先日てけてけさんから以下のようなコメントがきました。
質問なのですが先生の文面でやたらボバースと比較されている記事が目立つように思うのです。
ボバースはボバースと割り切って個別性を述べられても良い気がするのですが、やたらボバースに敵対心のあるかのような書き込みに見えてしまいます。

他にも色んな概念がある中でボバースを敵視するのはなぜなのですか?


まずボバース療法に敵対心はありませんが、そういうふうに思わせてしまっている私の記事の書き方が悪いと思います。すいません。やはりブログですので主観が入ってしまいます。

しかし、やはり効果的で効率のよいリハビリテーションの方法論を考える上でボバース療法の優位性の有無を疑わざるを得ません。間違えないでいただきたいのは、優位性がないということであり、効果が全くないということではないのです。ボバース療法よりも最も効果的な方法があるのに、ボバース療法に固執してしまい回復する機会を減らしてしまうという結果につながりかねません。

また、急性期と回復期、維持期によってもボバース療法の必要性や優位性が異なってくると思います。私は急性期と維持期でしか働いたことがないので、回復期に関しては何も言えません。

急性期病院で働く期間が長く、急性期のリハビリテーションを模索していくという経験のなかで、やはりボバース療法の優位性はないと考えます。

急性期リハビリテーションで最も重要となることが廃用症候群の予防であると考えます。文献1によるとベッド上での臥床が続くと、健側でも3日過ぎると大腿四等筋の萎縮が進み、一ヶ月以内に筋の断面積が30%減少すると述べています。文献2では健常な筋肉組織でも2〜3週間の安静により20〜25%の筋萎縮を生じると述べています。また麻痺側の不使用により皮質脊髄路の退縮が生じてくると述べています。急性期リハビリテーションの第一の目的は安静により生じる廃用症候群に打ち勝つことなのです。

急性期の病院によっても医師や看護師によってリハビリテーションに積極的なところと消極的なところがあると思います。もし医師や看護師がリハビリテーションに無知であったり、保守的なところであればそれだけ日中の活動量は減ります。一日は24時間であり、急性期ではリハビリテーションの時間が9単位ですので3時間、理学療法と作業療法で約2時間です。大半のセラピストはベッド上でストレッチや他動的なROMexで時間を使うことが多く実際に抗重力位で坐位や立位をとり、自動運動を行う時間はだいたい30%から50%ではないでしょうか。これは私が臨床で周囲を見渡していて感じる%です。したがって、病棟で離床やリハビリテーションに積極的ではない病院で、上記のようなリハビリテーションのメニューを試行した場合、実質1時間も抗重力位になる機会がないと考えます。これでは廃用症候群は防げるのでしょうか。

とくに、ボバース療法の場合は訓練の大半をベッド上での他動運動で過ごします。そして最後に坐位と立位をちょっとという具合です。これが急性期のリハビリテーションとしてふさわしいのでしょうか。文献3では、できるだけ早い時期に起立訓練(起立と着席を繰り返す)を行うことを推奨しています。また少量頻回を1日に何度も繰り返して行う。立位訓練、移乗訓練をどんどん行います。当然リスク管理は必須です。リハビリテーションの時間だけでなく、病棟の看護師と協力して行えればなおさら良いです。起立訓練が繰り返し、安定して行えれば歩行訓練を検討します。ここで文献では起立-着座が連続50回程度行うことができれば、装具をつけ、ヘミウォーカーや4点杖で歩行訓練をスムーズに行えるとも述べています。

このように、ベッド上でゆったりと他動的な運動を行っている時間は急性期のリハビリテーションにはほとんどないと考えたほうが良いと考えます。また病棟で看護師が起立-着座動作、歩行訓練を行うときは筋緊張の調整をする必要があるのでしょうか。

さらに文献3では家族参加型自主訓練が移乗移動能力の改善と転記につながると述べています。

家族指導

文献4は原著論文です。ちなみRivermead Mobility Indexはこちら

文献3では脳卒中早期リハビリテーションにおける家族指導の主な目的として、家族の病状理解と技術の習得と述べています。自主訓練や介助方法を指導し、生活の一部に訓練を取り入れることで、能力の改善を図ります。

文献5では、家族訓練が非麻痺側筋群の筋力が向上し機能改善がはかられること、そして立位をはじめとする活動時間の増加が半側空間無視の改善につながったと述べています。

したがって、急性期のリハビリテーションではStrength Training(筋力増強訓練)は最も効果的で効率のよい方法論であることがわかります。そして病棟の看護師や家族に訓練方法を指導し、一日の活動性と抗重力位になる機会を増やすことが大事です。確かに、ボバース療法の必要性もあると思います。綺麗な坐位、綺麗な歩行を目指すことは大事ですし、歪んだ坐位や歩行は回復期リハビリテーションの遂行度にも影響があると思います。しかし、患者や家族にとって一番何が必要なのか、何を望んでいるのかを考えると、まずは廃用症候群を予防し、少しでも早く家庭復帰することであると考えます。

引用・参考文献
1)Neurological Rehabilitation: Optimizing Motor Performance WITH PAGEBURST ACCESSP207

2)補永 薫・里宇明元:脳卒中急性期リハビリテーションの意義と実際. Medical Practice vol.25 no.12 2008 2207-2209

3)前島伸一郎・間嶋 満:急性期リハビリテーションの実際. MB Med Reha no.90 2008 9-13

4)Maeshima S, et al:Mobility and muscle strength contralateral to hemiplegia from stroke:Benefit of self-training with family support. Am J Phys Med Rehabil, 82:456-462, 2003.

5)前島伸一朗 他:脳卒中早期リハビリテーションにおける家族訓練について-非麻痺側筋群と高次脳機能障害に及ぼす効果-リハビリテーション医学会議録 Vol.38 no.3 225