Keep On Thinking

少しでも日本の医療を良くして、多くの人々が健康な生活を送ることができる世の中にしたい。このブログは自分の思考の軌跡を綴る場であり、少しでも多くの人々に「気づき」を与える場でもある。医療、社会全般、科学にも視野を広げ、リハビリテーションや神経科学などの分野も紹介します。「必要なのは、信じる心ではなく、それとは正反対の、知ろうとする心である。-バートランド•ラッセル」

慢性期脳卒中患者に対して神経幹細胞を移植して機能改善を検証した研究(Lancetから)

Kalladka D, Sinden J, Pollock K, Haig C, McLean J, Smith W, McConnachie A, Santosh C, Bath PM, Dunn L, Muir KW.
Human neural stem cells in patients with chronic ischaemic stroke (PISCES): a phase 1, first-in-man study.
Lancet. 2016 Aug 20;388(10046):787-96. PMID: 27497862


英国で行われた、ヒトの神経幹細胞を初めて慢性脳卒中患者に移植して、機能改善を調査した、open-label、単一施設の研究。平均69歳(range 60-82)の男性であり、慢性期脳卒中患者(NIHSSの中央値7、発症から12ヶ月から51ヶ月が経過)11名を対象にして、ヒト由来の神経幹細胞(CTX-DP)を損傷半球の被殻に移植し、2年間追跡調査した。その結果、移植に伴う有害事象はみられなかった。5名の対象者で、MRIのFLAIR画像で移植した部分の高信号化がみられた。移植から2年の時点で、NIHSSの改善は、中央値で2ポイント(range 0-5)みられた。下の図のグラフの中で、AがNIHSSの推移を示している。

私見。脳卒中患者に対する神経幹細胞移植は非常に楽しみな治療法。今後、比較試験が実施されると思われる。今回は、神経幹細胞移植のみの効果を検証したものであり、他の治療法は併用されていない。やはり、神経幹細胞移植のみの治療ではなく、運動療法を併用していく方が、効果的なような気がする。

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図は論文から引用

心理面に配慮したリハビリテーションの基本原則



どの文献に書いてあったのかは忘れてしまったが、私の大学時代の先生が、以下のように述べてあった。英国の療法士さんが、日本のリハビリテーションの現場を見学するために、日本の病院に訪問していた。私の大学時代の先生が、英国の療法士さんを連れて病院の中を案内していると、英国の療法士さんが、「日本の病院には、臨床心理士はどこにいるんですか。」と質問してきた。その質問を受けた先生は、欧米圏では病院のなかに必ずといっていいほど臨床心理士が常駐しているが、日本の病院の大半はそうではなく、日本では患者さんの精神・心理面に対するケアは臨床心理士ではない他の職種が関わっていかなければならない現状となっている、と感想を述べていた。

私が勤めている病院も臨床心理士がいないため、脳卒中に罹患して、身もこころも傷ついた患者さんの精神・心理面のケアは、医師や看護師、そして療法士が担わなければならない。私は、臨床に従事してから、患者さんの精神・心理面のケアを先輩方から教えていただいたり、臨床で関わった患者さんから教えていただいたりした。こういった分野は、臨床のなかで試行錯誤しながら時間をかけて学ぶものであった。しかし、若い療法士さんたちが、私と同じ時間をかけて、この分野を学ぶ必要はない。

そこで、矢崎章先生の精神医学・心理学的対応リハビリテーションは、この分野を学ぶ良いテキストである。このテキストの第2章を参考・引用して作成した勉強会のスライドを示し、心理面に配慮したリハビリテーションの基本原則を述べたいと思う。

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脳卒中後急性期、亜急性期リハビリテーションにおける麻痺側上肢の活動量のシステマティックレビュー(Clin Rehabilから)

Hayward KS, Brauer SG.
Dose of arm activity training during acute and subacute rehabilitation post stroke: a systematic review of the literature.
Clin Rehabil. 2015 Dec;29(12):1234-43. PMID: 25568073


脳卒中後急性期、亜急性期リハビリテーションにおける麻痺側上肢の活動量を調べたシステマティックレビュー。10の観察研究を取り込んでいる。

急性期で調査した研究論文は2つ存在した。1つ目の研究論文では、練習中の麻痺側上肢の活動量は、理学療法で4.1分、作業療法で11.2分であった。作業療法での麻痺側上肢の活動量は、練習時間の49%を占めていた。2つ目の論文は、理学療法で5.7分であった。

亜急性期で調査した研究論文では、練習中の麻痺側上肢の活動量は、理学療法で平均4分(0.9分から7.9分、研究論文は4つ)、作業療法で平均17分(9.3分から28.9分、研究論文は3つ)であった。

私見。作業療法の目標や練習内容の優先度(例:上肢機能練習 vs ADL練習)、麻痺側上肢の重症度などによって、麻痺側上肢の活動量は変わってくると思われる。しかし、それにしても練習中の麻痺側上肢の活動量が少ないのではないだろうか。麻痺側上肢の活動量が増えるとどのような効果が得られるのかは、今後の研究が必要であるが(精確な活動量の計測方法も含めて)、私の印象としては、麻痺側上肢の活動量が増えれば、ADL能力にも良い効果を及ぼすと考えている。

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図は論文から引用

米国の85歳以上の脳卒中患者のリハビリテーション病棟の入院期間と機能予後

Suzanne R. O'Brien and Ying Xue. Inpatient Rehabilitation Outcomes in Patients With Stroke Aged 85 Years or Older. PHYS THER. 2016; 96:1381-1388. PMID: 26916929

2002年から5.5年間の米国のデータベースを用いた横断研究。71652名の85歳以上の脳卒中患者においてリハビリテーション病棟入棟、退院後の機能的な予後を調査した。

私見。この研究の結果の1つが以下の図である。日本と米国の医療制度には差異があるのは分かっているが、それにしても、米国では脳卒中患者のリハビリテーション病棟での入院期間が短い。85歳以上の各年代で、入院期間はだいたい15日前後。ちなみに、この研究では除外基準の1つとして、リハビリテーション病棟での入院期間が90日以上としているが、それで除外になった患者さんは652人であり、1%以下であった。

さらに、85歳以上のそれぞれの年代においてFIMが改善している。FIMが運動項目と認知項目で分けて分析されていないので、それぞれの項目がどの程度改善したのかは分からないが。

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図は論文から引用

脳卒中患者の他者との関わりを記録するウェアラブルカメラ(J Stroke Cerebrovasc Disから)

Dhand A, Dalton AE, Luke DA, Gage BF, Lee JM. Accuracy of Wearable Cameras to Track Social Interactions in Stroke Survivors. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2016 Sep 9. PMID: 27622865

Autographerと呼ばれるウェアラブルデジタルカメラを用いて、脳卒中患者さんの他者との関わりをどの程度正確に記録できるかどうか検討した研究。社会的孤立は、脳卒中発症後の予後の悪さに起因すると報告されており、こういう研究が拡がっていくと面白いな。

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図は論文から引用


急性期脳卒中患者に対する上肢集中練習による脳の活動の変化(NNRから)

Hubbard IJ, Carey LM, Budd TW, Levi C, McElduff P, Hudson S, Bateman G, Parsons MW. A Randomized Controlled Trial of the Effect of Early Upper-Limb Training on Stroke Recovery and Brain Activation. Neurorehabil Neural Repair. 2015 Sep;29(8):703-13. PMID: 25527488

オーストラリアにある2つの急性期脳卒中病棟で行われた、単盲検化、無作為比較試験。初発の脳梗塞患者23名を発症後1週間以内に2群のいずれかに無作為に割り付けた。対照群(12名、平均年齢69.3歳)は通常ケアを実施した。介入群(11名、平均年齢61.7歳)は、通常ケアに加えて、集中的な上肢集中練習を実施した。全ての対象者は、急性期病棟での平均11.5日の期間に、作業療法と理学療法を合わせて平均31.5分のセッションを平均6回実施した。介入群では、1日2時間、週に5日、3週間の計30時間の課題指向型練習を実施した。

プライマリアウトカムは、手指のタッピング時のfMRIで計測した脳活動、セカンダリアウトカムは、Motor Assessment Scaleの上肢項目、mRSであった。

その結果、Motor Assessment Scaleの変化量は、1ヶ月の時点で通常ケア群は平均4.33(SD:3.37)ポイント、介入群では5.36(3.67)ポイント、3ヶ月の時点で通常ケア群は平均12.8(6.00)ポイント、介入群では16.4(1.75)ポイントであった。Motor Assessment Scaleの変化量は、両群で有意な差がみられなかったが、介入群では標準偏差が小さくなり、一貫した改善が認められた。

通常ケアと比較して、介入群では損傷半球の補足運動野と前部帯状回の活動が高くなり、非損傷半球の小脳の活動が収束した。

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図は論文から引用

結論として、脳卒中発症後早期から上肢集中練習をすることによって、補足運動野や小脳といった運動関連領野や前部帯状回といった注意に関連する領野の脳活動に大きな変化をもたらす可能性がある。

私見。私が勤めている病院では、急性期における上肢麻痺に対するリハビリテーションを実施しているので、こういった知見をイメージしながら臨床すると面白い。

脳卒中後上肢麻痺に対するロボット療法の効果を検証したシステマティックレビュー・メタアナリシス(NNRから)

Veerbeek JM, Langbroek-Amersfoort AC, van Wegen EE, Meskers CG, Kwakkel G. Effects of Robot-Assisted Therapy for the Upper Limb After Stroke: A Systematic Review and Meta-analysis. Neurorehabil Neural Repair. 2016 Sep 5. [Epub ahead of print]

脳卒中後上肢麻痺に対するロボット療法の効果を検証したシステマティックレビュー・メタアナリシス。ランダム化比較試験44試験1362名の脳卒中患者さんを組み込んだシステマティックレビューにおいて、ロボット療法による有害事象は報告されなかった。38試験1206名の脳卒中患者さんを組み込んだメタアナリシスでは、以下の事柄がわかった。

・ロボット療法は、運動制御(Fugl-Meyer Assessmentで2ポイント以上)や麻痺手の筋力において、小さいながらも有意な効果が認められた。
・筋緊張に対しては負の効果が認められた。
・ARATやWMFT、Arm Motor Ability Test、Box and Blocks Testなどで測った麻痺手の能力や基本的なADLに対しては効果が認められなかった。
・肩や肘のロボット療法は、筋力や運動制御に対して小さいながらも有意な効果が認められた。
・肘や手のロボット療法は、運動制御に対して小さいながらも有意な効果が認められた。

結論として
・麻痺側上肢に対するロボット療法は、反復の回数を増やすことができるため、脳卒中後の集中的な練習を保証することができ、安全に実施することができる。
・特定の関節をターゲットとしたロボット療法は、その特定の関節の運動制御を向上させる効果が小さいながらもあるが、麻痺側上肢の能力の改善に対して汎化は難しい。
・脳卒中発症後の数週間以内のロボット療法の効果は未だ明らかにされていない。
・これらの限界のある知見は、ロボット療法を検証した試験の不十分なデザインだけでなく、ロボット療法によって誘発される運動学習の理解が不十分なところが主に関連している。

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図は文献から引用

私見。手関節や手指に対するロボット療法の効果は、未だ明らかになっていない。当院では、今後、そこの部分を検証していく予定である。頑張ろう。
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