T氏が語るユルク・ショッパー
今回もT氏のコメントです。 およそ作られた製品には、製作者のパーソナリティが反映されるものであり、製品の是非を決定するのは製作者のセンスであろうと思われます。 スイスで出会った、ユルク・ショッパーなる人物は、まず有能なる技術者でありビジネスマン、そしてミュージシャンでもありました。 良いものは良い、と言い、良くないものは良くない、とはっきり言う男であります。
しかし、本質は他人に気配り、心配りのできる優しさを持ち合わせた人物です。 音楽に対して強い音、繊細な音に反応する素直なところもあり、また研究者に必要不可欠な独断と偏見も多分に持ち合わせた性格の持ち主でもあります。 氏の開発した非磁性体プラッターに聞き取れる、豪放にして繊細な音は彼の音楽センスの良さが充分に発揮されたものでした。 さらに感心するのは、彼が良しとする音には人間不信のひびきが皆無であるという事であります。 つまり、理論上良い音だからといっても、それが人間の耳に良く聞こえるとは限らないという事実を、彼は知っているのです。 このような人物が研究を重ねて作り上げた各種製品が、どのようなものであるかは、音を聞く前から、現物を前にしただけで想像がつく、というものです。 以上T氏でした。 写真はTD124を開発したトーレンスのエンジニア、老ジャック・バッセ氏邸(ジュネーヴ近郊)の庭でくつろぐ三人。 左からT氏、ショッパー氏、バッセ氏。