くすぐつたいことなどなくてこのところ独りの時間を大切にする 服部崇

独りの時間を大切にする、状況により全く違う印象です。
仕事や育児で忙殺されていればつかの間の大切な時間。
独居のご老人であれば、日常、もしかしたら余命という意味での大切な時間。
もしくは、何か転機の前であれば、その前の時間。

この上の句では状況がよくわかりませんが、だからこそ自分で好きに当てはめて共感できるな、とも。

大根の甘さと辛さ私にも境界線がある冬の朝 原尚美

大根の甘さと辛さはグラデーションなので、境界線は大根と外界と読みました。
自分は様々な感情を内部に持ち、それでいて独立した一個の人間である、と。

子の棺に入れんと帽子靴選ぶ母と誰が知るアカチャンホンポに 原田治子

情報が多くて調べもたどたどしい感じですが、内容からさぞや、と。
帽子や靴を自ら選ぶ時間があると言うことは、死産の処置なのか…
幸福オーラしかないアカチャンホンポとのコントラスト。

無言にてカレー食べ終え猫にのみ何か囁き娘は出掛けたり 堀亜紀

いかにも反抗期。
カレー、猫が、「平和な」反抗期である符号になっている。

四歳の泥棒役が四人いてワハハワハハと酒盛りをする 高橋よしえ

ただただ明るくおもしろい。
本当に「ワハハ」がセリフなんだろう、たぶん。

客席にいるべき人を探す子の終始ぼんやりとした本番 高橋よしえ

見つけたら手を振っちゃったりするんですよね。