Keep On Thinking

少しでも日本の医療を良くして、多くの人々が健康な生活を送ることができる世の中にしたい。このブログは自分の思考の軌跡を綴る場であり、少しでも多くの人々に「気づき」を与える場でもある。医療、社会全般、科学にも視野を広げ、リハビリテーションや神経科学などの分野も紹介します。「必要なのは、信じる心ではなく、それとは正反対の、知ろうとする心である。-バートランド•ラッセル」

コミュニケーション

他者とのコミュニケーションについて〜「単純な脳、複雑な「私」」を読んで〜



神経科学者である池谷氏の書籍は今までに読んだことがあるが、本書は我々の脳がいかに単純に世界を理解している一方で、「心」を生み出す脳の複雑さを知ることができる。脳の機能、能力に関することだけではなく、我々が他者とのコミュニケーションの中で、生じる不具合みたいな部分がどのような原因で引き起こされるのか、ということ本書では紹介されている。この記事ではまず、それを述べたいと思う。

まず1つ目は、我々1人1人が物事に対して感じる「正しさ」というものは、その人が長く置かれていた世界に大きく影響しているということだ。人間にとって、生活スタイル、家族、友人といった社会的環境は個人の物事の考え方に強く影響するのだ。しかも、周囲の環境はその人に「心地よさ」を感じさせ、それを「好き」と思ってしまう。「正しさ」というのは「心地がよい」「好き」と大きく関係してる。またそれは無意識の部分に影響する。
例えば、周囲の状況を判断し、てきぱきと行動したり、間の手を入れたりするような、気が利く人がいる一方で、全くそのようなことには無頓着な人がいる。気づかない人にとっては、「それが存在しない」環境に今まで生きてきたから、その人はそれに気がつかないのであると同時に、それを「正しい」ことであると思っていない。断っておくが、気が利く人が「正しい」、気が利かない人が「間違い」と言っているのではない。
したがって、気が利く子を「正しい」と判断し、気が利かない子を「間違い」としてしまうのは、それは差別となってしまう。相手が今まで長くいた環境を理解し、そいう人なんだと慣用の目で見てあげることが大事なのである。

池谷氏はこう述べている。
「正しい」「間違い」という基準はなく、むしろ、その環境に長く暮らしてきて、その世界のルールにどれほど深く順応しているかどうかが、脳にとっては重要だってこと。[中略]「正しい」というのは、「それが自分にとって心地いい」かどうかなんだよね。(p120)


私は、科学者は同時に哲学者でなければならないと思っているが、まさしく池谷氏はそうであろう。このことを頭に入れて生きていくだけでも、周囲の人々との衝突を防ぎ、一歩引いた目で客観的にコミュニケーションをとることができるだろう。決して自分の価値観で「正しい」「間違い」を決めつけてはいけないのだ。

次に、周囲に対して気が利く、利かないは別として、世の中には様々な考えや性格を持った人が存在しており、中には時になぜこの人はこんなにも、考え方が偏っていて、頑固なのかと思ってしまう場面がある。私はそのような人たちは、自分を客観的に見つめ、改めるということ(メタ認知)が嫌で拒否しているか、その能力がないからではないかと考えた時があった。人は往々にして、自分に対して考え方や容姿に対して欠点を持っている。中にはそのような欠点を自分自身で見つめたくないと思ってしまって、見つめるという行為を意識的・無意識的に拒否している人がいると思う。
一方で、自分自身のことに関して理解するという能力が欠けている人もいるだろう。著者は、メタ認知の能力を獲得するには、環境や教育が必要であり、学習の結果であると述べている。またしても、そのような自分を客観的に観て、改めようとしない人たちを一方的に、攻めることができない。そのような人たちは、メタ認知を獲得するような環境や教育に今までに置かれてこなかった結果であるからだ。英語が今まで勉強することができる環境や教育が与えられてこなかったために、英語が話せない人を攻めることができないのと同じだ。そのような人たちには、「自分を知る」という環境と教育を与えることが必要なのである。

それに必要なのは、他者との関係だ。他者との関係において、円滑にコミュニケーションをするには、相手の気持ちに共感する能力がないといけない。相手の表情や言葉の抑揚、仕草を見て、自分のそれに会わせて振る舞う。一方的に感情を押し付けたり、話したりするだけではコミュニケーションは成り立たない。
他人のやっていることをただ眺めるだけではダメで、その行動を理解して、さらに自分の行動に転写する必要がある。(p178)

これはまさしく、ミラーニューロンのことだ。
そしてそこから一歩進んで、他人の視点から自分を客観的に見つめることができる。著者は他人の視点から自分を眺めることができないと、我々は人間的に成長できないと述べている。
ヒトの場合はさらに、自分を他人の視点に置き換えて自分を眺めることができる。[中略]その能力を「自己修正」に使っている。(p179)


このように、我々が他者と関わったり、自分自身を知ったり、それによって自己修正をしていくといった能力は、我々が長い間生きてきた環境、世界に大きく影響されるということだ。しかも学習の結果であり、その機会がなければ、それらの崇高な能力を獲得できていない。
それらを知って他者と関わるだけでも、相手に対する理解につながり、大きな衝突を防ぐことができると考える。

看護師を説得するには


リハビリテーションに従事している者にとっては、病棟に申し送りをした後に、「なんでここの病棟は、この看護師さんは言った通りにやってくれないんだろうか。」と感じたことがある人が多いだろう。ベッド上、車椅子上でのポジショニング、食事のセッティング、介助方法、病棟での自己トレーニングのメニューなどの患者にとって必要な介助方法、プログラムを病棟側に申し送りをしても、なかなか思うように実行してもらうのが難しい。さらに、説明の仕方、相手の状況を踏まえずに一方的な申し送りをすると、相手との関係が悪くなってしまう。大変気のつかうデリケートな問題である。
この書籍は、そんな問題に対して明確な方法を提示してくれるものである。続きを読む
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