2017年09月23日

TD124とノイズ 5

トーンアームまわりの振動やノイズを、フォノモータの機械力は速やかにアームボードに流れるように仕向け、結果トーンアームは美しく響くようになります。 レコード再生時、アーム本体は多かれ少なかれ、というより盛大に振動します。 その振動をできるだけ速やかに流せる構造になっているからこそ、TD124でレコードを再生すると、音がすっきりと立ち上がり、アーム本来の性能がぐっと向上したように感じることができるのです。 グレイで使用しているレコードが良質なオリジナル盤である、というアドヴァンテイジはありますが、ヴィンテージLPのプレス状態の良い盤ならばフォノモータにある機械力が顕著にはたらいて、音楽の再生の楽しみが一層増します。
TD124にある機械力がトーンアームの振動共振共鳴ノイズを引き込む力をはたらかせているという事象は理解し得るのですが、私的にはこれだけではどうも弱い気がするのです。 引く力だけでTD124独特の活力やリズムの躍動感が生まれるとは果たして考えにくいからです。もっと別の力、⊖力に対する⊕の力が必要であるように思えるのです。 そこで着目したのがシャシ第3の山(右手前)です。  ここから可変されたフォノモータの振動がアームに流れ込むとしたら合点がいくのではないか。 この力は割合幅の広いゆったりとした弱いものでなければならないはずです。 急峻かつ直線的に流れ込むとアームは揺さぶられてハウリングに似た現象を起こしてしまうからです。 第3の山からの振動はアームの共振と異なる種類のものです。 もし、振動が同種のものであるならばアームは必要以上に響いてしまい、ハイフィデリティプレイヤというよりゼネラルユースプレイヤに近い機器になってしまいます。
第3の山から流れ込んでくる⊕の力はアームにどのようにはたらきかけるのでしょう。 それを感じ取るには、アームの響きそのものを理解するのが早道です。 アームの響きとは振動を因とすれば、果を指します。 しかし、ひとっ飛びに因から果に移行するわけではありません。 因と果の間にはさまざまな因子が存在します。 私はレストアの経験からして因と果の間に第3の山からの⊕の力が作用していると考えています。 ⊕は振動の凝固化を未然に防ぐようにはたらいていると。 振動は流れが滞るとしばしば凝固化する。 これはスピーカのエンクロージャでも経験するやっかいな性質です。 対策として振動を細分化つまり分割振動を促すのが有効であると考えます。 第3の山から流れてくる⊕の力によりアームボードの振動は細分化され、振動は凝固化を免れるとTD124の設計者が考えたと推測します。 複雑多種のパーツで構成されたアーム(例SME3009)と単純な構造のアーム(例オルトフォン)とでは⊕力の効果は異なります。 レストアされた良質なTD124ではSME社製アームがオルトフォン社製のそれよりも冴えた音がするというのは、アーム設計上の基本理念の違いだけではなく、こうしたところにも原因があるとこの頃は感じているのです。
前に言及したGARRARD社RC70シリーズ・オートチェインジャにしても、フォノモータの振動にトーンアームが盛大に揺すられるのに再生音への影響が極小であるのも理解できます。 アーム本体の振動とフォノモータの振動の性格が異なるために振動がノイズとなって再生されることを防いでいるのです。 もちろん完全にノイズが出ないわけではありません。 ノイズの一部を再生音として使用しているのです。 そのため再生音は均一とはなりにくく音楽表現にムラが出ていることは確かです。 一種の荒さですが、GARRARD社の技術者はそれをRC70シリーズの音楽再生上の大きな魅力にしてしまうのですから、オーディオは面白いのです。 つづく
以上T氏

⊕の力、⊖の力、なんてわからなくても良い。 レストア職人が頭の中でイメージしていることなのだから。 ユーザが調整する上でのきっかけになれば、T氏もうれしいはず。
 



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