑読みやすくて臨床に活かせます。

↑高次脳機能障害に対する検査と評価の入門書。

↑ニューロリハビリテーションの入門書と言えば、これ。

↑ニューロリハビリテーションの入門書Part2。脳卒中に関わる療法士は、必読です。

↑学習と脳の関係を知らずして臨床ができるか。いやできない。

↑運動と脳の関係を知らずして、臨床ができるか。いやできない。

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↑合わせて読みたいリスク管理本

↑上のケーススタディ本で、応用編。

↑栄養管理を学ぶための入門書。内容は歯ごたえがあります。

運動療法のための 機能解剖学的触診技術 上肢

運動療法のための 機能解剖学的触診技術 下肢・体幹
↑触診技術を学ぶなら、私はこのテキストを選びます。

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↑やっと出ました第2版。生体力学を学ぶならこれしかない。

↑基本動作の動作分析の教科書では、これが第一選択だろう。

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↑18版が出たみたいです。僕が学生時代は青だったな。神経疾患に対する検査と評価は、これがあればとりあえず大丈夫。

神経内科ハンドブック 第4版―鑑別診療と治療
↑神経内科は全般的におさえておきたい。

神経内科ケース・スタディ―病変部位決定の仕方
↑これ読んでから、ハンマー振る頻度増えました。


活動分析アプローチ-中枢神経系障害の評価と治療-【第2版】
↑第2版でました。ADLへの介入には大変参考になります。

↑第2版出ました!一般向けに書かれた脳卒中で失われた機能を回復するための戦略。

↑第2版の日本語訳です!
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