2010年01月30日

オレのガマンもこれまでだ「黄金の組み合わせの怪」の巻

我国のヴィンテージオーディオの最高位に君臨するEMT927、マランツ7・8・9、マッキントッシュC22-MC275、タンノイオートグラフの組み合わせは、今日もその偉光は衰えず、この三つの組み合わせを三人の賢人のごとく考えられています。 私としては、三バカ大将ではないかと考えております。 一人ひとりは賢人ですが、三人揃うと大バカになるという意味で、この組み合わせは最悪ではありませんが、決して最良のものではないからです。 まず、オートグラフを鳴らすにあたり、ユーザーはこのスピーカーではクラシックの再生に重きを置いていると考えられます。 英国生まれのオートグラフを使うのであれば、DECCA、EMI等のオリジナルレコードを所蔵し、ヨーロッパ音楽を聴くために、なぜマランツ、マッキントッシュ等アメリカ製のグッドリプロダクションのお世話にならなくてはならないのか。 仮にマランツ、マッキントッシュ等を使うのであれば、オートグラフではなくアメリカ・タンノイ製のスピーカーを使用する方が、ずっと理にかなっているはずです。 75年に来日されたタンノイ社のT.B.リビングストン氏は、対話の中でこう語っています。 『アメリカ人の好みに合うように製造し、それをアメリカ・タンノイ社を通じて販売している』 つまり、アメリカプレスのレコードを聴くために米国に輸出されていたということになります。 さらに黄金の組み合わせの一角を担うEMT927は、本来は検聴用レコードプレイヤーであり、それをコンシュマーユースに用いると再生音にある音楽はサウンド化されてしまいます。 EMT個有の音を分解する能力は、たしかに検聴用としては大変優れていますが、せっかく音楽として有るべき姿の再生音をバラバラにしてしまいます。
例えてみれば、恋人の肌のみずみずしさを愛でるのはなく、PHや水分量で肌の状態をチェックするようなものです。 確かにレコードの出来不出来をチェックするには、音をバラした方がより明確に差異を言い当てることができます。 EMT927はまさにその為にある業務機なのです。 このような音が好みなら、オートグラフではなくJBLのモニタースピーカーを用いてサウンドチェックを楽しむのが本当でしょう。 オートグラフでヨーロッパのクラシックの響きと音楽を味わいたいのであれば、この黄金の組み合わせという伝説めいたオーディオ構成は根本的に間違っていると私は思います。 ではなぜ、この様な組み合わせが成り立ったのでしょう。 まず、オートグラフを鳴らす事の出来るレコードプレイヤーやアンプリファイアーが無かったというのが一つの要因で、さらにもう一つ、不思議なことに英国製アンプリファイアーの情報が全くなかったという我が国の歴史的事実があります。 例えば1958年版の英国HiFi Yearを見ると多種多様個性豊かな英国製アンプリファイアー群が掲載されています。 P1300316当時英国からの輸入が活発ではなかったにしろ、これらの英国機器についての情報はほとんど無に等しかったのは不思議です。 確かにリークやQUAD等は輸入されていました。 リークのアンプは英国製ですが、どちらかといえばワールドスタンダードの性格で、QUADに到ってはプリアンプ自体がギターアンプのヘッドアンプではと思えるくらいに音色のクセがあり、オートグラフを特大のラジオスピーカーとして使うには適していますが、本格的にレコード再生を行うには少し荷が重すぎます。 さらにレコードプレイヤーに関しても、英国といえばガラード301とばかり、他のプレイヤーに関する情報はほとんどありませんでした。 コニサーやコラロ等に至っては、その姿や再生音など全く知られていませんでした。 こうした事実をつらつら考えてみるにつけ、黄金の組み合わせと呼ばれる三バカ大将は間に合わせの一言に尽きます。 とりあえず、これでHi-Fiとして格好がつく程度のもので、未来に期待するものではなく、何かしら良いアンプリファイアーが発売されれば、それに変えようと当時の評論家は考えたのでしょう。 しかし、時代はすでにトランジスターアンプ全盛となりレコードプレイヤーもDD式に移行しオートグラフを鳴らすべきアンプリファイアーもレコードプレイヤーも我が国に紹介されることはありませんでした。 後に残ったのは黄金の組み合わせ伝説なるEMT927、マランツ、マッキントッシュ、オートグラフという三バカ大将がそのまま今日まで在り続ける事となったのです。 この組み合わせ以外どの様な方法があるかについては次回書く事にします。
以上T氏

ところで、ひょっとして、昨日と今日あたり、再生音がなんとなく調子良かった、という人がいたのではないだろうか? 
そう、それはきれいな満月、今夜は。 

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