2009年08月30日

家庭の電源 1

TD124を実際に駆動する電圧値は、100V~120V間であるなら基本的にはどのような電圧であっても問題はなく、むしろある特定の電圧に固執するのがおかしいというのが、私の主張する所ですが、読者の皆様はある疑問に思うかもしれません。つまりそのような立場をとるのであれば、私たちの工房ではなぜ100Vに定回転、基本電圧値を設定しているのか、論理的に矛盾しているのではないか?と考えるのは当然でしょう。その理由は、我が国の一般家庭の電圧が100Vだからで、TD124の電圧選択ボード上の、100V〜120Vのうちにおさまっている電圧値だからです。電圧選択100Vから使用できると表示されているのに、なぜ110、115、117Vなどで駆動する必要があるのか?という基本的な理由によるのです。TD124は各国それぞれの電圧、電源事情に対応を図ったレコードプレイヤーであり、その意味において、我が国の100V電圧をそのまま使用しても何も問題はないはずです。しかしこれだけでは110、115、117V電圧値を使用してTD124を動作させる事を良しとする方々に対して、100V仕様のTD124の有利性を示すに説明不足でしょう。そこで私は、電圧マージンという捉え方を書いてみることにします。TD124の電圧の幅の中で、電圧利得があることをマージンとみなすのです。つまりTD124を100Vで駆動させることにより、110、117、120V電圧に対し、電圧値の差だけ利得が生まれるという捉え方です。これにより得られる効果は、動作時におけるモーター振動の減少と、発熱の軽減、それに伴うシャシー共振の低減などが挙げられます。特にモーターは、発熱の抑制により、長時間にわたり安定性が確保できます。再生音にも与える影響は大です。SN比の向上による音場の透明性、色彩感の鮮やかさだけでなく、音の出入りが自然となり、ハーモニクス成分にあるリズム感の表出が際立って改善されます。TD124、ガラード301グレイタイプをそれぞれ100V仕様とした場合、それ以上に電圧値を上昇させて動作させた場合の再生音は、音自体が必要以上の張りを見せ、高血圧的な苛立ちを感じさせる音と変容してしまいます。モーターに必要以上のストレスが電圧上昇により発生したせいです。ノンレストア品となると、この傾向は一層強まると推測出来ます。TD124を同じ電圧ポジション内の最低電圧で使用する利点は、このようなものですが、もう一つ忘れてはならないのは、100V電圧値で駆動されたTD124は、110、115、117V、120Vなどで駆動されたTD124に対して、トルク的にはやや劣る事は否めません。それはインダクションモーターの持つ特性のひとつです。いたずらにトルクのみを重視するのは、TD124本来の姿とは相入れない先入観であり、それぞれの回転機構の働きのバランスがより重要であり、トルク力はそのバランスのとれた動作があってこそ本来の成すものです。また我が国の100Vという世界的の見ても低い電圧設定は、ヴィンテージ系アナログプレイヤー(中でもTD124と301)には福音となすべきで、これにより変圧器のお世話にならなくても済むのです。私たちは我が国の100Vという電圧値に、この点では感謝しなければならないのです。今日世界の国では、TD124が発売された時代に比べて、電圧値が上昇ぎみであり、内には電圧が高すぎて定速回転に支障をきたす場合もあり、変圧器を用いて電圧を降下させたり、モータープーリーを加工して速度調整に対応しなければ、追いつかないという場合も見られます。そのような他国の情勢からして、我が国の100Vという電圧値は、TD124やガラード301にとって、特別有利な意味を持っているのです。


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