2007年11月30日

TD124 ふたたびフルレストア 最終回

フルレストアについてT氏が語る 今日は最終回。
フルレストアを完了したTD124にアームとカートリッヂを取り付けて、最終ヒアリングテストに入ります。 アームはオルトフォンRMG212、トーレンスTP14、SME3009など、当時TD124に装備されることの多かった機種を使用します。 カートリッヂには一般的なオルトフォンSPUを使用します。 試聴では、再生音の視覚的要素についてチェックします。 再生音の視覚化は、皆さんがオーディオシステムを構成し調整される際には欠かせない大事なことです。 視覚化することで再生音の寸法を確認するのです。 試聴テストご存知の通り、音には特有の重さ軽さがあり、同時に音の型の大小と変化もあります。 もちろん、音のかたちは固定されてはおらず、自在であり内包するエネルギーでかたちが変わっていくのです。 そうした音の変容の規定の歩止まりを称して音の寸法といいます。 音の寸法あわせがきちんと出来ていないと、フルオーケストラの再生で音がばらばらになり、音楽的な緊張と緩和の流れがうまくいかず、ただのサウンドとしてしか響かなくなってしまうおそれがあるのです。 ジャズヴォーカルの小さな編成の場合、音の寸法がちゃんとしていないと、ヴォーカルと各プレイヤーの情感の絡み合いが薄くなり、プレイの面白さが表出されず満足感が得られません。 弦楽四重奏でも、平坦な再生に終始してしまい、音の出入りの部分の再生が意味の無いものになりがちです。 この再生音の寸法あわせがちゃんと決まると、自然に音の重量感や形が整ってくるものです。 音色にある色と艶は、レコードの質にも寄りますから、この点はレコードの専門家におまかせして、敢て触れないことにします。 音色はユーザーが楽しむところであり、組立/調整に従事するものは、音色に溺れていてはいけません。 このように試聴テストを実施したあと、問題があれば各部分の調整をもう一度確認しきながらTD124を仕上げていきます。 この作業をしている時、ようやく音の質の色彩感が、盤面からたちのぼるのを感じます。 TD124の自然な色彩はバランスが整わないと、本当の色彩にならず、うわべだけのものになり、真のハーモニクスによる色彩感は、一番最後になって聞こえてくるもののようです。 これは生々しいとか、リアルだ、とかいう表現とは次元を異とするもので、そうした音のものさしは他の機器にまかせておけば良いと思います。 TD124のレストアにかかる時間は、ただ日にちのみならず、TD124本体にいかにあるべきか、どのようになるべきか、を一台一台に問うて進めなければ、ユーザーの方々に満足をもたらす製品とは成らないと思います。 この項おわり

坂道7日間にわたり、フルレストアを説明してもらった。 T氏の職人ぶりは、ここに書いてあるとおりであり、TD124をこんな風に作業できる数少ないひとりだと、世辞ぬきにいえる。 こうした御仁が銚子という小さな町で、毎日こつこつと作業しているのも、うれしいものだ。 なんとなくそう思う。

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